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 田上が部屋で床に座ってテレビを見ていた。

 すると、部屋に佐藤と木本が部屋に入ってきた。二人とも無地のTシャツにブルージーンズの出立ちだった。

「暑いなこの部屋は」と佐藤が言った。

「クーラーつけないの?」と木本。

「来たのか。クーラーは電気代節約の為に使っていない」

「そうなの。ケチだね」と笑いながら木本が言った。

「ケチだな」と佐藤も笑っていた。

「そんなことないさ」

「田上は昔からケチだったからね」と木本。

「そうそう、ギターの弦は錆びてるいのに切れるまで交換しなかったし、食べに行ってもいつも安いものしか食べなかった」と佐藤。

「うるさいな」と田上。

 田上はなぜ二人が部屋にいるのか分からなかった。特に、来る約束もしていないのになぜだろう?いつもは、事前に来ると連絡があるのだが。

「それで、今日はなんの用だい?」

「まあ、用事がてら寄っただけさ」と佐藤が言った。

「そうか、それで、その用事というのはなんだい?」

「これをプレゼントしたかった」佐藤は手ぶらにも関わらず、どこから出したか分からない箱を持っていた。

 箱は、赤、青、黄色のガラスがモザイク状に装飾された五角形の箱だった。

「この箱のことか」と田上は残念そうな表情をしながら言った。

 佐藤は笑いながら言った。「なに、残念そうな顔をしているのだよ。この箱は、とても素晴らしい物だよ」

「どこが、素晴らしいんだい?箱の中身を確認したが、何も入っていないし、気持ち悪い呪文が彫られている、きみの悪い箱じゃないか」

 木本は微笑みながら「まあ、確かにそれは否定しないわ。でも、これは素晴らしい箱よ」

「そのうち、この箱の素晴らしさが田上にもわかるさ」と佐藤。「さあ、箱を受け取って」というと佐藤は箱を田上に渡した。

「これで箱は正式にあなたのものよ」と木本が嬉しそうに言った。


 田上は目を覚ました。朝の6時だった。

 今日も熟睡した。佐藤の事件以来、なぜだか不眠症気味だったのが治った。田上は、とても不思議に思った。普通は友人が死ねば逆になりそうなものだが。

 まだ、朝なのでひんやりとしていて少し肌寒い。

 夢かと田上は思った。夢の中ででも二人に会えたことが嬉しかった。夢の中で彼らは幸せそうだったからだ。いつも通りの会話でとても懐かしく感じたと共に悲しさも感じた。もう、幸せそうな2人を見られないのかと思うと、胸が押しつぶされそうな気分になった。

 それにしても、あの夢の内容はなんだと考え始めた。箱の事を言っていた。視界を本棚に移す。箱は本棚に飾ってあった。

 田上は立ち上がり箱の元へ来て箱を手に取った。もう一度、箱を調べてみた。箱を開けると、明らかに見たことのない文字なのか、分からない呪文のような物が彫られていた。

 最初は気持ち悪いと思っていたが、なんとなく箱になんとも言えない魅力を感じているのがわかった。なぜだろう?最初はあんなに、この箱に気味悪い物を感じていたのに。

 試しに、iPhoneを取り出して翻訳アプリを起動して、カメラで箱の文字を撮影した。しばらくすると画面の中央に「該当する言語がありません」と表示された。

 いったい、何が彫り込まれているのだろう?翻訳アプリでも登録していないマイナーな限度か?それとも文字ではなく、何かの暗号だろうか?いや象形文字のようだから古い言語かもしれない。とiPadを起動して、象形文字と検索してみると、似た言語の写真が出てきたが、どれも違う気がした。箱を研究者に見せるのはどうか?と一瞬思ったが、そんな面倒な事をしている時間もない。それに、そこまでして調べたいとも思わなかった。

 箱を棚に戻すと、ダイニングルームに向かいインスタントコーヒーを淹れて、机に向かった。椅子に座るとMacBookを開いた。Chromeを立ち上げてオークションサイトとフリマサイトを同時に開いた。

 売上は好調だった。

 ゲームソフトは、まだ、動作確認していない物が三分の一あるが、売れ行きが好調だ。平均千円で売っているが半分は売れた。8万円の利益を出している。郵送に使う段ボールが足りないくらい売れていく。

 それと、フェンダーのジャズベースは10万、プレジションベースは9万円、リッケンバッカーの4003は28万円、Nordの61鍵盤のシンセサイザーは20万円で売れた。

 楽器だけでも67万円の利益が出た。

 他にも、かさばってしかたなかった、テレビ、冷蔵庫、電子レンジなどの家電が売れた。他には家具に、服にエアジョーダンがあっという間に売れてしまった。この5日間で3ヶ月分の利益が出た。

 あまりの忙しさに帳簿をつけるのを忘れていた。MacBookでExcelを起動して売上金額をセルに打ち込む。今日の作業はこれが、メインになりそうだ。


 お昼を過ぎたあたりに帳簿をつけ終わった。解放感からビールが飲みたくなったが、まだ昼だ。それに仕事が残っている。帳簿を書いていたに間に10個の商品が売れた。全てゲームソフトだ。うれしい悲鳴とはこのことだ。

 ゲームソフトをプチプチの緩衝材に包み込みレターパックに入れた。10個入れ終えると、郵便局へ自転車で向かった。自転車の前カゴにはレターパックが山積みになっていた。

 郵便局へ着くと商品を送って、家に戻った。時間は18時を過ぎていた。それから、お客にお礼のメッセージを送った。今日もクタクタだ。

 今日は、久しぶりにピザでも注文しようか、田上は思った。無性に食べたくなった。

 ピザを食べるのは久しぶりだ。2年前に、佐藤と木本と一緒にピザを食べた以来だった。

きっと、二人が夢に出てきたからピザが無性に食べたくなったのだろう。

 すると、突然iPhoneから聞きなれない通知音が鳴った。

 田上は、なんだ?と思いながらiPhoneの画面を確認する。通知はTinderからだった。

 もしかして、マッチングしたのかもしれない。いや、何かのソフトアップデートの通知かもしれない。

 恐る恐る田上はTinderを開いた。すると、メッセージが入っていた。

 田上は緊張してメッセージを開いた。それは、「ミズ」というアカウントからだった。メッセージを開いた。

「初めまして、ミズという者です。たがみさんのプロフィールを読んで興味がわきました。是非、お話がしたくてメッセージを送りました」と書かれていた。何かの間違えだろうと田上は思った。どうせ、何かの業者だと。

「ミズ」のアカウントを覗いた。顔写真が掲載されていた。ボブカットで色白で目は大きく、鼻筋はすっとしていて、唇は薄く、顔の輪郭はどちらかというと丸顔だった。プロフィール欄の職業は家事手伝い、趣味は映画鑑賞と音楽鑑賞と読書。

 田上は美人だと思った。気がつくとメッセージの返信を書いていた。

『ミズさん。初めまして。たがみです。今回はメッセージを送っていただき、ありがとうございます。私も、ミズさんに興味があります。是非お話しがしたいです』と送った。

 送って気づいたが、このメッセージは少々気持ち悪い物ではないかと思った。

 すると3分もしないうちにメッセージが返ってきた。

『どうもたがみさん。返信して頂きとても嬉しいです』

『こちらこそ、連絡いただいて嬉しいです」

 それから二人で映画や音楽の話やメッセージを送り合った。

 ミズは、好きな映画は「アトミック・ブロンド」、「パンズラビリンス」、「フランシス・ハ」にマーベルとDCのアメコミ映画も好きらしい。音楽は、K-POPにハマっているらしい。

 K-POPのことはあまり分からなかったが、映画の趣味の話は弾んだ。

 気がつくと23時になっていた。

『すみません。こんな遅くまでメッセージを送って』

『いいえ、大丈夫ですよ。メッセージをくれてありがとうございました。楽しかったです』

『それはどうも、こちらも楽しかったです』

『それでは、おやすみなさい」

『はい、おやすみなさい』そして、メッセージは終わった。

 田上は嬉しくて仕方なかった。まさか、マッチングできて、しかも何時間もメッセージのやり取りができた事に満足していた。

 しかし、同時にまだ業者の可能性はあると疑っていた。だが、業者がこんなに長くまでメッセージのやり取りをするだろうか、と疑問にも思った。

 色々と、考えているうちに時計は0時を回っていた。急にお腹が空いた。ピザ屋のホームページを見ると23時までだった。どうしようか考えたが、駅前にある家系ラーメンの店に行く事にした。

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