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水川は、テレビでワイドショーを見ていた。
ワイドショーは、田上の元上司、杉浦の話題で持ちきりだ。無理もないセンセーショナルな事件だから。
水川は途中で気持ち悪くなり、リモコンでテレビを切った。
そして、ベッドに横になった。
水川は田上のことが心配になった。立て続けに彼の知り合いが死んでいくからだ。こんなに短期間に周りの人間が死んでいくだろうか?何かあったのではないかと。
今日は、田上は古物市場へ行っている。水川は、古物市場に興味があったので、連れて行ってくれ、と頼んだが、「年会費を払っていない人は入れない」と言われたので断念する事になった。
一人で部屋にいると色々と考えてしまう。普段ならそんなことはないが、恋人の周りで奇妙なことが起きているとなると話は別だ。もしかしたら田上は何かに呪われているのではないかとすら思った。
気分を変えるために、水川はSwitchを起動してスプラトゥーンをプレイした。
田上の周りの人間が死んでいくなんて偶然だ。そんなホラーじみたこと水川は信じていなかった。
水川は幽霊に限らず、スピリチュアルや占いすら信じていなかった。幽霊など脳の勘違いだ。それに、占いなどは気の持ちようだ。例えば、占い師に良いことを言われて、偶然当たれば問題が起きない。外れれば占い師はこういうだろう「あなたの行いが悪かったせいです」と。いうに違いない。
なぜ、水川がここまでスピリチュアル的なモノを否定するのかというと、昔、母が新興宗教にハマっていたからだ。
それは、水川が10歳の時のことだった。母のお腹に子供を授かった。水川はとても喜んだ。妹か弟が欲しかったからだ。しかし、母は妊娠5ヶ月目で流産してしまった。
父も水川も母も悲しみにくれた。そんな時のこと、母方の知り合いの新興宗教にハマっている叔母が家に訪ねてきた。そして、悲しみに蝕まれていた母を新興宗教に誘った。それからというモノ、水川の母は宗教にのめり込んでいった。教祖様の教えに従い、訳のわからない高い水と祭壇を買った。これで、流産してしまった子供が成仏できると母は本気で信じていた。
水川も巻き込まれた、教団施設に連れて行かれて、修行と称して説法を聞かされたり、街中に母と一緒になって、パンフレットを配ったりした。
当然、父はその事に怒った。毎晩、水川の部屋にまで聞こえる大きさの声で喧嘩をしていたのを今でも覚えている。
そんな、母が目を覚ましたのは1年後だった。父の勧めでカウンセリングをしたのが、キッカケだった。徐々に母は正気を戻していき、半年後には完璧に洗脳から解けた。
なので、水川は、母を弱みにつけ込んで利用したスピリチュアルや宗教が人一倍大嫌いだった。
そういえば、水川の大学時代の友人に森田という子がいた。彼女は霊感体質だと言っていた。除霊もできるらしい。よく、「家に幽霊が出るからどうにかしてほしい」と同級生に言われると、彼女は除霊した。
普段なら自称霊能者と名乗る者にアレルギーを思っていたが、森田は別だった。なぜだか気が合った。いい子で、沢山遊んだが、能力者のフリ?あるは自分を能力者だと思い込んでいるところが水川は嫌いだった。
そういえば最近、森田と連絡を取り合っていない。彼女は今、保険会社で営業の仕事をしている。
大学を卒業した直後はよく一緒にご飯を食べに行った。他にも映画館や美術館を一緒に回ったものだ。
最近の彼女は何をしているのだろう?仕事が忙しいのだろうか?それとも恋人でもできたのだろうか?どちらにしろ、忙しいはずだ。仕事盛りの年頃だ。
水川は田上の部屋で同棲した時に、アルバイトを始めようと思っていた。田上に金銭的な負担をかけたくなかったからだ。だが、なかなか良いアルバイトが見つからなかった。というより働くのが怖かった。
水川は大学を卒業して、新卒で不動産会社の営業の仕事についた。激務だった。
朝から夜の遅くまで、働き詰めで、休日出勤は当たり前。それに加えて上司からのセクハラが横行していた。結局のところ1年持たなかった。退職してからというもの、派遣会社に登録して単発の仕事をして過ごした。これは、実家暮らしの強みだろう。一人暮らしだと、こうもいかない。両親に甘えているのが嫌だった自立していない証拠だからだ。
なので、同棲を決めた時に、仕送りがあってもアルバイトでもいいから安定した収入が入る仕事をしようと決めていた。恋人にまで甘えてられない。それに田上の職業は収入が不安定だ。今は商売が軌道に乗り始めたと彼はいうが、いつ商売が下火になるか分からない。その時の為にも仕事をする必要がある。
そんな事を考えながらスプラトゥーンをプレイしていると「パチン」という大きな音が棚の方から聞こえ部屋中に響いた。
水川はビックリした。もう少しでSwitchのコントローラーを落としそうになった。「またか」と思って音がした方向に向かう。
棚を確かめる。おそらく、温度変化のせいで棚が軋んだに音に違いない。視界に赤、青、黄色の箱が入った。
気味の悪い箱だ。どうせ形見にするのであればもっと違うものにすればいいのにと思った。
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