第28話 田舎王子 実行責任者に任命される
俺が立花会長から、突然の連絡事項を受けたとほぼ同時刻に各教室でも先生から運営責任者に俺と恵美が決定した事を伝えていた。
ザワザワする教室・・・・それもその筈だ本来であれば各クラスからの運営委員を選出し、その中からさらに責任者を選出するのが通年の流れだ。
それが今年はすでに運営トップが決まってる中で運営委員を決める事になった。
当然各クラス特に俺のA組と恵美のB組は騒然としてる、先生に対し不満を言う者もいれば自分たちが面倒な実行委員にならなくて済んだと安堵する者、しかし一番多いのは俺や恵美と一緒に運営委員をしたいと希望者が多い事だ。
その中で各クラスで男女1名ずつとの選出基準で、A組は女子1名しか立候補出来ない当然 詩織も彩羽も手を挙げたが抽選方式になりあえなく落選した。
それよりも酷いのは、B組だ既に恵美が当確してるので凜は立候補すら出来ない。
「恵美さん、やってくれましたね!」
「恵美・・・・」
「へ~~大人しそうに見えて結構やる事エグいのね」
3人はそれぞれ、大人しい恵美がここまでの行動を起こした事に驚きや賞賛の言葉を漏らした。
<場所は変わり・・・生徒会室・・・>
「え?なんで僕なんでしょうか?自分は転入してからまだ一ヵ月しか経ってません!体育祭がどんな物かも知らないのに、とても勤まるとは思えません!」
そう必死で訴える俺に、さらに悪戯っぽく会長は説明する
「あ~ね~でもこれ学校のトップからの決定だしね~覆らないよ?w」
トップ?ということは校長?理事長?という事は・・・・・・まさか!?
俺は、恵美の方を見ると、満面の笑みでニコっと微笑み返してきた。
唖然として恵美を見つめる俺に、横から会長が追い打ちをかける
「一堂君が運営について何も知らないのは理解してるよ?そこで!これから体育祭が終わるまで恵美から色々教わって貰う為に、この第一生徒会室を君たち運営責任者専用で開放しようではないか!」
そう席を立ち上がり両手を広げて、劇的な口調で自分の発言に酔っている姿を呆れた様子で見ていると
【パチパチパチパチ】
恵美が満面の笑顔で会長に拍手を送っていた。
もはや展開についていけない俺を他所に会長は入口に向かって歩いていくと扉の前で振り返り
「ここは内側から鍵も掛かるし、防音もしっかりしてる!盗撮や盗聴の心配はないよ!」
会長の訳の分からない説明に
「なんの話してるんですか?!」
「まぁ素晴らしい!それは助かります!」
そんな事をいう恵美に驚いたが、会長は手をヒラヒラさせてから恵美にポイと何かを投げて部屋から出てった。
恵美は手に取ると紙に何か包まれていた、中を開けると【生徒会室】のタグが付いた鍵が入っていた。
恵美はカギを取り出した後、残った紙を見て耳まで赤くなっていた。
恵美の肩越しに顔を覗かせて紙を見ると
【避妊はちゃんとしてね!!】
と書いてあった。
「あの人、なんなんだ?!」
呆れて何も言い返せないでいると、恵美はクルっと振り返ると大きな垂れ目をキラキラさせて
「これはしっかりと準備しないとですね!!」
と何やら意気込んで、両手でサムズアップをした。
恵美と運営責任者会議の日程を決めてると、その日の下校は時間ギリギリになり夜も暗いので恵美を家の近くまで送って行く事にした。
そもそも恵美位になれば、お迎えが来ても良さそうだが帰り間際に何やら電話をすると
「今日に限って、運転手が全員風邪で休んでるようです・・・・・仕方ないので歩いて帰ります・・・・チラッ・・」
訴えかける上目遣いが庇護欲を掻き立てる。
「恵美さん、暗くなってますし近くまで送っていきましょうか?」
そう言うと目をキラキラさせて「いいんですか?!、行きましょう!すぐ行きましょう!」そう言うと俺の手を取り下駄箱に向かった。
玄関から出るとアタリはすっかり日が落ちて校舎の照明と構内からの僅かな明かりしか無い状況だった。
「あの~雅君?足元が暗くて見えないの~・・手を繋いでもらっても・・いいかなぁ?」
そう潤んだ目で訴えられて拒否できるはずも無く、俺は微笑んでから恵美の手をとった。
「ウフフ、雅君の手大きいね!それに暖かい!ね」
上機嫌な恵美と好きな音楽の事、好きな本の事、この間もらったクッキーのお礼を話ながら歩いてると
「この間のクッキーとても美味しかったです、紅茶と良く合いました!」
その時、壁の陰から2人組の男が俺たちの方に歩いてきた。
「おおおお、すげー可愛い女の子連れてんじゃん!彼氏?」
「可愛い顔してんのに、わがままな体とか彼氏羨ましいねーーw俺達にも少し分けてくれても良いよね?w」
数分後・・・・・
「ひぃぃーーすいません!申し訳ありません!!」
「お、おぃお前が言い出したからだろうが!・・・うぐっ許して下さい!」
二人は道端で土下座していた。
恵美を見ると、潤んだ目で俺の腕にしがみ付いて既に男たちを見ていない、俺は二人を開放すると恵美に腕を取られたまま家まで送って行く事になった。
<恵美の家の前>
【三宗】の表札がある大きな鉄製の門の前で恵美はようやく俺の腕から離れ俺の前に立つと、俺の頭を指さし
「あれ?雅君頭に何かついてますよ?ちょっとだけ屈んでもらえますか?」
恵美の手が届く高さに屈むと
【チュッ】
!?不意に恵美が頬にキスをしてきた!
「フフ、今日守ってくれたお礼です!それじゃ雅君お気をつけて!お休みなさ~い」
そう言うと小さく手を振り鉄の門を開けて家の中に入って行った。
俺は頭が真っ白になりその日の帰路は記憶がなかった。
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