第53話 田舎王子 カップル推し派閥と遭遇する

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一通りの事情は詩織が説明してくれたが

「・・・それは・僕の居ないところで勝手に決まる事なの?」

その答えには、申訳なさそうにしながらも

「うん、最初は私が転入初日にみーくんにキスした事が発端なんだけど・・」

そう話してる途中で、詩織が「ハッ」として再び俺に詰める

「そういえばさぁ、私以外の子ともキスしたって聞いたけどぉ?どういう事なのぉ・・まさか!」

詩織は再び危険なオーラを放つ

「い、いや、詩織さんと同じで頬にしか・・彩羽先輩はオデコでした・・」

危険なオーラを纏いながらも、自分の事を棚に上げての話で責められないので一旦は静まった。


「はぁ・・・つまり、私の家、二階、三宗、四葉、五十嵐は、6家が揃ってない内に、みーくんと身体的な接触をしたからペナルティとして、六橋と七星の家から補填を要求されていて、それは断れないの、勿論みーくんも・・」


とんでも無い事事態になり俺の学生生活の未来は6人の婚約者に委ねられる事になった。


「で、恵美さん、彩羽さん、凛さんとあの後、話し合った結果、体育祭の実行委員とは別に、私達で打てる手は打とうって話になって色々作戦を考えてる所なの」


「それで、七星さんと空さんの事を僕に聞いて来たって事ですね」

頷く詩織だが、その表情には何か策が思いついてるのか少し余裕そうではあった。


話の後、詩織は俺の部屋で一緒に寝て看病すると聞かなかったが、怪我が完治したら二人でお出かけ(デートだと言い張る詩織)する事を約束して、引きさがってもらった。

昨日の【練成】の影響もあり、体の気の巡りも本調子ではないので倦怠感と先ほどのに精神的な疲れから詩織を見送る(リビングに出来た勝手なドアの前で)とベッドに倒れ込みそのまま爆睡した。



翌日は学校のある日だ、最近は人の通りの少ない道を遠回りしながら通う事にしてる、理由は昨日発売したNEW5月号の事だ

先月は特に気にもしてなかったが、今朝のニュースで見たら朝のコンビニで購入する女性の行列が出来てしまい店内が寿司詰め状態な映像を目にした、並んでる客層のほとんどが女性で皆手に俺と彩羽先輩の写真が表紙の雑誌が写っていた。


許嫁達からも、おめでとうとメッセージを貰ったけど、鳳さんと竜崎さんは昨日から勝ちを確信していて亀山さんを誘って飲みふけっている様だった

(何故、知っているかと言うと、昨日の夜に二人から鬼のような着信とメッセージが入っていて、メッセージの内容が言葉に出来ないような事ばかりだったから・・・・)


部屋を出ると、詩織は既に登校してしまったのか気配が無かった、しかし

「ん?反対の部屋も誰か引っ越しするのか?」

俺の右隣の部屋に今日は朝からせわしなく荷物が運ばれていた

「まぁ普通は荷物を運ぶだけだよね・・」詩織の場合は勝手にリビングにドアを設置したり、俺の部屋のベランダを繋げるとか、理不尽なリフォームして時間が掛かってたようだ


人がようやく通れるような路地の道を暫く進むと学校の前の大通りに出る、流石にここは道に出ないと登校できないでの周りを確認するが生徒の往来は途切れる様子もない、路地の陰からキョロキョロしてると


「雅先輩!、こっちです!」

そう路地の横から声を掛けられる、その瞬間に数人の女子生徒が俺の壁になるように立つと内の一人が前に進みでて


「先輩、ここからは私達が先輩をお守りします」

そういうと、自分の胸をドンと叩く


「え、えーと君は?」

ハッとした女子生徒は「私、1年A組の立花 桃花(たちばな ももか)と言います」とお辞儀をした。

「立花?・・まさか!生徒会長の!?」

そういうとニコっと笑って「はい!生徒会長の立花 澄花は私の姉で、雅&恵美推し会の会長でもあります!」


「はぇ?何の会長だって?」

「え?ですから、雅&恵美推し会です、正式名は【雅きゅんと恵美たんの尊カップルを成立させて皆で尊死しよう会】です」


「・・・・・・・・・・・・」

「ですから!恵美様以外に悪い虫が雅先輩に付かないように我々会員がお守りします!」

すると全員が胸に拳を付けて敬礼のポーズを取った


俺は自分より身長の低い、女子生徒に4方を囲まれてその先頭を歩く桃花に先導されながら学校へと向かう、道中俺に近づこうとする生徒や通行人には桃花を筆頭に4方の(ガーディアンズ(守護者達)?と桃花が呼んでいた)の鉄壁の守りで近づく事すら出来ない。

下駄箱に着いても上履きに履き替える俺の隠すように4人が背を向けて立ち登校してきた生徒を威嚇している、流石にこれは恥ずかしいい。

上履きに履き替えると

「あ、あの・・立花さん?これは流石に恥ずかしいと言いますか・・・」

桃花は手で×を作り、首を大きく左右に振ると「ダメです!雅先輩が恵美さんとくっ付くまで我々の戦いは終わりません!あ、それと私の事は桃花と呼び捨てで!後輩ですし、それかガーディアンピーチでも良いですけど!」

俺は白い目で結構だと断って自分の教室に向かった。


教室には人だかりが出来ており、俺の席の周りは二酸化炭素が2割増しなくらい息苦しかった。(詩織と彩羽が居ないから全員俺の席に・・)








●時間は遡り、早朝の生徒会室(実行委員責任者専用室)



朝の早い時間に4人の美女が一つの部屋に集まっていた

「で、詩織何か策があるの?」

「考えはあるけど、私の策でようやく勝負を五分五分に持っていけるかどうかって所」

「とりあえず、聞かせてくれないか?」

「私も考えがあるのですが、まず詩織さんの話を聞きたいです」


詩織がまず自分の策をみんなに話す


「我々が開催高校という事で、相手は実行責任者とは言え、空さんと静流さんは全部の競技に参加する事は出来ないでしょう」

そう、雅が全部の競技に参加できるのは開催高校で実行責任者の特権でもある、今回招待高の西王学園側の実行責任者にはその権利は無いという事だ

「それに、もう一つ各種競技の配点も此方に決定権があるはず」

「だから、空さんと特に静流さんの出る競技の配点を下げて逆に出ない競技の配点を上げて捨てる競技と勝ちにいく競技を選別するの」

他の面子は納得しているが、たとえ空や静流の参加しない競技だとしても西王学園はスポーツ系では東皇高よりも頭一つ飛びぬけてるので簡単とはいえない

「ここまでは、恐らく恵美さんも考えて居たんじゃないかな?」と詩織は恵美をみると、恵美は黙って頷いた。

「そこまでは私もほぼ同じ意見です、あと付け加えるならこの中で唯一凛ちゃんだけは、向こうの二人に運動競技で張り合えると思ってるの」

「だから事前に凛ちゃんの出る競技を重点的に取りに行こうと考えて競技への出場メンバーを選定してるの」

凜は黙って強く頷く

「詩織さんの言う、空さんと静流さんの出る競技については、実行委員会が事前に把握できると思うから任せておいて」

「私もダンス競技なら多少自信あるし」

彩羽も、恵美も凛も気合は十分だ、詩織も西王に負けるつもりはない


詩織は切り札とも言うべき策を披露する

「それで本題なんだけど、体育祭での勝負、もし負けたら雅君が転校するって事実を女子生徒に周知させたらどうかしら」

「詩織、それは無用な混乱が起こらないか?!」

彩羽は少し考えて「でも、後で後悔する位なら今行動して打てる手は打つ方が良いと私は思う、詩織どんな意図があるの?」

その言葉に全員が詩織の方を向く

「そもそも、詩織は全女子生徒達へは、どうやって伝えるつもりなの?」

詩織は落ち着いてのポーズをして

「皆は今、東皇高の女子生徒内で私達の誰とみーくんがくっ付くかで【カップル推し】の派閥が出来てる事は知ってる?」


凛と彩羽は首を振ったが、恵美だけは頷いていた。

「やはり・・恵美さん所の【推し派閥】の会長は今の立花生徒会長だしね、この部屋の融通もすんなり通るはずね」

凛と彩羽は驚いて恵美を見るが恵美は動じない


「恵美さんだけでなく、凛さん所の派閥の会長は部活連の会長で副会長が風紀委員長のはずだし、彩羽さん所は会長が新聞部の部長で副会長は演劇部の部長、私のところは映像研究会の部長で副会長が写真部の部長だったと思う」

詩織の話に納得する節があるのだろう、凜も彩羽も何か考えている


「つまり、詩織は私や彩羽、恵美にそれぞれの派閥の長に、この事実を伝えて協力を仰ぐという事だな」

詩織は頷いてさらに補足する

「そうね、それに加えて伝えてもらえる?「一番活躍した派閥の推しはみーくんと1日過ごせる権が貰える、と」

「「「!?」」」




「私達にもそのくらい、ご褒美が無いとねw」

と詩織はウインクする。



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