第82話 田舎王子と俳優 鎌咲 吹雪

お知らせ


雅、詩織、彩羽の主演する映画の内容を

君の事を決して忘れない、のタイトルで原作としてスピンオフ投稿しますので是非読んでみて下さい!


https://kakuyomu.jp/works/16818093082599821708


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「じゃあ!シーン3テイク1」


「スタート!」監督でもある亀山さんの合図で撮影が始まる


ここは練習試合が終わって幼馴染の紫苑に放課後公園デートに誘われるシーンだ、原作では部室なのだが映画では画面映えを考慮し教室のシーンとなってる


詩織:【はじめちゃん、お疲れ様2得点おめでと!】


雅:【有難う、紫苑もお疲れ様】


雅:【ところで紫苑?行きたいとこってどこ?】


詩織:【うん、昔よく行ってた公園・・もうすぐ取り壊されるって聞いたから・・・はじめちゃんと行っときたくて】


詩織は上目遣いで瞳を潤ませて俺を見つめる・・・これで役者素人とか・・嘘だろ・・


雅:【あ~ぁ、あの公園、潰されるのか・・・残念だな・・】


すると詩織は俺の腕に抱き着き胸を押し付ける・・・(原作には無い演出だ・・・俺の台本にも書いてないぞ・・)


雅:【ど、どうした?紫苑急に抱き着いてきて!】(なんとかアドリブで乗り切った!)


詩織:【ふふふ、本当に私の幼馴染は鈍くて困っちゃう何とも想ってない男の子にこんな事しないよ?】


(あれ、あれ?告白は公園でするんじゃないの!?どういう流れ?でも確かに次の台詞・・・)


雅:【そ、それじゃこのまま二人で久しぶりにあの公園に行くか!】


詩織【うん!!行こう!!】


俺は詩織の手を取り教室を後にする


「はぁぁい!カット!!」


『監督の確認入ります~』亀山さんが近くの小さなモニターを真剣な表情で何度も確認してる


待ってる間に彩羽と詩織が俺の元に飲み物を持って来た


「はいw、みーくんはコーヒーでいいよね?」「あら・・私雅に紅茶を淹れて来たんだけど?」


二人からそれぞれ缶コーヒーと水筒から淹れた紅茶のコップを突き出されてる・・・俺は当然・・・


「あ、ありがと彩羽・・せっかくだし頂くよ」


俺は彩羽からコップを受け取ると中の紅茶を口に運んだ・・・


「へぇ・・・今日のは少しミントの香りがするね・・疲れが取れる感じがする・・美味しいよ、彩羽」


照れてるのかほんのり頬を染めて嬉しそうに笑顔になる彩羽と「むぅぅぅぅ」対照的に頬を膨らませて明らかに不機嫌ですアピールをする詩織


「ア、アハハ詩織もありがと、次の撮影の合間で頂くね」おれは詩織から缶コーヒーを受け取ると「あらよっと!」誰かが俺の手から缶コーヒーを奪い取り封を開けると勝手に飲みだした


「あ、あのぉ~それは俺が詩織に貰ったもので・・・」俺は目の前の少しチャラそうな男の人に注意しようとすると


「ははっは!固い事言うなってぇお前も実は困ってたんだろ?2杯も飲めないぃ~って顔してたぜ?」


そう言うと悪びれもせずに俺達に爽やかなイケメンスマイルを見せウインクしてくる


「あ、あの・・・先ほど顔合わせで挨拶させて頂いた 一堂 雅と申します・・貴方は・・・確か・・」


記憶の引き出しから必死に思い出す俺の様子に苦笑しながら自己紹介をする爽やかイケメン


「改めて自己紹介するね、俺は大山 大樹役の 鎌咲 吹雪(かまさき ふぶき)だ、今後とも宜しくね♪☆」


そういうと鎌咲君は右手を差し出して握手を求めて来たので俺も右手を差し出し握手に応じた


「ふふ、一堂君ってあの大物女優の白鳥さんのお孫さんだって聞いてたからもっと嫌味な感じかとおもったけど、逆に緊張してて可愛いじゃん♪」


初めての映画の撮影で、初対面の役者さんと演技する・・・緊張するなというほうが無理がある・・


「いえ・・・お恥ずかしい・・・鎌咲さんは撮影のお仕事慣れてる様子ですね?このお仕事長いんでしょうか?」


俺の言葉に彩羽がバツが悪そうな顔をしながら脇をチョンチョンと突き注意を促す


「アハハ、良いよ良いよ、彩羽ちゃん、気にしないで良いよ~♪まぁそうだねぇこの業界には子供の頃から携わっているから長いっていや長いかな?♪」


彩羽の指摘の意味に気付き慌てて頭を下げる


「し、失礼しました!そんなに大先輩だとは存じ上げず・・・その、田舎育ちでテレビとは無縁の生活をしていたので・・その・・申し訳ございませんでした!!」


「アハハッハ!良いってさっきも言ったろ♪それより俺達同い年だから名前で呼んでくれよ、俺も雅って呼ぶしさ♪」


「は、はい!宜しくお願いします・・・その・・・吹雪君・・」


鎌咲は堅いな―――と頭を押さえて首を軽く振ったが、再度右手を出して握手を求めてきたので躊躇わず握手で返した


「それじゃ♪マネージャーに呼ばれてるから、またあとでなぁ――♪」そういうと軽く手を挙げて去っていった


「はぁぁ緊張したなぁ――――」



「アンタら此処に居たの?さっきのシーンNGだって、鈴がリテイクするっていってるから指示を受けてきて」


茜さんの表情がいつもより少し不満げだ


「ああ、雅君と詩織さんまず見てくれ・・・」俺はモニターを見せてもらって少し違和感を感じた


「ここでの雅君の返しがやたら自然過ぎるんだよね・・雅君私の原作読んでくれたんだっけ?」


そう言うと自分の愛読書をバッグから取り出し亀山監督に手渡す・・・


「なるほど・・結構読み込んでるね・・・ありがとう素直に嬉しいよ」(後で先生にサインしてもらおう・・)


「ただ今回の演技でそれが裏目に出てるね、明らかに相手がその後何を言うか知ってて返している事が見てる側に伝わったちゃうの」


「そ、そうですね・・・それは確かに・・・」


「何かいい方法はないかしら・・・」



「亀山監督、私から提案なんですが・・・少し耳を・・・」


「・・・・・」「・・・・・」「!?」「・・・・・」「イイネ!」



「はい、雅君の台本かして!」俺は亀山監督に台本を貸すと何やら書き込んでいる様だった


「はい!出来た修正したから此れで行きます!それじゃリテイク!!シーン3テイク2行くよ――!」




俺は時間が無いので赤字で訂正された箇所だけ頭に叩き込むと・・・・


(・・・・はじめは紫苑に教室で抱き締められ・・・突然唇を奪われる・・・え?)

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