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 田上と水川は憔悴していた。特に水川は。

 無理もない。水川は友人の飛び降り死体を見てしまったのだから。

 森田が飛び降りた後、警官に事情聴取された。狂っていると思われると考えたが正直に話した。すると、警官は事件性のない自殺と判断した。

 事情聴取の時に警官から聞いたのだが、森田は即死ではなく、飛び降り体が半分に潰れても5分間の間は生きていたらしい。とても残酷な死に方だ。森田の葬儀は身内で行うこととなった。親族の気持ちを考えると、田上は形容し難い気持ちになった。

 それもこれも、森田に箱を見せたせいだ、と田上は思って責任を感じた。

 箱は今、田上のカバンの中に入れてある。どうして良いのか分からないからだ。

 やはり、箱には呪いがかかっていると田上は確信した。

「ねえ、その箱どうするの?」と水川が言ってきた。

「色々考えたけど、お寺か神社に持って行くしかないだろう」

「でも、凛は、意味が無いって」

「でも、このままここに置いておくわけにはいかないだろ?」

「そうだな」と水川は力無い声で言った。

 水川は呪いに対して懐疑的だったが、今回の一件で呪いが存在すると、考えを変えたみたいだ。

「それで、どこのお寺に持って行くの?」

「これから調べるよ」

「わかった。私は寝るね。とても疲れた」

「うん、おやすみ」というと田上は水川の額にキスをした。

 田上は机に向かいMacBookを開くと、Chromeを起動して「呪物」、「供養」「お祓い」と検索してみた。すると、たくさんのページが表示された。そこから「お祓い神社10選」と書かれたサイトを見つけた。クリックしてページを見た。内容を読んで、一番効果がありそうな、東京都の東村山市にある「光野国神社」という神社を見つけた。サイトには電話番号が載っており、電話をかけようとしたが時間はもう1時をまわっていた。

 明日一番に電話で予約して箱と自分をお祓いしてもらおうと、田上は思った。

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