第59話 田舎王子と観光案内の約束

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豪華な食事会が終わり、その日はお開きになった。

詩織と静流は自分の部屋に、彩羽たちは未だ居住できないので自宅と宿泊ホテルに、それぞれ帰っていった。



俺は、部屋が一つ無くなり広々としてリビングにポツンと座るとさっきまでの騒がしさから急に寂しさを覚えた。

(都会に出てきて色々あったけど毎日が目が回るくらい忙しくて、刺激的ででもそれが当たり前になって安心できる居場所になってきたのかもそれない)


ふと、爺ちゃんからの手紙で、はやく都会に馴染めるようにと書いてあった事を思い出し一人で笑ってしまう。

(爺ちゃん馴染めてはいないけど、沢山の良い人に巡り合って俺たのしく幸せに暮らせてるよ)


そんなホットしてる時にスマホが着信したので、出てみると


『空ですぅ、雅さん先ほどはお邪魔させてもろろぉて、おおきにぃ』

「こちらこそ、美味しい晩御飯を作っていただき有難う御座います」


『早速なんですぅけどぉ、うち明日の夜の飛行機で帰りますのぉや、そんで雅さんに明日何処かつれてってもらいたいなぁ思いまして、アキまへんやろかぁ?』

「あ、あ、そうですよね明後日から学校ですものね」

『そうなんですぅ、来週末には部屋にも住めますよってぇ明日はうちとデート

「ちょい待ち!、そういう事ならアタイも一緒に行く!アタイも明日の夜にプライベートジェットで帰るからな!」

『は?!静流?よこから・・というか何で雅さんの部屋に勝手はいってるんのんや!』


「そりゃ、まぁあ?明日で暫く会えないしー、旦那さんもアタイの事恋しいかと思ってよおー」

『ぐぅーで、でも、これはうちが先にお願いしたんやしぃ、明日はうちにゆずりぃやぁ』


「まぁアタイは別に今晩、旦那さんと過ごすでも全然いいんだけどよー、いやそっちの方がアタイ嬉しいかも!」

『いや!ちょい待ちぃ!分かった!分かったから、明日は3人で出かけるいう事でぇ』


電話を挟んで俺と顔が密着してる静流はどことなく嬉しそうだ。

取り合えずハッキリしてることは、出かける事は決定事項だという認識だ、当然俺に意見は求められてなかった。


静流が部屋にきたのは、俺を風呂に入れる為だそうだ、以前のように水着を着てもらってからの風呂を色々と困りながらもなんとか無事乗り越えた。


「旦那さん一人で大丈夫か?そ、その、一人でと、トイレとか、あ、アタイ母さんに色々教わってるからそ、その、お手伝いできるぞ!」

顔を真っ赤にして、自信まんまんにサムズアップする静流をなんとかなだめて、自分の部屋に帰ってもらう。

(今日も疲れた・・明日頑張ろ・・・)






その日の夢で、静流にどっこか面影のある女性と武術の手合わせしていた


【・・・様、流石だな息ピッタリだ、この調子でアタイの事を選んでくれると嬉しいかな!、て、隙あり!】

不意を突かれた正拳突きで体制が崩れたのか、視界がズレる、気が付くと満天の星空に金色の髪の毛を揺らした女性が顔を覗かせて

【・・・様、大丈夫か?頭見せてみなよ】といい美しい顔の潤んだ唇が近づいてくる▪︎▪︎▪︎▪︎


「うわーーーー!」「うぎゃーーー」


勢いよく起き上がるとそこは俺の寝室だ、辺りを見渡すと無駄に大きいベッドの下からウェーブの掛かった金髪のラフなキャミソールで女性らしい箇所を強調した格好の静流が「いてて」と頭をさすりながら起き上がってきた。


「え?どうして静流がここに??」


そう言うと、静流は頬を赤らめて目を潤ませながら、ベッドに手を付き俺の方へ顔をよせてきた

「い、いや、母さんにきいてた旦那さんへの朝の起こし方を、そ、その実践しようとしてだな、」

・・・どうやら間一髪の所で目が覚めたようだった。


「そ、それより、朝飯を空とアタイがつくってるからよ、早く着替えて歯磨きしてくれよな!」

そう言うと、部屋のタンスから下着を取り出し床で正座して「ほれ、着せてやっからよ!早く脱いじゃえよ!」


・・・渋る静流を部屋から追い出し、何とか着替えをすますと洗面に向かった、


「おはようございますぅ、雅さん、今静流がご飯を並べてくれてますんでぇはよぉ歯磨きと髪の毛整えましょうねぇ」

そういうと、歯磨き粉を付けた歯ブラシを俺に手渡し、後ろでドライアーで髪型をセットしてくれた。

・・・断るに断れないので、お礼だけ言うと無心で歯磨きをすませて左手で器用に顔を洗った


リビングに行くと、テーブルに朝食が並んでおり【ご飯】【アサリの味噌汁】【鮭の西京焼き】【目玉焼き】【お漬物】が並んでいた。

鮭の西京焼きとお漬物は空が、目玉焼きとみそ汁は静流がそれぞれ作ってくれた。


「二人ともとても美味しいよ!」


お世辞抜きでどれも美味しかった、アサリの味噌汁は俺のだけ殻をとってあり西京焼きは一口大に小分けしてあってチョットした二人の気遣いに胸があったかくなった。


片づけも二人がすると言ってくれたが、せめて食器くらい片づけると申し出て、静流が洗って、空がふいて俺が片づけるという流れ作業で素早く済ませた。


「では、うち等は静流の部屋で着替えと化粧してきますよって、雅さんも準備よろしゅぅ」

と二人はリビングのドアからベランダを通り静流の部屋に戻っていった。



俺は本日二人を連れていく場所の確認をする



【デステニィーランド】


隣の県の海沿いに展開する世界的なテーマパークで、日本の大手貿易メーカーが運営を担っており、毎年大勢の来場者で賑わってきる特に連休などは家族連れが多く、西日本にある【ユニバース アドベンチャー ジャパン】と2大テーマパークと呼ばれている、俺自身も初めて行くので、事前に調べようと慣れないスマホを弄っていると、急に着信が鳴る

【四葉 彩羽】と名前が出たので電話に出ると


『おはよ雅、アンタさもしかして今日どこか出かけるの?』

「彩羽よくわかったね、今日は空と静流が明日関西に帰るから、行きたいって言うところに連れてくって昨日約束したんだよ」


『へぇ行くところって【デステニィーランド】?』

「うんうん、良くわかったねそうなんだよ二人とも行った事ないって言うし、僕も初めてだし今調べようとしていた所!」


『・・・やはり』

「ん?何か言った?」

『あ、いや何でもない、それより雅!二人に変な事しないように!』

電話口からでも判るくらい不満な声で釘をさす。


「いや、いや当たり前でしょ?!」

『なら、良いけど、変な事しても直ぐ判るからね!』


そう言うと、電話を切られてしまった。


(彩羽は何の用事だったんだ?)



「旦那さん、待たせたな!」「雅さん、おめかしにえろぅ時間がかかってもうぅてぇ」


「あ、あ僕も今調べて・・え!」


普段見てる雰囲気とガラッと変わって、綺麗になった静流と可愛らし空に一瞬で目を奪われてしまった。





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