第15話 田舎王子と四葉 彩羽 2

恵美は自己紹介で自分が東日本を拠点とする教育関係の施設を運営する一族の一人娘だと教えてくれた。

俺達の通う東皇高校も恵美の一族の運営する学校だ、それから後で分かった事だが、いのなか学校も恵美の一族と六橋家の運営する企業が共同寄贈した物だと知った。



恵美に続き、彩羽が自己紹介を始める


彩羽回想2


私、四葉 彩羽は、四葉家の一人娘だ四葉家は海外との貿易会社を幾つも抱える財閥だ、そんな私には高校になった時に聞かされた婚約者がいるらしい

顔も名前も知らない婚約者だが、私以外にも6人の婚約者を持つ簡潔に言うとクズ男だ、私を含め婚約者という名目で女性を良い様に扱う外道に違いない。

私は、そんな自分の将来に絶望していたそれまで頑張っていた習い事も勉強も続ける意味を見失った・・・どうせ婚約者に滅茶苦茶にされるならいっそ・・・・

そんな自暴自棄の中、街を歩いていると綺麗な女性に声をかけられた、どうもモデルへのスカウトのようだ。

悪質なスカウトだとしても構わないとなげやりな気持ちで、その女性についていくことにした。

しかし案内された場所は鳳ビルの中にある鳳プロダクションというちゃんとした会社だった。

社長でもある鳳 茜さんは、とてもフランクに話を聞いてくれて別にアルバイトでもいいからとモデルを勧めてくれた。

何度かのアルバイトを経験してる内に、茜さんの友達の竜崎さんとも知り合いになった、竜崎さんの撮った写真の私はいつもキラキラ輝いて見えて絶望した人生に意味をくれる気がした。


しかしある日たまたま私の映った雑誌をパパの秘書が見つけてパパに報告した為、私は呼び出された。

「彩羽、これはどういう事だ?俺はなにも聞いてないぞ?」

穏やかな口調だが明らかに怒っているのが判る、今は、ママが海外の取引先に出張でこの場に居ない

「聞いているのか?彩羽?お前には婚約者が居る!そのことに自覚はないのか!」

私は日頃の不満をパパにぶつけた。

「学生の間くらい好きな事をさせてよ!」

それからパパと話し合いは平行線が続き結局パパの出す条件を飲む事で事務所と正式に契約する事が出来た。

モデル活動は私の乾いた人生に少しの潤いをくれた、特に茜さん青葉さんは、お姉さんとして尊敬しており私の色んな悩みも聞いてくれた。

二人とも私と境遇が似ているのか、親身になってアドバイスをしてくれた。

仕事が上手く行くにつれ私は、学校でも話題になり待ち歩けば注目され握手やサインを求められた。


私は今の仕事の為、特に男性については徹底的に距離をおいた告白はすべてお断りし遊びのお誘いも男性がいるかもしてないので基本断る事にした。


そんなある日、竜崎さんのスタジオで次の撮影の衣装合わせが終わり外の自販機で休憩しようとした時に一人の男の子と出会ったその雰囲気やオーラから只者ではないと直感した。

彼は一堂 雅 今日から茜さんの事務所のモデルだという私の後輩だ、私は一目みて彼の虜になったが彼は私の事を知らないばかりか、異性として見てはいないようだった。

今まであたりまえの様に男の子から向けられて好意を彼から向けらて貰えないのは寂しくもあり悔しくもあった。


そんな彼の初の雑誌を青葉さんが鳳プロへ持ち込んだ、一緒にみる?と聞かれ二つ返事でお願いした。

彼が飾る表紙は青葉さんのカメラセンスと相まって、見た人の心をわしづかみにする魅力が溢れていた、私も言葉を失って魅入ったが当の彼は何も感じてないのかキョトンとしていた。



「はぁーあんたねぇー明日からどうなっても知らないから・・・」

(全く・・・これじゃ迂闊に私が近づけないじゃない・・今後どうにかして二人で仕事出来るように茜さんにお願いしてみようかしら・・・)


雑誌のお披露目も終わり、彼は自宅に帰るという事でなんとか接点を作れないかと彼を送って行く事を申し出た。

茜さんは思わせぶりな笑顔で譲ってくれたが今は気にしないでおこう


車中で彼にわたしの置かれた状況を話したもちろん彼への気持ちは伏せて・・・・

そんな私に彼は、無自覚に思い人への気持ちを諦めないように背中を押してきた。

彼の無頓着さに笑いそうになるが、とうの本人が言っているのだから・・・・責任は取ってよね!


わたしは、父に自分の気持ちを伝える為、入学式の夜に父と話をつける決意を決めた・・・たとえ四葉の名前を捨てても私は・・・・・


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