第75話 田舎王子、凛とお風呂でコミュニケーション

五十嵐家の本宅の風呂場はとんでもなく広かった、シャワー室やサウナ、ジャグジー、そして20人は浸かれそうな大きな浴槽


「なんだかなぁー」


自分で髪の毛を洗いながら周りをキョロキョロしてると、

「あっ!っっっぅ、目に泡が・・」


目が開けれないので手探りでシャワーを探すと



【ムニュっっっっ】「キャッ、雅く・・あっ」


ここの感触は・・ましな方の左目を薄くあけると凛らしき女性が裸で驚いていてその胸を俺が掴んでいた


「うわぁぁぁぁ!御免なさぁぁぁい」


あわてて手を離して何とか目に入った泡を取ろうと目を擦るが、逆に泡のついた手で擦ってしまい左目にも泡が入った


「ああぁ、ダメだよ雅くん・・私が流して上げるから」


そういうと、顔の前に気配して暫くすると頭の天辺から暖かいシャワーの感触がした、おれは両手で目を軽く揉みながら洗い流すと次第に痛みが和らぎゆっくりと目を開けると



「!?」


【カランッ】


俺は反射的に後ろに飛びのき、その拍子で足に当たって倒れた檜の椅子が浴室に転がる



「り、凛!?なんで!?は、裸!?」


目の前には、生まれたままの姿の凛が真っ赤な顔をして青と黒の瞳を潤ませながら泳がせていた


「そ、その・・お祖母様が・・風呂での夫への奉仕は裸でする物だと・・」


「そ、それに・・雅くんも・・そ、その・・あたし」


俺は視線を下に向けると


「!?」


慌てて前を隠し後ろを向く


「ご、ごめん!慌てていたから!ホントにゴメン!!」


「う、うんん大丈夫・・そ、その・・」


何故か雰囲気的に危険を察知したので


「で、でも凛!お互い裸は不味いので!タ、タオルくらいは!」


「そ、そうですよね!こ、こういうのは、そ、その、時間をかけてゆっくり・・」


何とか自分も腰にタオルを巻き、凛にもバスタオルを巻いてもらったが


「で、では今度は私の体を洗ってもらいたいのですが・・」


そういうと、先ほど蹴とばした檜の椅子を置きなおして俺に背中を向けて座るとせっかく巻き付けたバスタオルを解いた


「え、えーと・・よろしくお願いします・・」


無心・無心・無心・無心・無心・・・・目は開けてるが認識しないように凜の背中を洗い、シャワーで泡を流す


「あ、あの・・前もお願いしても・・?」


そう振り返る凛を見たとたん、急に視界が暗転した


【ドサッ】


「え?え?うそ!雅くん!?ちょっと!は、鼻血が・・・」











『・・・様・・・様、今日は、香草を使ったお料理を作りました』

目を開けると、どうやら庭先のテラスでうたた寝をしていたようだ・・俺の事を起こしてくれたのは

美く長い黒髪が特徴の青と黒の瞳を持つスラっとした女性が肘置きに置いた俺の手に自分の手を重ねていた


『ああ、俺は寝ていたのか・・、・・・よ、もう食事時か?』

黒髪の女性は、優しく微笑み俺の前髪をそっと描き上げると、俺の鼻先が付く距離に顔を寄せて

『ふふ、・・・様?もう夜ですよ?ほら・・』


そう言うと自分の黒く大きな瞳に反射して映し出される満天の星空を俺に魅せた

『・・・相変わらず、・・・の瞳は美しいな、星空が丸ごと入っている様だ』

俺は黒髪の女性の頬に手を添えると、そのまま優しく口づけをする



『まぁ、・・・様は、いつからそんなにお世辞がお上手になったんでしょう?』


微笑みながら俺から離れると先ほど頬に添えた手を取り俺をテラスの椅子から立たせるが、勢い余って一緒に芝生に倒れ込むと上から俺を再び覗き込む


『ファイール・・』『・・・様』








「う、う~ん・・ここは・・?」


うっすら目を開けると目の前に青と黒の大きな瞳で心配そうに此方を覗く綺麗な顔があった、さっき見ていた夢に酷似していたが・・・

やはりもう夢の事は思い出せない・・


「雅くん?大丈夫?」


「凛?」


どうやら、俺は浴室でのぼせて倒れてしまったようだ、自分の姿を見るとガウンを着せてもらってるようで凛も同じくガウンを着ており俺を膝枕していてくれた


「ごめん・・俺、なんか急にクラクラして・・」

俺の前髪を描き上げながら優しく額を撫でてくれた


「うんん、私の方こそ急にそ、その、、迫ったりして・・でも、その、雅くんだから、ああいう事したんだから・・いつもしてるわけじゃないの・・」

心配そうな顔をする凛の撫でてくれてる手を握ると


「勿論、判ってますよ」



【ガタッ】(いや、ちょっと!お母さん!凛にバレますから!)(エレンお前こそ、私が見えないじゃないか!そこをお退き!)


風呂場の入り口の方からコソコソ話声がする・・凛と目が合うと二人は軽く頷いて俺は静かに起き上がって、凜も静かに立ち上がり入口のドアに向かう


【ガラッ】


扉を開けると、スマホのカメラを向けたままお互いを押しのけようとする、洋美祖母ちゃんとエレンさんが驚いた様子で凛を見上げていた


「ちょっと~お祖母様にお母様は此処で何をされているの~?」明らかに怒っています的なオーラを感じた


「い、いや凜の、成長記録をね~お母さん」「そ、そうだよ、ねエレン!」


「あ、あぁ私紅茶いれなきゃあ~」「わ、私は、田舎からもってきたお土産のお菓子を出しとこね~」


二人は慌てて浴室前から逃げて行った



「全く・・何考えてんのかしら・・二人とも・・」

二人の逃げた方を見ながら呆れてる凛の横に行きおれも様子を見ようと凛に近づくと


【ガチャ】


凜は俺の方に向きなおり、後ろに回した手で脱衣場の扉を閉め、カギをかけると、さっきまでの潤んだ黒と青の瞳で俺を見つめ俺の首に抱き着くと





【チュー】



そのまま口づけをした、驚く俺の目には真っ赤な顔で目を瞑り俺に口付けをする凛の顔が飛び込む

暫くしてそっと俺の首にかけた手をゆっくりと緩め、つま先で立っていた足が床に付くと


「さっきから気持ちが溢れて、そ、その。我慢が出来なくて・・」

恥ずかしそうに俯く凛の頬を優しく撫でると、少し困惑した様子で俺の方を見つめる


「とても嬉しいです、凛にこんなに思ってもらえて」




俺の言葉を聞いて、安心したのか満面の笑顔で答えるとそのまま俺の胸に飛び込んできた



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