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 深夜2時。今日は涼しい夜だった。

 田上は、水川が寝ているのを確認してからベッドを出て、4・5畳の部屋へ行った。

 部屋、行くと、棚の奥に紙袋でぐるぐる巻きになったモノを取り出す。箱だった。

 田上は箱を観てうっとりとしていた。あの日以来、深夜に部屋に来ては箱を眺めるのが習慣化していた。

 なんて、美しい箱なのだ、と田上はニコニコしながら箱を見る。全てはこの箱のおかげだ。商売も繁盛したのも、水川と幸せに暮らしているのも。

 田上は、箱を抱きしめた。抱き締めると、とても幸せな気分になる。まるで、この世のすべとの悪い物が削ぎ落とされた夢の国にいるみたいだ。

 あの日以来、田上は箱と意思疎通ができるようになった。箱はいろいろと具体的なアドバイスをくれた。どの商品を仕入れれば高値がつくか、どう行動したら良いのか。箱のいうことを聞けば必ずうまく行く。箱は田上の救世主になった。

 もうこの箱がなければ自分は幸せになれないだろう。

 箱はそのうち、もっと幸せになれると田上に伝えている。それが、なんなのかはまだ分からない。

 きっと、今以上に幸せになることは確実だろう。

 すると、箱からメッセージが届いた。

 田上は、そのメッセージが素晴らしいことだと思った。

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