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今日は朝の6時から30度を超えていた。
熱帯夜だというのに熟睡できた。
田上は、やっと、佐藤が残したゲームソフトの動作確認を終えた。最終的には170近くの動作確認をして疲れと達成感が両方押し寄せてきた。そのうち、壊れていたものは10個と少なかった。
一眼レフカメラでゲームソフトを撮影し、Excelのセルにタイトルと値段をいれてから、オークションサイトとフリマサイトに商品をアップした。気づくと夕方の15時になっていた。
佐藤と木本が残した遺品は順調に売れている。アパレル類は全て売り上げ、CDとレコードも箱が足りないくらい売れていた。
それから、この前の古物市場で買った冷蔵庫、ルンバ、フレイムの年代物のランプはページにアップして直ぐに売れた。他にも、倉庫に眠っていた在庫、冷蔵庫2つに、家具たちが次々と売れていった。在庫がそろそろ無くなりそうで忙しかった。誰か人を雇いたいくらいだと、田上は思った。
こんなに売れたのは、この商売をしてから初めてだったのでビックリした。
商品を仕入れなければ。だが古物市場が開くまで、あと1週間ある。その間にどうしようか考えた。
出張査定サービスの依頼が来ればいいのだが、最近は大手に持っていかれるので、あまり当てにしていない。
次に手っ取り早いのはオークションサイトで掘り出し物を見つける事だった。だが、実物どんな状態なのかわからない物を買って商品として出品するのはリスクがあった。
次の選択肢は、リサイクルショップへ行って安く買う事だった。だが、最近のリサイクルショップは、ネットで商品の価値を簡単に調べることができるので、安く手に入れても利益が安かった。
次に思いついたのは、一番くじだ。コンビニの一番くじを当て、商品をゲットすることだった。だが、A賞が手に入る確率は1パーセントもない。そんなギャンブルめいたことは、田上はしなかった。
とりあえず、田上は古物市場が開くまでの1週間。残った在庫のゲームソフトとレコードを売ることに専念することにした。
下手に焦って動くとろくな事にならない。そんなことを何度も経験してきたからだ。
これは、休みだと思って1週間細々とやっていこう。
考えてみたら、この仕事をしてからというもの、休みらしい休みをとったことがなかった。毎日何かしらの商品が売れては、宅配業者に商品を届けて、帳簿に鑑定科目を付けるのを繰り返してきた。
それに、商品は全くないわけでもないしそんなに焦らなくても良いと、田上は思った。
すると、iPhoneが鳴った。着信音からLINEだと分かった。画面を見ると水川からだ。まさか水川からLINEが来るとは思ってもみなかった。食事後、3日間メッセージが無かったので脈がないと思っていたからだ。LINEを開きメッセージを確認する。
『元気にしていますか?』
『夏バテ気味ですが、元気にしています。そちらはどうですか?』
『私は元気です』
『そうでしたか。それはよかった』
『すみません。ここ三日の間、連絡が取れなくて』
『いいえ、気にしていませんよ。マイペースで連絡してください』
『ところで、明日、マーベルの新作のブレイドが公開するのですが、一緒に行きませんか?』『いいですね。是非行きましょう。それと、映画が終わったら食事にでも行きましょう。何が良いですか?』
『そうですね。韓国料理がいいです』
『わかりました。韓国料理屋を探しておきます』
『ありがとうございます。明日を楽しみにしています』とそこでLINEは終わった。
田上は、嬉しさのあまりにガッツポーズをした。自分でも恥ずかしくなるくらいに浮かれている。だが、ハイの状態はそう長くは続かなかった。もしかして水川は、自分のことを美味しい食事に連れていってくれるオジサンとしか思っていないのかもしれないと。
可能性は十分にある。だが、水川に利用されようが、関係なかった。
不安より水川に一目でも会えるのが楽しみだった。
水川と付き合えるなんて思ってもいない。ただ、会えるのが楽しみだった。
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