第30話 田舎王子と策士詩織
「それでは、お父様に・・・いえ、二階家の力でやっていただきたい事があります」
私は、父に内容を説明をした。
「ふむ・・・・あれは・・・・家の物・・・・まあ此方の権利を主張すれば、なんとかなるだろう・・・他の家には気付かれてないな?」
詩織は頷き
「はい、・・・・家以外は気付かれてる事は無いと思います」
「まぁそうか、気付いていればとっくに押さえているはずだな・・・よかろう幾らかかっても必ず用意しよう」
父の返事に私は頷いた。
「次にですが、こちらは詳細を掴んでるわけではないのですが、私の予想が確かであればと言う前置きでお聞きください」
「よかろう」
「鳳家の当主と、竜崎家の当主が娘同伴で秘密裏に接触しました、向かった先は超売れっ子小説家でもあり世界的な映画監督一家でもある亀山家の別宅です」
父はこの情報に興味があったのか身を乗り出して話を始めた
「いよいよ、4門が動くのか・・・当然、若様の件だな・・・」
「はい、現在の状況から察するに竜崎書房より発刊されてる亀山先生作の超人気ベストセラー〈君の事を決してわすれない〉の映像化を鳳家の放送局提供で制作する為だと思われます」
父は娘の推察に興味深々で聞き入る
「その根拠は?」
「はい、非公式ながら四葉家からスポンサーの申し入れが有ったと聞いてます、恐らくですがみーくんと彩羽さんをメインのキャスティングで映画作りが始まると思われます」
「という事は、豊虎自動車もスポンサーに名乗りを上げるか・・・・」
「はい、恐らくは・・・・」
(豊虎自動車・・・・日本が誇る基幹産業の自動車会社であり世界No1シェアを争う超大手自動車メーカー)
「で、お前は二階にもスポンサーとして協賛し、お前をメインキャスティングするように動けば良いという事だな」
詩織は頷き補足した。
「はい、この原作はダブルヒロインが主役の男性と恋愛を繰り広げる話です、一つのヒロインの席は彩羽さんですが、もう一つの席に私をキャスティングしてください」
「なるほどな・・・しかし若様も四葉の娘も世間的に認知されていてキャスティングも判るが、お前はVチューバーとして顔を隠しての認知だが?」
「それは、問題ではありません、キャスティングが決定次第、顔出しして世間からの認知を取り付け併せて映画の宣伝をするつもりです」
父は若干驚いたが、私の覚悟を黙って肯定してくれてるようだ
「うむ、お前の覚悟も若様への想いも他の姫には負けておらんようだ」
「当然です!すべて薙ぎ倒して私がみーくんのお嫁さんになります!」
父は満足して微笑み
「よかろう!お前の要求全て引き受けよう!お前は若様への想いを遂げよ!」
そう言うと画面の向こうの父は席を立ち映像と通信は途切れ真っ黒い画面にうっすらと自分の姿が映し出される。
「凛さん、恵美さん、彩羽さん・・・・私の本気を見せてあげるから!」
そう言い放つと服を脱ぎ捨てて、シャワー室に入る・・・・シャワー室にも半裸のみーくんのアクリルに保護された写真が飾られてる。
「みーくん、待っててねw」
<同日同時間 雅の住む寮にて・・・・>
俺は先ほどまでシャワーを浴びていたが、誰かに見られてるような気配を感じて慌てて出てきたところだ。
サボり気味だった修練をいつもより多めにこなし、ジョギングもしたあとで本当なら、もう少しゆっくり汗を流したかったが恥ずかしいっていう気持ちに勝てなかった。
(さっきの感覚は何だったんだろ?なにやらジロジロみられてるような感覚で少し恥ずかしかったな・・・)
気持ちを落ち着ける為に、リビングの椅子に座り最近読み始めた本を読む・・
〈君の事を決してわすれない〉
最近話題の恋愛小説だ、正直恋愛の事は全く分からないが今の置かれてる状況から知らない、興味は無いでは済ませられない事は俺でも判る。
恋愛は分からないがこの本はとても読みやすく、内容も濃い為、気が付けばもう直ぐ最終章と言うところまで読み進んでいた。
あらすじを簡単に説明すると、とある高校に通う男子高校生が2年生になった春に、同い年で小学校の頃に義理の妹になった女の子と、幼少の頃に引っ越してきてズッと仲の良かった同じ年の幼馴染に同じ日に「好き」と告白される所から始まる。
男の子は二人からの告白に、どちらも大事な人で有る事に悩み抜いてようやく決心し告白の返事をしようとした所に事故に遭い二人の告白直後からの記憶が無くなってしまう。
告白した二人は当日自分が呼び出しを受けてる事に「自分こそが告白を受けてもらえた」と信じて直近の記憶を無くした男の子と接していくが、等の男の子はどちらを選んだのか全く記憶に無い、男の子は自分がどの様な結末を望んだのか?本当に好きなのはどっちなのか?
答え探しに再び悩む日々を送る。
と、いう話だ。
何故か他人事とは思えず、感情が入ってしまうのは俺の気のせいか?
そんな穏やかな時間を読書に費やしているとスマホの着信が鳴る。
「はい、もしもし雅です・・・」
『あー私、茜です、夜にごめんねーーー』
鳳さんの電話はいつもとんでもない事を言うので少し身構える
『あーーー私からの電話・・・少し警戒してるでしょ?』
俺はドキッとして周囲を見渡す。
『あはは、そんな驚かなくても盗撮なんかしてないよーーー雅君はそんな事しなくても判りやすいから~~』
そう失礼な事を言う鳳さんは電話口で軽く笑ってから本題に入る
『あー明後日発売のNEW5月号なんだけど先月の5倍売れる見込みだし、まずは、おめでとう!』
5倍?すごいのか?よくわからないので、軽く返事をして返した。
『えええぇーーなんか軽いな~もっと驚いて喜ぼうよ~~私、お父さ・・・親会社の社長から特別褒賞貰ったから今度皆で食べにいこ~~』
何か言いかけたが、今度また鳳さんが奢ってくれるようだ。
『それは、それとして、もう一つ報告あるんだけどーーーー』
「はぁ何でしょうか?来月分の撮影ですか?」
『ブッブーー違いまーーース!』
『雅君が今度の映画の主役に選ばれました!!』
・・・・・・・・・・?・・・・??・・・・え?
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