第16話 田舎王子と五十嵐 凛

彩羽からは以前身の上話として聞いてたのである程度知ってる内容だった、俺に対してと言うよりも他の3人に対しての説明が強かった。

貿易会社を経営する一族というだけあってお母さんはいつも海外を飛び回っているというのは今日初めて聞いた。


最後に凛が自己紹介を始める


私は、五十嵐 凛 五十嵐家の一人娘だ五十嵐家は大手飲食店から冷凍食品やお菓子メーカー等を傘下にもつ日本屈指の食品グループ会社だ

物心つく頃から、家には各ジャンルのシェフがおりお父さんの舌を満足した料理が店頭に並び商品化される。

他人からすれば毎日外食してる感覚だとうけど私にはこれが日常だった。

中学に上がって間もないころ、興味本位で当直のシェフに無理をお願いして内緒で私が代わりに父に晩御飯を作って出したが、

父は怒り気味にシェフに料理について問いただしていた、怒られてるシェフは私の方をチラッと見ると『気にしないで』と微笑んでウインクしてくれた。

しかし次の日、そのシェフが交代させられた事を聞いて私はあの場で父に言い出せなかった自分の弱さと他人に自分の失敗を押し付けた卑怯な心を恥じて酷く後悔した。

それから私は厨房に入るのを辞め、こんな私に料理をする資格は無いと自らに戒めた。

私は常に正しくあろうと、学校では風紀委員として活動する事にした、他人に対し厳しくある為自らにもさらに厳しく課した。


そんな中、生徒会との合同会合で三宗 恵美という女性の私から見ても可愛いと思える女の子にであった。


恵美はとはすぐ打ち解けて性格も容姿も真逆の二人は急速に仲良くなった。

「凛ちゃんの目、とても綺麗・・・吸い込まれちゃいそう・・」

小さいころよくからかわれたオッドアイを恵美は綺麗と褒めてくれる、私はそれが嬉しくて恵美と一緒に居るうちに親友と呼べる関係になった。

私達二人は中学の頃からよく目立った、お互いの家の事もあるが恵美の容姿がずば抜けて可愛のと女性らしい変わら付きから良く男性に声をかけられていた。

しかし、恵美は男性からの独特な目線が苦手のようでいつも怯えた目を向けていた。

私はそんな恵美を守りたくて彼女に近づく男の子の壁になっていたが、いつからか私にも好意を持つ男子が増えてきた。

しかし男性に対し嫌悪を持つ恵美とながく一緒にいた為か私も男性に対し不潔なイメージが染みついており、とてもじゃないがお付き合いできるとは思えなかった。


高校に上がる少し前に、父から呼びだされた。

それは私には婚約者がおり未来の旦那だといわれた、これは生まれる前からの決め事だったという。

只でさえ男性に対し不潔なイメージを持つ私に許嫁とか旦那とか想像できないししたくも無かった。


しかし過去の私の卑怯な行為をした経緯から父に対し、苦手な意識と負い目を感じていた為、何も言えずその場で「はい・・判りました・・」とだけ伝えた。

父は、何か思うところがあったのかも知れないが何も言わず部屋を後にした。


私は翌日恵美にこのことを相談した・・・恵美は許嫁という事におどろいていたが、まだこれから好きな人が出来るかもしれないのにお父さんへの説得を諦めちゃダメ!と

守られるだけの恵美がこの日は心強く見えた。

私の悩みに対し、勇気をくれた恵美の為に少しぎこちなく笑って答えた。

その日の晩・・・私は母に相談を持ち掛けた。

母はフランス人で元五十嵐家のシェフだった人だ、父に見初められて猛アプローチの末結婚したという。

そんな母は日本語も達者だ。

母は「凛ちゃんは今好きな人が居るの?もし居ないのなら好きな人が出来た時にお父さんへ伝えればいいんじゃないかな?」

「なんて・・お父さんに伝えればいいの?」

「素直に正直にその時の気持ちを言えばいいのよ、そしてお父さんも凛ちゃんの言葉を待ってると思うわ」

そう母は優しく抱きしめてくれた。


そして高校に上がり最後の春休み、来月には新入生を迎え入れる為の入学式が控えている、ただ今回は恵美から学校創立以来初となる転入生を迎える。

しかもその転入生は頭脳明晰、スポーツ万能、しかも家柄も最高とまさにおとぎ話に出てくる王子様だった。

私は男性への嫌悪から無意識に女性だと思い込み、どうにか仲良く出来ないか?とその日を楽しみに準備を進めていた。


そんな春休みの会合帰りいつもの様に恵美と駅裏を歩いていると恵美が怯えたように私の横に隠れた。

もと恵美の居た方を見るといかにも節操のなさそうな3人がこちらに下品な視線を向けていた。

私は「だいじょうぶ」と恵美に微笑みと、男共を無視して通り過ぎようとしたが回り込まれてしまっちた。


男たちから恵美を守り、気後れしないように気丈にふるまっていたが人気の無い場所で男に囲まれてる状況に体は恐怖で震えていた。

それでも恵美だけはと必死に拒絶していたその時

私の目の前が大きな背中で遮られた。


だれだろ?顔をみようと背の高い肩口に顔を見ようとしたが、ガラの悪い金髪男に腕を引っ張られて悲鳴を上げたその時


背の高い男の子がその金髪男を軽く放りなげた。

そこからの彼はまるで特撮のヒーローの様に悪者から私を(私達)を守ってくれた。

今まで誰かを守る事しか無かった私が、誰かに守られてる状況に感動すら覚えた。


悪漢は私達に頭を下げて謝罪したが早く、彼と私の(達)の居るこの場から消えてほしかったので適当に頷いた。


近くにきた彼は、まさに王子様だった。


彼は私の腕を取り掴まれて赤くなった場所にタオルを巻いてくれた、これはもうテレビとか小説のなかで言うところの運命の出会いだと感じた。

私は彼の事をもっと知りたくて積極的に行動しようとしたが、恵美も同様に彼に対し積極的に動き出した。


彼は一堂 雅くん、私も恵美に便乗し名前で呼ぶことにした私らも名前で呼んでほしいと言ったが聞いてないようだった。


恵美と私は雅君にいきなりな質問だが、お付き合いしてる人はいますか?と聞いた。

しかし彼は「いませーーん」と叫んでその場を走り去った。

私と恵美は「雅くーん、近いうちにまた会いにいくねーーーー」と呼びかけたが多分聞こえてないだろう。


そして入学式の前日に父から「転入生がお前の婚約者だ」と伝えられた、今の今まで女性だと思い込み崇拝していた転入生が私の未来の旦那となる人だとは・・・

急に嫌悪感がこみあげてきた、しかし恵美と母の言葉を思い出し自分を奮い立たす。

目を閉じれば自分の事をその大きな背中で守ってくれた雅君の輝く笑顔が私に「がんばれ!凛」と語りかけてくれるようだった。

私は意を決し「お父さん、今日の夜お時間とって下さい」


お父さんは、黙って頷き部屋を後にした。その横顔は嬉しそうにも残念そうにも感じた・・・


でも、お父さん私は自分の弱さに打ち勝つよお父さんに真実を伝えて、そして・・・私の素直な想いを・・・いいよね?雅君・



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