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田上が古物市場に行っている間に、フリマとオークションサイトの配送を手伝おうことになった。
今日は、ヴィヴィアン・ウエストウッドのネックレス、スウォッチの時計、プーマの限定色の紫色のスエードのスニーカーが売れた。客に、お礼のメッセージを送信して、4・5畳の部屋に向かった。段ボールの中に手を突っ込むと何かに引っ掻かれた感触があった。手のひらを見ると軽い引っ掻き傷があった。なんだろう?と霧島は思って、箱を更に探索すると、スイスアーミーナイフの栓抜きの部分が飛び出ていた。危ないな、と思い栓抜きの部分を折りたたんだ。
品物を取ってきて、ダイニングのダイニングテーブルで箱詰めの作業をしていた。
作業中に水川は、食器棚の下から光る物が見えた。気になり、食器棚へ向かいしゃがみ込んで手探りで、物を掴んだ。
それは三角形をした銀色のイヤリングだった。霧島がつけていたイヤリングだとすぐにわかった。
ポケットからiPhoneをとりだし、LINEで霧島に「イヤリングを忘れていますよ」とメッセージを送った。だが、既読がつかない。
やはり、おかしい。全てのメッセージに既読がつかないなんて。何かあったのではないかと勘繰った。しかし、きっと忙しいのだろうと思い返信を待つことにした。
田上が古物市場から帰ってきたのは19時半のことだった。段ボール4個を持ってきて4・5畳の部屋へ運んだ。
「今日もいい品が沢山入った。他にも最新式の食器洗浄機にドラム式洗濯機。持ってくるのが大変だったよ。ところで僕がいない間に品物は売れたかな?」
「ヴィヴィアン・ウエストウッドのネックレスと、スウォッチの時計と、プーマのスニーカーが売れたよ」
「そうか、それはよかった」
「そういえば、霧島さんがイヤリングを忘れたみたい」と水川がいうと、一瞬、田上の表情が引き攣ったように見えた。
「そうか。きっと忘れていったのだね」
「ねえ、そういば、全くシンレイ研究会の人と連絡が取れない。Lineでメッセージを送っても既読すらつかない。何かあったのかな?」
「きっと、映像の編集作業とかで忙しいだけだよ。そういえば、次の現場が見つかったって言っていたのを思い出したよ。きっと忙しいだけさ」
「そうなの。それにしても少し、失礼じゃない?撮るだけ撮って連絡ひとつ返してこないなんて」
「まあ、いいじゃないか。こうやって事件も解決したし」
「それは、そうだけど」
「そうだ、今日は僕がご飯を作るよ。パスタでいい?」
「うん。あまり辛くしないでね」
「うん、わかった」
田上が作るアラビアータはいつも辛かった。辛い物が大丈夫な水川でさえも辛くて胃もたれするほどだった。
それにしても、シンレイ研究会の人たちは何をしているのだろ。もしかして、箱の呪いにでもかかっているのではないかと少し心配になった。
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