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椅子に座りMacBookで秋元が言っていた事件のニュース記事を読み漁っている田上を見て水川は心配していた。
一緒に調査をして、田上の身の回りに起きている事が偶然の一致だろうと、彼は思うはずだと思っていたが違った。
秋元に会い、佐藤の周りで起きたことを知り余計に、「何かある」と思わせてしまった。
水川も例外ではなかった。秋元の話を聞いてから、とても不気味に感じた。偶然の一致では型付けられないくらい、共通点が多い。本当に何かの呪いなのではないかと、思い始めていた。だが、そんなことは認めたくなかった。
どう考えてもおかしい、呪いなどあるわけがないと、水川は思った。
水川は、椅子に座っている田上の肩を叩いた。すると、田上が振り返った。
「ねえ、まだ事件について調べているの?」
「うん、気になって仕方ない」
「そう、でも、そろそろ休んだら?もう深夜よ」
「分かっている。でも、秋元が言っていたように佐藤の周りで人が死んでいっているだろ?今度は自分の番かもしれない。実際に僕の周りの人たちが死んでいるわけだし」
「ねえ、呪いだと思っているの?」
「狂っていると思われるかもしれないけど、少しそう思い始めている」
やはり、呪いだと田上は思っていたかと、水川は少し呆れた。
「ねえ、呪いなんてこの世に存在しないのよ」
「分かっているさ。でも、実際に人死が出ているわけだし」
「ども、分からない。仮に呪いだとして、なぜその呪いがあなたに伝染したの?」
「それが分からない・・・」
しばらく、沈黙が続いた。
水川はどうにか、田上のことを落ち着かせようと頭の中で言葉を探したが、出てこなかった。
「そうか、わかったぞ」と急に田上がいうと、椅子から立ち上がり棚に向かった。そして、赤、青、黄色のガラスが埋め込まれた五角形の箱を取り出した。
「この箱が原因だよ。きっと」
「確かに、その箱の中に気持ち悪い呪文みたいなものが彫られていたけど」
「きっと、呪いの呪文だ」
「なんでそれが呪いの箱なの?」
「この箱、中東風の箱だろ?佐藤のFacebookを見ていたら、ちょうど1月に仕事でトルコに行っていた、と投稿があった。きっと、その時にお土産か何かで手に入れたはずだ」
「じゃあ、捨ててみたら?」
「そうだ、それだ。捨てればきっと、この呪いから解放される」
田上と水川は箱をエコバックに入れて歩いて30分のところにある多摩川に向かった。
多摩川の橋の真ん中に着く。下を見ると暗いが、昨日の大雨の影響か水が東京湾へ勢いよくと流れていた。
田上はエコバックから箱を取り出すと、箱を両腕に持って思いっきり投げた。5メートル先くらい離れた場所の箱はちょうど川の中央へ箱が落ちて、大きな水飛沫が上がったのが薄暗い中わかった。
「これで、終わった」と田上が嬉しそうに言った。
「うん、これで解決ね」と水川はこれで田上の精神状態が良くなるだろうと思って安心した。
「よし、これで悩みの種がなくなった事だし、何か駅前で食べよう」
「そうだね。でも、もう深夜の2時だよ。どこも空いてないわ」
「牛丼屋で牛丼でも食べよう。由香は牛丼好き?」
「うん、好きだよ」
「じゃあ、一緒に牛丼を食べに行こう」
「うん、そうしよう」
田上と水川は手をつないで、駅前にあるすき家へ向かった。
水川はこれで、田上が変な考え方に蝕まれる原因がなくなった事が嬉しかった。
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