第42話 田舎王子と許嫁同士の決闘
七星は、後方に飛びのくと構えを取り直して「フゥー」と深く息を吐いた。
扇子で受け止めた方の空も、さっきまで昏倒していた影響か呼吸が乱れていて肩で息をしている。
「はっ!親父からも六橋家の舞踊とは事を構えるなと言われてたから、お前とは本気でやり合ってなかったんなぁ六橋 空ーー!
セリフを吐き捨てると同時に、空へ飛びかかった
空は2枚の扇子を交差させると、七星の拳をいなすクルリと舞うような流れで七星の背後をとると回転を加えた扇子の横なぎを七星の背中に叩き込む
「ぐぅぅい」
七星は苦悶の表情を浮かべながらも、片手で受け身を取りバク転しながら再び距離をとった
「相変わらず、猛牛のようですなぁ、さしずめうちはマタドールと言った所でしょうかぁ」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべてる空だが、背中に回した腕が痙攣していた
「なるほどなぁ確かに?これぁアタイとは相性最悪だわーーな!」
そう言うと再び同じように直線的に空の方に突進してきた、空も同じように扇子を交差して構える
「はっ同じ手を何回も食らうかよ!」
そう言うと七星は突進の途中で「地割れ」の反動を利用し直角に移動し、側面から空に拳を撃ち抜いた
「な!消えた!?」
空の目からは七星が突然消えたように見えたはずだ、「そこ!」しかしさすがと言うべきか素早く反応すると片手だけでは有るが扇子で七星の拳を受け止める
が!
受け止めた扇子は破壊され、七星の拳が空の脇腹を穿つ
しかしその反動を利用し残りの扇子を七星の右肩に打ち込むと、吹き飛んだ空を俺が飛び込んで受け止めた。
空はうっすら目を開けて何かを呟くが言い終える前に昏倒した。
「ちぃ・・相打ちか・・こっちも右肩がやられちまった・・」
右肩を押さえゆっくり立ち上がる七星からは既に威圧を感じない
【パチパチパチ】
気が付けば辺りはすっかり日が落ちて薄暗くなっており、公園の照明も点灯していたその陰から拍手をしながら男が現れる。
「いやー見事な戦いでした、素直に賞賛しますよw」
そう拍手をしながら現れたのは鬼道君だった、七星は鋭い目線を鬼道に向けると
「なんだ?女同士の決闘をコソコソ影からご観戦とは、良い趣味じゃねぇか!あぁん鬼道!」
凄む七星を見てニヤニヤ笑う鬼道を見て「ちっ!」悔しそうに舌打ちをする七星
「いやね、わが校が誇る2大美女が血で血を洗うような決闘をしてると聞いてね、これは只ではすまないと思いまして怪我をされたお二人を僕が優しく介抱して差し上げようとw」
そう話す鬼道の口元からは涎が溢れてきて、右腕でその涎を拭って醜悪な笑みを七星と昏倒してる空に向けた
「はっ!笑わせるぜ!アタイと付き合いたいって何回も試合したが一度として勝った試しが無いお前がアタイらに何か出来るとでも思ってるのか?あぁ?鬼道ぉーー!」
再び威圧を高める七星だが、その額には痛みからくる汗が滲んでおり威圧も先ほどまでの勢いは無かった。
鬼道も七星が万全で無い事を悟ったのか、言葉が荒くなった
「七星ぃ!いつもの迫力が無いじゃないか?今やったらどうなんだろうなぁ?あははは」
俺は鬼道に声をかける
「鬼道君、今はそんな事を言ってる場合じゃない!早く二人を病院に連れていかなきゃ!」
そう叫ぶ俺を虫けらでも見るかのような冷たい目で
「あぁん?これはこれは今をトキメク売り出し中の人気モデルさんではありませんか?なにやらズタボロのご様子、せっかくのお綺麗なお顔が台無しではないですかぁ?w」
煽ってくる鬼道に苛立ちを覚えたが
「僕の事は良いから二人を早く病院に!」
「あぁーてめーは早くどっかに消えろよ、これから俺達は七星と六橋とでお楽しみだからよwなぁ!」
そう言うと、奥の茂みからゾロゾロと集団が現れた、ざっと30人位だろうか
「鬼道、お前程度の仲間が何人いようが頭数に入るかよ!」
そう啖呵を切りながらもゆっくり俺と空の方まで後退してきた七星は、そっと俺にだけ聞こえるように
(おい・・・ここはアタイが何とかする・お前は六橋を連れてここから逃げろ・・)
(しかし!この人数を七星さん一人では・・)
(いいから!早くしろ!)
七星さんは俺達を隠すような位置に立つと、鬼道の注意を逸らす為に、ジャンプしならが体をほぐし準備運動を始めた。
「うひょーーおい!鬼道!すげー上玉じゃねーか!それにあの胸!弾んでるぜ!ゴクッ」
「オイオイ!最初に味見するのは俺なんだからな、オメーらの後からじゃ汚くて萎えちまうぜw」
「あーひでぇーw」
俺はどうにか空を抱きかかえると、音を立てないように全力で駆けだした。
七星の異常なほど長い準備運動に違和感を感じた鬼道は
「!?おい、六橋が居ねえ!クッソ!あの野郎!!おい!何人かで後を追え!」
集団の内5人が駆け出し、俺の後を追いかけたが。
「ここは通さねぇよっ!!」
七星の回し蹴りで一人が吹き飛ぶ
「お前らもだ!っ!」続けざまにハイキックを放つも【ガシッ】男の一人にブロックされた、すかさず離れる七星の横を3人の男がすり抜けて俺と空の後を追いかけた。
「てめぇら・・・」
鬼道はケタケタと両手を広げて笑いだして
「あぁ言って無かったなぁ、こいつら皆【鬼道館空手】の連中で皆、有段者だ!しかーもーーーw」
男たちは、手に金属バットや鉄パイプ、角材を手にしてニヤニヤして七星の周りを徐々に囲んでいく
周囲に気配を巡らせる七星だが六橋と一戦して右肩を痛めた状態ではさっきの【七星式】は使えない、くやしさが顔に出る七星を鬼道は下卑た表情で眺めるのだった。
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