第54話 田舎王子 映画のパンフレット撮影する
NEW5月号は前回の5倍も発行したが1週間で既に完売となってしまった。
それから慌ただしい俺の日常は進んで、今は週末のパンフレットの撮影日
俺は、竜崎撮影スタジオに来てる
相変わらず、青木さん、赤坂さん、黄瀬さんに良い様に模様替えされてる俺も既に慣れたもので何も言われなくても体を入れ替えたり顔の向きを入れ替えたりと機械仕掛けの人形の様に淡々と準備を進めてもらってる。
「それにしても、先月来た時は本当に素人だったのに今じゃ男性人気モデルトップ3に入るんだから凄いよねー」
青木さんは衣装の最終チェックをしながら褒めてくれる。
「ウチも、ここまで来るとは驚きやわ!お陰でうちらメッチャ忙しいし!まぁ嬉しい悲鳴やけどな!」
赤坂さんも髪の毛の先をワックスで整えながら褒めてくれる。
「わ、わた、しも、雅君との、その、写真を友達に自慢して、その、この間合コンで、」
「ちょい!唯奈は酒飲んだらダメっていったやろ!なんも無かったやろうな!お持ち帰りとか!」
顔を赤くして恥ずかしそうにする黄瀬さんに、青木さんと赤坂さんが頭を押さえてしまう
「はぁ、唯奈あんたなぁ」
深くは聞かないようにしてると、スタッフからの呼び出しがあった
「雅くん、右手気を付けてね」
「今回もバッチリ髪型決まってるで!」
「そ、その、ガンバ!で、す」
俺は3人に頭を下げて撮影場に向かった。
「本日も宜しくお願いします」頭を下げて撮影場所に入ると、奥で竜崎さんと鳳さんに、彩羽と詩織が打ち合わせしていた。
俺も打ち合わせに参加しようとすると、俺に気付いた鳳さんに手で【来ないでいい】と静止されたので、仕方なく撮影背景の前で待つことにした。
空いた時間で色々考えてしまうが今の悩みは俺の転校の可能性についてだろう
(そもそも何で西王学園は俺を転校させようとしてるんだろう?6家の協定とか言ってたけど、空さんは何となく許嫁にこだわってる感じでわかるけど、七星さんは俺が転校して来ることを望んでないはずじゃ)
(もしかして!七星さんわざと負けるつもりとか?!・・・いやあの七星さんが作戦とはいえ負けるとかあるかな?)
空さんと七星さんの意図が分からない中で、もし西王に転校することになったらの事を想像する。
(当然、西王は関西にあるから引っ越しする事になるだろう、鳳さんの事務所は?今の映画の撮影は?色々と転校するにしても不安な事が多いな・・)
一人で考え事をしてると、鳳さんが少し不安気に俺に話しかけてきた
「雅君、体育祭の事二人からきいたわ、この映画の撮影以降の仕事は調整しとくね・・」
「申訳ありません、鳳さんこの度の事は僕ではどうしようも無くて、実は今その事を考えていたんです」
・・・・・
「そうねぇもし雅君が関西に移るなら、関西にも支部を作ろうかな」
「!?」
考えるそぶりをしながら、悪戯っぽく言うがその眼は真剣だった。
「なんたって雅君はうちのエースだしねw」
とウインクをして俺の肩を軽く叩いた。
「それじゃ、パンフの写真撮影始めるよー皆ーー」
竜崎さんが詩織と彩羽を連れて現れた
「それじゃ先ず彩羽からとのツーショットから行こうか」
詩織は控えの椅子に腰かけると彩羽の方をジッと見ていた。
「え、えっと本日は宜しくお願いします、彩羽先輩」
「うんw頑張ろうね、義兄ちゃんw」
驚く俺に、いつもと違い愛らしい笑顔で答える彩羽に驚く、いつみてもこの没入感はとんでもない才能だ、この一瞬で本物の妹に思えてしまう。
「ねぇ義兄ちゃん、今日の私どう?可愛い?」
「え、あ、え?えぇぇ、あの・・」
「ふふふ、ほらぁちゃんと役になり切らなきゃねw義兄ちゃんw」
そういうと俺の左腕に抱き着いて肩口に顔を摺り寄せる、暫く彩羽と映画の撮影ばりに役柄を確認しながら撮影してると、本当の義理の妹のように思えてきた(兄弟は居ないから知らないけど)
その間も【カシャ、カシャ】色んな角度で写真が撮られてる、俺も集中してて周りが気にならなくなっていた。
「はーい、お疲れーー二人とも休憩しちゃってーー」
竜崎さんは俺達には休憩と言いながら渡されたコーヒーを片手にパソコンの前で映像チェックに入っていった。
「「はーい」」
「彩羽先輩、お疲れさまです先輩の演技流石です」
先ほどの雰囲気から、いつもの彩羽に戻っていたので普段の感じで話しかけた。
「まぁこのくらい出来なきゃ、今度の撮影じゃOK出ないわよ、貴方も役になり切る事が大事よ」
「その、どうすれば彩羽先輩のように役になり切れるんですが?俺には全然できなくて」
そうすると彩羽が少し考えてから答える
「そうね、まず雅はさ人の心の機敏を感じる事から始めた方がいいよ、本が好きなんでしょ?その中に心理描写があると思うから、その部分を自分に置き換えて読んでみるとその役になり切れるかもね」
彩羽先輩の言ってる事は、前に師匠が教えてくれた事につながる気がする。
「ありがとう御座います、多分彩羽先輩の言ってる事、ほとんど理解出来てないですが、俺に重要な事だと思います、必ず出来るようになります!」
そう感謝を言うと、満面の笑みで俺の頭を撫でてくれた。
休憩の合間で衣装とメイクを直し、今度は詩織との撮影に臨む
「みーくんwおまたせーー」
現れた詩織は、何時ものストレートヘアーでは無く後ろをひとつ編みした髪型にヘアバンドをした髪型で現れた。
その笑顔は、何時も見慣れたはずの詩織よりもどこか懐かしさを感じる雰囲気があった。
詩織の姿を待合の椅子で見ていた彩羽は少し驚いた様子で
「へぇー詩織・・やるじゃない・・流石Vチューバーでトップ張るだけの事あるわね」
ぼーっと詩織の顔をみてると、俺の事を下から覗き込み
「んーー?どうしたの?みーくん、私なんか変かな?」
少し頬を赤くし、優しい声でそう語り掛けられ動揺してしまう。
「えっ、いやそんな事ないです、とても綺麗です!」
慌て取り繕うと、口元を手で押さえてクスクスと笑っていた
「変なみーくんwさっ撮影始めようか!w」
「宜しくお願いします、詩織さん」
詩織との撮影では、彩羽の時と違い向き合った状態の撮影がメインだった、俺は詩織の右腕をそっとしたから支え向き合った状態でお互いを見つめるポーズを何回か取り直した
「ねぇみーくん、私ね物心つくときからみーくんだけを見て来たから今みーくんが何考えてるか何となくわかるの」
「え?どういう意味?」
悪戯っぽく微笑む詩織は、俺の首に手を回して顔を近づけると、俺の耳元で魅力的な声で囁く
「今、私の事を本当に幼馴染と感じているんでしょ?w」
その言葉に、ドキッとしながら詩織から感じる懐かしい雰囲気に幼少の頃の思い出が蘇る
「ねぇあの花輪を作った、川上の花畑今度一緒に行ってみようね」
俺の中の記憶と、懐かしさ、暖かな思い出が詩織の優しい声と共に蘇り、自然と詩織をかるく抱きしめる
「ねぇ、みーくん泣いてるの?」
「!?」
俺の目からは一筋の涙が零れる、詩織の雰囲気とその声に、気持ちを過去の思い出の場所に連れて行かれた感覚だった。
「はーーい!OK!いい絵とれた!」
竜崎さんの声で我に返ると、「あぁーあw残念w」と軽く舌を出して悪戯っぽく笑う詩織は何時もの詩織に戻っていた。
彩羽といい詩織といいこの二人の俺に魅せてきた雰囲気は尋常ではない才能なのだろう、お陰で以前のように他のスタッフに迷惑かける事なく撮影は無事終了した。
今日は日を改めず、その場でパンフに使う写真の選定を行うとの事で、俺を挟んで彩羽と詩織が座り目の前の大きな画面に映される写真を眺めていた。
映し出される写真を見て時折周りのスタッフから感嘆の声や賞賛の声、女性陣の甘いため息が聞こえてきて、どの写真にするか流石の竜崎さんと鳳さんも悩んでいたが、何とかパンフ用の写真を選びきった。
「ねぇ青葉この写真さ、映画公開後に写真集として出してみたいんだけどアンタん所で出版出来ないかな?」
「茜あんた・・商売の才能有るわね・・それは私の方で上にねじ込んでおくけど版権はあんたんとこのお父さんのテレビ局でしょ勝手に進めていいの?」
鳳さんは、Vサインをして頷いた
「はぁアンタんとこの親も相変わらず娘に甘いのよねぇ・・お互い子離れ出来ない親持つと苦労するわね・・」
無事撮影も終わり、解散となったので鳳さんと竜崎さん、他のスタッフさんに挨拶して帰宅する事にした
「ねぇ雅、もう結構遅いし私送っていこうか?」
そう彩羽が申し入れしてくれたので
「もしお邪魔で無ければ、ぜ「ああぁ大丈夫でーーす、間に合ってまーーす!みーくんは私と帰るんでーーw」
詩織の言葉に驚き、俺と詩織を睨む彩羽
「は?どういう事?説明してくれない?」
詩織は俺の左腕を取ると
「私とみーくんは同棲してるんでーーw」
「は?」
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