37
朝の8時に田上は起きた。
タイマーでテレビがついていて、今日もワイドショーで不倫の話題を取り上げていた。
こんなに清々しい朝を迎えたのは、いつぶりだろうか?と思うくらいの気持ちのいい寝起きだった。これも箱を捨てたおかげだと思った。
隣で水川が寝ていた。起こそうかとも考えたがあまりに気持ちよさそうに寝ているので起こすのをやめた。
コーヒーが飲みたくなり、ダイニングルームへ向かった。ケトルのボタンを押すと、すぐにお湯が沸き、インスタントコーヒーを淹れて、リビングに戻り、コーヒーを一口飲んでからマルボロに火をつけて吸った。朝のコーヒーとタバコは格別だ。
窓から急に強い日差しは入ってきた。すると、視界の奥で赤、青、黄色の光が見えた。なんとなく、棚を見ると、そこには箱があった。あの、赤、青、黄色の五角形の箱だ。
田上は一瞬、何かの見間違えかと思った。そして、棚に向かった。そして箱に触れた。確かに昨日捨てた箱だ。なぜこんなところにあるのだろう?
また、箱が戻ってきている。偶然が2回続けばもう偶然ではない。
もしかしたら、夢かもしれないと思った田上は、水川の身体を揺さぶった。
「なに?どうしたの」と水川は眠そうに言った。
「なあ、由香、俺は昨日、箱を投げ捨てるところを見たよな?」
「うん、見たよ。なんで?」
「箱が家にある。また戻ってきている。見てくれ」
「え、また?」と水川が言うと、田上が持っている箱を見た。
「なんで、ここに?」
「わからないよ。いったいどうなっている」
「とりあえず、雅人、おちつきましょう」
「ああ」
「もしかすると、あの神主が箱を見つけて部屋に置いていったかもしれない」
「どうやって、中に入った?」
「それはわからないけど」
しばらく沈黙が続いた。テレビの音だけが部屋中に流れていた。
「次のニュースです。昨日、東京都東村山市にある光野国神社で大規模な火災が発生しました」と女子アナウンサーがいった。
田上と水川はゆっくりと画面を見た。そこに映し出されている映像は昨日、行った神社が夜中に燃えている映像だった。
続けてアナウンサーが言った。
「この火災により、神主である大岩長彦さんが亡くなりました」
すると、画面上に昨日の神主の顔写真が大きく表示された。
「警察は、事故、放火の両面から捜査するようです」
田上は驚いた表情をしながら「じゃあ、やっぱり、森田さんが言っていた通りのことが起きた。この箱は壊せない」
「ねえ、もっと違う方法を探しましょう。きっと、何かあるわよ」
「探すって、どうやって?」
「わからないけど、何か方法があるはずよ」
田上は怖くてたまらなかった。2回も箱を捨てたのに。また戻ってきている。
それに周りの人間が死んでいって、佐藤のように死んでいくのではないかと、思い始めた。そう思うと怖くて仕方なくなった。
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