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杉浦岳が終電で最寄り駅の三鷹についたのが1時のことだった。家は駅から歩いて15分の住宅街にあるアパートへ向かっていた。
雨が降っていて、傘を忘れた杉浦はびしょびしょになりながら帰しかなかった。
今日も散々だったと心の中で愚痴った。
使えない部下を持つと苦労する。
今月も一人音信不通になった社員がいた。石野というプログラマーだ。彼は新卒で入社してきた。優秀だったが、杉浦にとっては生理的に無理なタイプだった。肥っていて、アニメオタク、Yシャツに大体はシワがついていた。
杉浦は石野に指導をした。会社の中では、杉浦がしている指導に問題がありパワハラだという人物が何人かいるらしいが、杉浦からすると社会人として当たり前の事だった。
最近の若い連中は弱すぎる。
自分が、野球部に在籍していた時は、叱咤激励など当たり前だった。それなのに最近の奴ときたら、それを指導とみなさずに、簡単にパワハラという言葉で片付けてしまう。悪い風潮だ。
途中、人気のない小さな小道に入った。アパートまでの近道だからだ。街灯は他の道に比べて少なく、暗かったが早く帰れることができた。
杉浦が道を歩いていると前方の道の真ん中に、膝までの丈のある、黄色いレインコートを着た男が立っていた。なぜ男かと分かったかというと、背が高かったからだ。フードを被っていて顔までは確認できなかった。
杉浦はびっくりした。なぜ、こんな遅くにしかもひとけの無い道の中央で、まるで誰かを待っているかのように立っているのか全く理解できなかったからだ。
おそらく危ない奴に違いないと思い、一瞬引き返そうかと思ったが、気にしすぎかもしれないと思いそのまま足を止めずに歩いた。流石に中央を歩くのは気が引けたので右端に寄って歩いた。
男との距離はどんどん近づいてくる。男はフードをかぶっているため、どこを見ているのか暗くて分からなかったが、ある一点を見つめているような気がした。もしかすると田上の事を見ているのかもしれない。
杉浦は立ち尽くす男の横を通った。男は視線を変えずにそのまま、道の真ん中を見つめているように見えた。
杉浦は安心した。男の横を通った時に何もされなかったからである。そのまま、振り返らずに早歩きで帰ろうと思った瞬間、左膝に何かがぶつかった。
杉浦が左膝を見ると、斧が刺さっていた。急に痛覚が働いた。叫びそうになった時に、男に殴られて、仰向けに転んだ。
男は、杉浦に馬乗りになり血まみれの口を無理やり開き、中にタオルを押し込んだ。
杉浦は叫びたくてもタオルが邪魔をして叫べなかった。
男は、杉浦の左膝に刺さった斧を引き抜くと血が吹き出し、血が雨と混ざり合い周囲のアスファルトを赤く染めた。
男はもう一度、左膝に向かって斧を振り下ろした。そして何度も。斧で膝を叩かれるたびに杉浦は、今まで感じたことのない激痛が身体中に走った。
急に男が斧を振りかざすのをやめた。すると、男は左手で杉浦の半分切断された、まだ神経や腱がぎりぎり繋がった状態で左足を杉浦に見せた。
杉浦は気を失った。
男は杉浦を殴った。すると、杉浦は再び目を覚まし意識が戻った。信じられない激痛が杉浦を襲った。
次に男は、左腕を掴み、斧で左の指を、一本一本斧で切断していった。そして、切断しすると、杉浦にその一部を、顔に近づけて見せた。指の切断面はとても綺麗で、真っ赤な肉と白い骨が見えた。その度に感電したかのような痛みが身体中に流れた。
杉浦は抵抗を試みたが、男の力が凄まじく、しかも、痛みで動けなかった。何度も痛みで気が遠くなっていくが、男はそれを許さなかった。気を失いかけると、杉浦を殴り、また身体を斧で切断していった。
両手の指が全て切断された時に、逆に杉浦はハイになっていった。人は痛みを通り過ぎると逆に、脳内物質でハイになると聞いた事があった。きっと、それだろう。
それから、男は杉浦の手首を斧で切断した。手首はなかなか丈夫らしく、何度も斧を振りかざしていた。
そして、とうとう、杉浦は気を失った。
男は杉浦の顔を殴ったが反応はなかった。だが、男は杉浦の体を切断する事をやめなかった。
杉浦の身体は血まみれで手の指を全て、両手首、両足の膝を切断し終えると、その場を去った。
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