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 今日は田上が夕食を作る番だった。今日は、田上が腕を振るいラザニアを作った。ラザニアは、小さな耐熱性のガラスの容器に2つ。田上の分と、水川の分だ。

「いただきます」というと田上と水川はラザニアを食べた。ラザニアの味はまあまあだった。

 水川は、田上に聞こうか迷っていた。もし、彼が犯人だったら?そう思って、尻ポケットにスイスアーミーナイフを忍ばせていた。

「おいしい?」

「うん、美味しい」

「なんだか、元気がないみたいだけど、何かあったの?」

「ううん、別に」

「そう」と田上がいうとラザニアを美味しそうに食べた。

 水川は、勇気を振り絞り聞くことにした。

「ねえ、シンレイ研究会のことだけど」

「うん、なに?」

「実は、食器棚の下に霧島さんのイヤリングを見つけたの」

「そうなのか。きっと忘れていったのだろう」

「それと、今日ね。部屋で、箱を見つけたの。ねえ、何か知っているのでしょ?話してくれない?」

「見つけちゃったのか」と田上がいうと、真顔で水川の目を見た。

「ねえ、どういうこと?」

「彼らは死んだよ」

「え?どうして」

「僕にも最初は分からなかった。でも、これは全て箱のおかげなのだよ」

「ねえ、いったい何を言っているの?」

「全ては箱のおかげさ。僕の代わりに箱が全て導いてくれた。箱が僕に危害を加える者を排除してくれた。箱のお陰だよ。君と出会えたのも」

「ねえ、あなたがシンレイ研究会の人たちを殺したの?」

「そうだよ。箱に導かれてするしかなかった。僕だって最初は驚いたさ。でも、そうするしか他に方法はなかった。箱が能力を失うと、僕の幸福が全て失われる」

「ねえ、あなた正気?」

「正気だよ。ねえ、由香。今日はなんの日だと思う?」

「いったい、何を言っているの?」

「僕たちが、永遠に幸せになる日だよ」

「永遠ってどういうことよ」

 水川は急に、睡魔に襲われた。そして、体の自由が効かなくなった。

「ねえ、一体何をしたの?」と水川は呂律の回らない言葉でいった。

「ねえ、由香、これで僕たち永遠に幸せになれるよ」

 水川には、視界が回転したかの様に見えた。まるで、メリーゴーランドに乗っているかの様だ。そして、そのまま意識が飛んだ。


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