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 今日の古物市場は前回より多く品物を仕入れることができた。

 田上は、新品のiPad、ハイエンドのSurface、ミーレの洗濯機、三菱の冷蔵庫、ナイキのエアジョーダン1の限定モデル、コンビニの一番くじの鬼滅の刃のフィギュア、バーバリーのコート、Diorの食器セット、SUUNTOの腕時計、PRSのエレキギター、など高値で売れる商品を沢山仕入れた。軽トラックの荷台が一杯になったので、2回に分けて運んだ。どれも、高値で売れる商品だ。


 この前、水川が田上の部屋で泊まった時から、出張査定の数も増えた。

 家具、家電、衣類、一眼レフカメラとレンズ一式、年代物のプレミア価格がつくレコード、など倉庫が今回の古物市で、貸し倉庫も、家の収納部屋も一杯になった。これで当分は在庫が無いという問題で頭を悩まされることがないだろう。

 二回目の荷物を取りに来た時、武田がやってきた。

そう言えば、今日は武田と一度も会っていなかった。

「田上さん。見ていましたよ。今日は絶好調ですね」

「ああ、偶然だよ。運がよかった」

「それにしても今日はすごかった。僕なんて全然ダメでしたよ」

「まあ、そのうち、運がいい日もあるさ」

「そう言えば聞きました?菅が今日来てないでしょ?」

 確かに、今日は菅の姿を一度も見ていない。珍しい。会いたくもないのに必ず田上を見つけ出しては、嫌味を言ってくるが今回は全くそれがなかった。

「菅はですが、今日休みらしいですよ」

「珍しい。毎回来ているのに」

「知り合いから聞いた話なのですが。菅は最近、体調と商売の調子が悪くて困っているらしいですよ」

「そうなのか」

「はい」

 菅の商売がうまく行っていない。そんなの初耳だ。彼はやり手だ。きっと、何かの間違いだろうと、田上は思った。

「どうせ、噂話だろう。風邪を引くらい誰にでもあることだ」

「確かに。そういえば田上さん幸せそうですね。何かあったのですか?」

「実は恋人ができた」

「え?まさかマッチングアプリの娘ですか?」

「そうだよ」

「やったじゃないですか」

「まあね、運がいいだけだよ」

「田上さんはいいな。マッチングアプリに成功して、しかも、今日は良い物ばかり仕入れて。今が幸せの絶頂期かもしれないですよ」

「そんなこと言うなよ。そしたら、あとは下り坂ってことじゃないか」

「確かに、悪気はないですよ。」

「分かっているよ。じゃあ、俺は倉庫に商品を運ぶから、この辺で」

「はい、気をつけて」

 車に乗り込む田上。そんなに他人から幸せそうに見えるのか?と田上はサイドミラーで自分の顔を確認した。確かに、前に比べて血色がいい感じがした。

 それにしても、菅が体調を崩すとは信じられなかった。確か、前回にあった時は彼らしくなく、不調だったのを思い出した。あながち嘘ではないのかもしれない。

 菅はおそらく50代だ。いつ体調を崩してもおかしくない年頃だ。

 田上は自分も気をつけようと思った。まだ35歳だが、不摂生な生活を送っているからだ。タバコをやめて、体でも鍛えよかと一瞬思った。


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