第74話 田舎王子と洋美お祖母さん

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【お帰りなさいませ、若旦那様!】



五十嵐の家に着いても、同じような出迎えを受けた

「あ、あははは、お邪魔しま、します・・」


メイドの一人に案内されて以前も入った玄関ホールに通される、何回見ても大きい家であるが今日は中央に凜がまるで芸術品のような美しい佇まいで待っていた


「雅くん、ようこそいらっ・・お帰りなさい」


「あはぁは・・はは、凛お、お邪魔します」


そういうと、隣の部屋から

「ダメーーーダメです!、雅君!もう一度やり直しです!ここは「お邪魔しまーす」では無く「ただいま!」です!はいやり直し!」

そう腰に手をあててエレンさんが、理不尽なNGを出してきた、メイドの方は苦笑いし肩を竦め軽く頭をさげるともう一度入口のドアを開けて、俺は入る所からやり直す


【どうぞ、若旦那様】片目を開け、悪戯っぽく笑いながらドアを開けるメイドさんに軽く苦笑いしながら会釈しもう一度玄関ホールに入ると、やはりそこには凜が美しく立っていたが、今度は恥ずかしそうに手を重ねてモジモジしていた


「み、雅くん、お、お帰りなさい」


「た、ただいま、凛」


そう答えると嬉しそうにハニカミながらも横の部屋の少し開いたドアの方をチラチラとみていたが、何か覚悟したのか俺の方を向くと黒と青の瞳を潤ませながら顔を真っ赤にして



「さ、先に、ご、ご飯にしますか?お風呂にしますか?  そ、それ、それとも・・」





「私にしますかっーーーー!!」



玄関ホールだけでなく、屋敷全体に聞こえるくらい大きな声を全身から絞りだし叫んだ凛を唖然として見つめる俺

周りを伺うと玄関ホールや、隣接する扉の陰から、大勢の屋敷の使用人の方たちが軽く拍手していたり、目に涙を受けベていたり、抱き合って喜んでいたりしていた、凜が見ていた方のドアをみるとエレンさんがサムズアップしており、良くみると凛も腰の横でエレンさんに見えるように小さく拳を握っていた



「え、えーと・・ご飯でお願いします・・」



【ドッコッッ!!】


同時に大勢の使用人とエレンさんが、ドアから倒れ込んできた



(まるでコメディだな・・・)



しかし当の凜はを見ると赤くなった頬に手をあてて、何やらブツブツとつぶやいていた



「そ、それは、先ずご飯を食べて栄養を付け、次にお風呂で体を綺麗にして、そ、そして今夜は最後に私を・・・」

そんな身もだえモジモジする凛を見ている使用人達も「キャーアァァ、お嬢様可愛いぃぃぃぃ」と今度は鼻血を出す人も続出した




「こらこら、皆おふざけもこの位にしとかないと、雅君に呆れられるぞ」

エレンさんと同じ部屋の奥から洋一さんが出てきて、エレンさんの頭をポンポンと軽く叩きながら凜の横に立って、使用人に仕事に戻るように手を叩いて合図し解散させた


「ご無沙汰してます、洋一さん」


深々と頭を下げて、挨拶をすると洋一さんは前の時とちがい柔らかい物腰の笑顔で迎えてくれた


「ようこそ、雅君今日は泊まっていってくれると聞いたからね、男同士で風呂でも入って語り合おうじゃないか」






「ちょっと!洋一、アンタの事よりまずアタシの事を雅ちゃんに、紹介しないかい!」



そう、洋一さんの後ろから肩を叩いた人物は







「ひ、洋美(ひろみ)祖母ちゃん!?」



そこには、井の中村で軽食屋を営んでいた、洋美祖母ちゃんがニヤリと笑って洋一さんを押しのけて現れた。



「おお、雅ちゃん久しぶりだねー元気にしとったかい?」


俺は懐かしさもあり、人目を気にせずに洋美祖母ちゃんに抱き着いた



「洋美祖母ちゃん!久しぶり!うん!俺元気にしてたよ!洋美祖母ちゃんこそ元気だった?」


洋美祖母ちゃんは、抱き着いた俺の背中をポンポンと叩くと


「あらあら、雅ちゃんは相変わらず大きい子供だねぇ、あたしゃ元気だけど雅ちゃんが居なくなったからアタシの料理を沢山食べてくれる人いなくて寂しかったよ」


「洋美ばあちゃんのビーフシチューにカレーにコロッケ、俺大好きだったなー懐かしいよ!」


俺は洋美祖母ちゃんから離れると、洋一さんが苦笑いをして


「紹介は要らないと思うけど、私の母の五十嵐 洋美だ」


紹介を受けた洋美祖母ちゃんは俺の体をぺたぺたさわると、洋一さんやエレンさん凛の方に向き


「それはそうと、雅ちゃんの毎日のご飯はどうしてるんだい?ちゃんと面倒見てるんだろうね?」


洋美祖母ちゃんからの質問に目線を泳がすエレンさんと、俯いている凛、慌てて洋一さんがフォローする


「え、ええ、母さん、凜が雅君にお弁当を作って持っていってますよ!」


「ほうぅ?毎日?」


そういうと、凛の方をみた


「い、いえ、お祖母さん、そ、その、恵美と、・・三宗さんと交代で・・」


「晩御飯は、各家で分担して良いって許可はしたけど、昼は凜に任せる事になってただろ?まさかメグ(恵)の差金かい?」


「そ、その私その雅くんと出会った頃は料理を全然してなくて・・」


そう凜が言うと、洋美祖母ちゃんは呆れて頭を押さえて項垂れた


「その間のお弁当を三宗の孫娘が、雅ちゃんにお世話していたって事かい?」


凛は、苦々しそうに頷いていた


「はぁ・・五十嵐が事、食事の事で他の家に後れを取るとは、洋一!雅ちゃんと風呂場で語ってる場合じゃないよ、アタシにキチンと説明してもらうかね!エレンも!」


「「はいっ!」」


「凛!アンタは私がみっちり仕込むからね!覚悟しな!」


「はいっ!」


玄関ホールに返事が3つコダマする、もはや使用人の人達もホールの隅っこで直立して壁と同化しようと気配を消しているようだった。




「とりあえず、雅ちゃんは風呂に入っておいで」


「うん、ありがとね洋美祖母ちゃん」




「ああ、それと凛は、雅ちゃんの背中を流す為一緒に風呂はいっておいで、これも大事な嫁のお勤めだ!」











「え?・「はいっ!!」」

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