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深夜3時。土砂降りの雨が降っていた。
田上は、軽トラックの荷台にシンレイ研究会の3人の死体を乗せてブルーシートで覆い、川崎市稲戸区へと向かった。稲戸区は川崎市だが、小さな山があり、鬱蒼とした雑木林があって、ひと気も少ない。田上が住んでいる場所からも遠いので選んだ。
運転中、警察に見つからないように、制限速度を守りながら、細心の注意を払って運転した。
運転していると小さな車一台分が通うれそうな、舗装されていない山道を見つけた。車で山道に入ってしばらくすると、開けた場所に出た。
田上は、降り頻る雨の中、傘もささずに荷台からスコップを取り出して、穴を掘った。穴を掘るたびに、水が入り込んで邪魔をしたが、雨のおかげで土が濡れて柔らかくなり掘りやすかった。思いっきり力を込めて素早く掘った。すると、深さ1メートル、直径3メートルの穴を掘り終えた。
荷台から、まずは一番身体が大きな竹内の死体を引きずり下ろした。とても重かった。そして、死体を穴に放り込んだ。次に、藤本の死体を引きずり下ろして穴に放り込んだ。竹内と違って小柄だった為、軽く感じた。そして、霧島の死体の番になった。彼女の死体を荷台から引きずり下ろした時だった。「助けて」という声が聞こえた。
田上は驚いて尻ポケットに入れていた小さな懐中電灯を使って回りを見渡す。
誰もいない。聞き間違えかと思って、霧島の死体を穴へと引きずった。その時「助けてお願い」とか細い声が聞こえた。ビックリしてその場に倒れた田上。音がした方向に懐中電灯を向けるとそこには、霧島が口から血を流しながら口を動かしていた。
霧島はまだ生きていた。
「お願い・・・助けて・・・誰にも・・・言わないから」とか細い声で霧島は雨音にかき消されそうな声量で苦しそうに言った。
田上はどうしていいか分からなくなった。これから、救急車を呼ぶか、それとも病院へ運ぶか。
だが、2人も殺してもう引き返せないと、田上は思った。
田上の感情が、消えた。
田上はスコップを手にして、仰向けになった霧島の顔に振りかざした。金属がぶつかるような音が響いた。
田上は、霧島を確認する。彼女の鼻が潰れて、骨が露出していたが、まだ息があった。そのまま、何度もスコップで彼女の顔を殴り続けた。
田上が急に我に帰ると、そこには、目玉が飛び出て顔の原型を留めないくらい崩れていて、肉片と砕けた骨の姿になっていた。
殺してもから何も思わなかった。まるで、感情がシャットダウンしたかの様に。恐らく田上はあまりの自分のしでかした事にショックを受けてでそうなったのだろう。それから、水分のたくさん含んだ泥をスコップで運び穴に流し込むかの様に埋めた。
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