8
翌日。
朝の7時から倉庫に行き作業を始めた。
倉庫には段ボールが20個近くと、家具、家電を置いた。倉庫は一瞬にして満杯になった。商品からは仄かに異臭が漂っている。
商品からは腐敗臭はしなかった。二人が自殺した部屋とは別の部屋だったからだろう。
一応、商品に、バイオモルグスプレーを吹きかけて消臭した。このスプレーが一番効くと知り合いから教えてもらった。
暑い倉庫の中で、iPadを使い商品の価値を調べてから、Excelを使いリストに商品を登録してCanonの一眼レフカメラで写真を撮った。それから、フリマサイトにアップするのを繰り返した。
根気のいる作業だった。汗は終始滝のように流れ出ていて、タオルで体を拭き水分補給に、アクエリアスの2リットルのペットボトルを飲みながら作業をしていた。
家でもできるのが、家に商品が入りきらないからだ。商品は思っていた以上に高値で取引ができそうだ。
特に木本はブランド品が多かった。エルメスのバッグに、スーツ、ディオールのブーツにグッチのスカーフ。
田上が知っていた木本は常に、夏はロックTシャツ、冬はユニクロのPコートで、靴はドクターマーチンか赤いコンバースのオールスターのハイカットだった。バッグもどこのメーカーか分からないハンドバッグを持ち歩いていた。
15年の間に趣味嗜好が変わるものだなと思った。
それに引き換えに佐藤は変わらない。アオキのスーツ。唯一のブランド品といえばパタゴニアの黒いビジネスコート。ブルックスブラザーズのスーツだ。ほかにはノーブランドの革靴にビジネス鞄。スニーカーはエアジョーダンが10足もあった。変わらない彼に安心感を覚えた。
佐藤のゲームの数は150個以上にも及ぶ。一つ一つ動作確認するのは大変そうだったので、家に持ち帰り、動作確認をすることにした。
いくつか段ボール箱を確認すると、中に光る物が見えた。
田上は、その光る物を取り出した。それは、赤、青、黄色のガラスがモザイク状に埋め込まれた中東の雰囲気を醸し出している箱だった。箱は随分重たく、側面には黒く錆びた鍵穴があった。試しに箱を開けて見ようとしたが開かなかった。
田上は何が入っているのか気になったが、面倒臭いので、箱を段ボール箱に戻した。
ゲーム機とゲームソフトが入った段ボール箱を軽トラックの荷台に乗せて家に着いた。
途中マクドナルドに寄ってビッグマックセットと、マックナゲットを追加で注文した。今日ぐらいレトルトカレーじゃなくて好きなものを食べようと、田上は思った。
田上が家に着いたのは23時の事だった。クタクタで何もする気が起きなかった。
とりあえずビックマックを食べた。すると、急に眠気に襲われた。とても強い眠気で抗うことが出来なかった。そして、そのまま田上は眠りに落ちた。
目の前に佐藤と木本が手を繋いで立っていた。驚く田上。
「やあ、田上久しぶり。最後にあったのは半年以上前だったかな」と佐藤。
「田上、なにそんなに驚いた顔をしているの?」と木本。
どう答えていいか分からない田上。すると何も考えずに言った「なぜ心中なんて、したんだい?」
「それは、そのうち君にも理解できるはずだよ」と佐藤。
「わかるって、どういう意味だい?遺書も残さなかったじゃないか?」
「まあ、落ち着いて。田上」と木本。二人とも微笑んでいた。
それから、周りの景色が暗くなった。そして二人は消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます