第41話 田舎王子と二人の婚約者

俺達は学校を後にして、以前出会った公園にきていた。


「雅さん、クレープありますぅ、うちこの間のお礼に、おごりますさかいぃ好きなの言うてやぁ」


今の状況は六橋さんからクレープを誘われて食べに来ている・・・


「あ!うちこのイチゴとチョコのにしとこぉー、ほらぁ雅さんも遠慮せんとぉー」


俺はお店のいち推しという

「じゃこの、バナナとカスタードのやつでお願いします」


「あ、うちが悩んでたやつぅうぅぅー!、そうや!雅さん後で一口交換してくださいぃ」


六橋さんは、目をキラキラさせて願いしてきたが


「えぇ元々、六橋さんのお金ですから、気にしないで全部食べていただいても」


すると六橋さんが見る見る不機嫌になっていく


「雅さんは、いけずやわぁ他の方は名前でよんではるのにぃうちだけ家の呼び方ぁ・・うち悲しいわぁーー」


そういうと落ち込んでしまった


「あ、いえ、そういう訳では・・えーと空さん?とお呼びすれば?」


空は元気に手を叩くと


「ええぇほんまは、呼び捨てでよろしいんやけど、いまの所はぁこれで我慢しますぅ」

「そやけど、クレープを二つは女の子には悪魔の囁きですさかいなぁきぃつけて下さいぃ」

そう言うと笑いながら俺の腕を取り、受付まで進む、空さんは二人分の会計を済ますと公園のベンチに腰掛けて頂く事にした。


「おぉ雅さんの方のも美味しいですぅ」

空は頬に手をおいて、歓び嚙み締めた

「ほら、雅さんも私のを、どぉぞぉーー」

俺の方に自分のクレープを向けると俺に食べろと口に近づけてきた(うーんこれは・・)


「で、では・・はむ・・もぐもぐ・・」


「どうですぅ?美味しいですやろぉ?」

軽く首を傾げて俺に感想を聞いてきた空に俺は、素直に微笑んで


「はい、とても美味しいです、ありがとう御座います」


「はうっ」


空は俺の顔をみると、耳まで真っ赤にして俺のかじった後のクレープを見つめながらブツブツと言っていた。

(これは・・強烈やわぁ・・・間接キス・・ゴクッ)


(空さんが喜んでいるようで良かった・・)空の様子に満足て自分のを頬張ろうとした時













シュッ!




不意に後ろから何者かに殴られそうになった、慌てて首を横に避けたが空さんに貰ったクレープは落としてしまった

俺と空さんは、ベンチから立ち上がると後ろを振り返り相手を確認した


「ほう、今のを避けるとはやるじゃないか」


拳を振り抜いた姿勢で視線だけこちらに向けた、七星さんだった

空さんは険しい顔になり、俺の前に両手を広げて七星さんに向かって静かに怒鳴る


「静流!これはどういう事なのか、うちに判る様に説明してもらうで!」


その怒気を帯びた瞳を前にニヤリとした七星さんは、俺たちの座っていたベンチを勢い良く蹴り上げた

急に目の前のベンチが持ち上がり、意識を持っていかれてる空さんの背後に回ると首筋に手刀を落すと、空さんは糸の切れた人形の様に膝から崩れていった。


「空さん!」


空が倒れる前に抱きかかえ、そっと別のベンチに横たえる

特に外傷も無く呼吸も安定しており、意識を失ってるだけのようだ

俺は空さんの前で立ち上がると、威圧の為、気配を強めた。


「七星さん、なんで空さんにこんな事を・・返答次第では・」

俺の威圧にも全く動じてない様子の七星は

「別にそいつに恨みはねぇよ、邪魔だから少し寝ててもらうだけだ、アタイの用事はアンタだ一堂!」

俺の方を指さし、鋭い目つきで威嚇してくる


「俺に!?何故ですか?俺達今日初めて会ったばかりじゃずないですか!何でそこまで恨まれなきゃいけないんですか?!」

俺の答えにさらに不機嫌さを強め

「ああん?こっちとら突然勝手に許嫁だってお前の事説明されて、嫌だっつて拒否したら親父にボコボコにされたんだぞ!」

たしかに、事情は分かるが

「だったら俺の方から七星さんのお父さんに正式に婚約破棄の話をします!」

七星さんは首を振った

「そんなことされてみろ!アタイが他の婚約者に負けたと思われて、何されるかわかんないだろ!最悪勘当されちまう!」


「・・じゃ俺はどうすれば・・」

「アタイと勝負しろ!」


「え?!勝負?」

「アタイの家は武術の家系だ、いくら頑固な親父でもアタイ程度に負ける様な男は認めないだろ、もしお前がアタイに勝てれば許嫁として認めてもいい」


「で、でも女性に拳を振るうのは・・・」

「はっ!どの道アンタに選択権はない、女を殴れない腰抜けなら今ここでアタイに倒されてしまいな!」


そう言い放つと同時に、俺の顎めがけて掌底を放つ寸前で交わすが・・これは

「こ、この技って・・・一堂流の・・」

七星はその言葉を遮る

「一堂流なんかと一緒にするな!これは親父が一堂流をさらに進化させて編み出した七星式だ!」

そう言葉を発すると同時に、さらに回し蹴りを撃ってくる俺はそれを右手でガードすると七星さんのガードで止めた七星の足を掴む

しかし、七星の反対の足が俺の延髄めがけて蹴りだされたので七星の足を離して後に飛びのく

「へぇまさか、【啄木鳥蹴り】をかわすとは・・伊達にじいちゃんにしごかれてないか」


七星は少し屈んで、勢いをつけると猛スピードで俺の前まで来ると地面を【地割れ】の反動で飛び上がり、俺に向かって拳を振り抜こうとしてる。

このまま受けたら腕がただでは済まないと直感で感じ後ろに飛ぼうとするが、俺の後ろには横たわる空さんが居る

「くっ」

自分も同じように【地割れ】を利用したカウンターのパンチなら体重があるぶん俺に有利かと拳を突き出すが、このままだと七星さんを撃ち抜いてしまい大怪我させてしまうと思い直前で拳を引きガードの体制を取った。


【バキッ】


俺のガードした方の腕が折れた

しかし何とか踏みとどまり、空さんは無事だった。

「けっガードしたか!でもあの程度も避けれないとは所詮ボンボンの御遊びって事か!まぁいい、くたばれ!」


折れた腕を庇いながら、後ろの空を守る為、俺は七星の拳を受け続けた

「ほら!どうしたよ!女を殴れないってのは良い言い訳だよな!」

流石に、このままでは危ないと感じ・・・力を・



【バシッ!!】

後ろから誰かが七星の拳を扇で受け止めた


「静流、いい加減にしいや!ゆるしまへんで!」

俺の目の前には両手に扇子を構えた空が俺を庇うように立っていた。



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