第60話 田舎王子 空と静流二人とお出掛けする


空は、白いシャツに薄い水色のロングワンピースで、前髪を花柄のヘアピンで留めた可愛らしい服装だ

静流は、肩口の空いた薄いピンクのトップスで白い長めのパンツをゆったり着こなし、ウェーブの掛かった金髪を後ろで束ねている。

なにより二人とも女性らしい箇所がこれでもかと強調されており目のやり場に困る


「ちょっとぉ、雅さんせっかくおめかし、したんやさかいぃなんかいうてーなぁ」

「ど、どうかな!アタイこんな格好したこと無くて、そ、その変じゃないか?」


二人の言葉にハッとして


「いえ!お二人ともとてもお似合いです!空はとても可愛らしくて、静流はとても綺麗です!」

二人はお互いを見やると、満面の笑顔で答えてくれた。


「では!行きましょうか!」



二人を連れて早速出かける事にした

静流は、俺の右側を歩きながらチラチラ右手を見ている


「静流もう痛みはほとんど無いから気にしなくていいよ」


そう言うと右手を少しだけ持ち上げて順調な回復をアピールした。

「う、うん、アタイのせいで旦那さんに怪我させちまって本当にすまなかったな・・」

「な、なぁ旦那さん、そ、その右手を守りたいからさ、う、うでを持っていてもいいかな?」


「?よく分からないけど、静流がそうしたいなら俺は構わないよ?」

そういうと、嬉しそうに静流は俺の右腕に抱き着いた怪我の個所に触れないように気を付けてくれているのが判るが、どうも距離感が近すぎて静流の女性らしい部分に腕がすっぽりと挟まれてしまった。


「あ、あのぉ静流?もう少し離れた方がよくないかな?」

「だ、だめだ!こうしないと旦那さんの怪我してる所をぶつけるかもしれないだろ!あ、アタイが守る!」


白い目で見ていた空は左の腕に抱き着き静流と同じ距離感で密着してくきた

「そ、空?急にど、どうした?」

口を尖らせて不満顔で

「静流だけずるいですぅ、うちも雅さんの事お守りしますぅ」

空の女性らしい部分にも挟まれてしまい、腕の自由は完全に奪われた・・・


「は、はは、ははは、お二人に守って貰えるならもう完璧ですね」


そんな3人を通行人はジロジロみていてヒソヒソと話していた、人にジロジロ見られるのも、もうすっかり慣れたが今日に限っては男性からの視線が多かった

言うまでもなく空と静流を見てるのだろう、中には舌打ちする男性たちも居たくらいだ。


「お二人とも電車での移動でいいんですか?」


「ええ構いません、うち等少しでも雅さんと一緒に居たいんやわぁ」

「お、おう、旦那さんの事はアタイがキッチリ守るからよ!そ、その、傍に居させてくれよ」


二人からの熱い視線にクラクラしながら、駅に着くと早速切符を購入し電車にのった。

比較的に空いてるので3人で並んで座っていたら静流が俺の右肩に頭を預けてきた


「ん?静流?」

「すーすーすー」どうやら寝ているようだ

「あら、静流はしゃぎすぎて昨日寝付けなかったっていうてたでぇしかたありませんなぁ」

起こそうとする空さんを止める

「駅に着くまで、まだ40分近くありますので暫くはこのまま寝かせてあげましょう」

静流の肩に置こうとした手を引っ込めて、そのまま俺の胸にそえる



「それじゃ、雅さんせっかくなんで、うちとお話ししましょ」


それから、空は許嫁について経緯をかいつまんで話してくれた。


「それで、空は俺の事を何も知らないのに、許嫁の話しに納得できたの?」


「えぇ、六橋家に生まれて、うち以外に家督を継ぐ者もおりまへんしぃ、昔から家の決めた誰かと結婚して家督を継ぐんやろうなぁとは思っとりましたさかいぃ」


そう気丈に話す空の瞳はどこか憂いを帯びて吸い込まれそうだった。


「うちが最初に雅さんに興味を持ったのは、あの厳しい両親が手放しで雅さんを最高と褒めるもんでぇ、まぁ言わば対抗心のような物だったかもしれまへんなぁ」

すこし、悪戯っぽく笑い小さく舌をだしてお道化てみせる


「僕が、最高っていうのは買いかぶりでしょうけど、空は僕が許嫁って今では納得してるの?」

すると、少し不満気に頬を膨らまして俺の目を睨み

「雅さん、謙遜も度が過ぎると嫌味におもわれますさかい、きぃつけたほうがよろしでぇ」

その言葉を聞いても、俺が納得できてない様子に、空は軽く目を閉じると「はぁー」と溜息をもらした

「全く・・うちの許嫁様は自己評価が低すぎて、これじゃうち等も苦労しますわぁ」

「なぁ雅さん他の婚約者にも同じような事言われた事ありゃしまへんかぁ?」

(そういや、映画の顔合わせの時に彩羽に同じような事で注意されたな・・)


「お家で決まってた許嫁とは言え、うちもそこの静流も地元では其れなりに容姿にも実力にも自信があって、本当に自分と釣り合うだけの異性に今まで巡りあってこなかったんです」

「そんなうち等を惹き付けてしまう雅さんは、本当に凄いおひとなんやでぇ」


そう優しく微笑みながら俺の鼻先をチョンチョンとつっついた


「はは・・今はまだ皆さんのような凄い方と釣り合うような男になってるとは思ってませんが、いつか必ずそう思えるような大きな男になります!」


そう言うと、急に顔を手で挟まれて右側に向けれた


「旦那さんは、今でも十分凄いんだ!このアタイが一生敵わないと思うほどの強さに、何処か一緒にいて安心する優しさを併せ持つ本当に凄い旦那さんなんだ!」

いつの間にか起きていた静流は黄金に輝く瞳に真剣な輝きを宿して強く訴える


「ほんまぁ、西王のセブンスターも氷の女王も、御大層な仇名は返上せなあきませんなぁ」

そんな必死な静流を見て、溜息交じりに空も呟く



【次はーーデステニィーランド前、デステニィーランド前、左のドアが開きます、次はデステニィーランド前】


電車が停車するのを確認し、俺達は電車を降りて改札に向かった。

デステニィーランドは、駅に併設されており改札を出るとすぐ目の前に入場ゲートが見えた。


「では二人とも、入場パスを買ってくるのでここら辺で待っててください」


そういうと、このテーマパークのマスコットのネズミのキャラクターの像の前で2人に待っててもらってチケットを購入しに受付窓口に並ぶ

電車が空いてたので、気にしてなかったが流石に日本最大級の人気テーマパークだけあって10個ある窓口はどこも行列だった、一番すくなそうな窓口に並んでると



「失礼いたします、一堂 雅様ですよね」


パークの従業員らしき女性が声を掛けてきた


「は、はぁそうですけども?」


「一堂様ご一行はVIPパスが発行されておりますので、どうぞ此方のパスを首にかけて頂き彼方の【特別ゲート】からご入場下さい」

そう言って渡された、3枚の紐付きのパスを受け取ると入場ゲートの横にある、誰も居ないゲートを指さされた。


「え?で、でも、お金をまだ、支払ってませ・・


「あ、あぁ料金は頂いておりません、私もそのように指示を受けてるだけですので」

そう言うと営業スマイルでお辞儀してスタッフルームの方へ帰っていった。


(まぁいいか、とりあえず早めに買えたし二人の所に戻ろう)

二人の待つ、像の元に向かうと











「なぁ、いいじゃん俺達も男2人でさ丁度ペアで遊べるし」

「そそ、君らみたいな可愛い子が二人だけで歩いてたら危ないからさ、ほれ、俺達こうみえて格闘技経験者だから君たちにちょっかい出す連中からしっかり守るよw」


空と静流は、如何にもって感じの大学生らしい男の子2人に声をかけられていた、二人は目の前の男二人の方を全く見ておらず完全に無視してる様だった。



「あのぉ、申訳ありません、その二人は僕と一緒にパークを回りますので、防犯の面ではご心配いただかなくても大丈夫ですよ」

そう後ろから声をかけると、男二人が鬱陶しそうにこちらを振り向き


「はぁ?お兄さんみたいなヒョロイのに、彼女ら守れる訳ねぇーじゃんw」

「そうそう、そういう大事な役割は俺達がしっかり務めるからよぉw、僕ちゃんは早くお家に帰ってゲームの中で女の子を守ってあげちゃいなさい!w」

「げへっへ、それウケるwお兄さん、レベルアップしなきゃだめだぞ?勿論ゲームの中だけなw」




はぁ、なんかこのシチュエーション前にもあったな・・全く・・


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