ささくれさかむけどっち?

神無月ナナメ

KAC20244(二発目)

「ゆびさきと恋々だっけ。少女マンガ原作のアニメ深夜に放送やってんじゃん?」

 右さし指にウェーブした長い茶髪をクルクル巻きつけながらリサちゃんが問う。


「うんうんと一応いうべきかなぁ。一週間遅れのTverだけどハマって観てる。

原作マンガを未読だけど繊細なキャラクターとパステル調の空気感でいいよねぇ」

 関西圏は毎日放送で土曜深夜2時38分だからリアルタイム視聴が微妙すぎる。



 ノートPCでググってみると2019年9月から講談社デザートの連載開始だ。

原作は森下suuさんで集英社マーガレットデビューの女性二人ユニットらしい。


 めちゃくちゃオシャレっぽい大学で邂逅するから都内八王子周辺と考えていた。

それがアニメ版モデルは京都市で文化財扱いされる同志社大学今出川キャンパス。


 南部寄りの大阪居住者として京都を訪れる機会はあまりなく雰囲気が大嫌いだ。

どことなく神戸と違う高慢ちきプライドがヤバいレベルで関西っぽさにも欠ける。



 実際のところ原作者は宮崎出身で舞台になる大学を特定していないのがいいね。


 ものっそい珍しい読み方をする波岐逸臣くんは二十二歳のイケメン大学二年生。

国際文化学部に通いながら世界中を旅するバックパッカーで趣味は異文化交流だ。


 主人公の糸瀬雪ちゃんは同大学の新入生で先天性の完全な聴覚障がい者になる。

ちょっとでも当事者に傍で関わる機会があれば違和感を抱くのも含めてマンガだ。


 口唇読み取りや全身を使う手話と指先によるスマホやメモ帳のコミュニケート。

パステル調の空気と若干のじれったさにすばらしい味わいがあるから文句はない。



 いきなり引っかかるイケメンの右中指に見えるファッション・タトゥー太陽神。

もちろん令和に古臭い価値観を提示する気はないがスーパー銭湯入れないよねぇ。


「昔うちのおばぁちゃん指先にささくれできたら親不孝の証拠なんて文句だった。

ゆびさきと恋々関係ないけど『おかーちゃん手伝えないっしょ』と説教されたよ」


 なんとなく聴いた記憶あるようなないような気がする俗説……さかむけだよな。

もう一度ググってみると「ささくれ」と「さかむけ」ほとんど同じ意味の言葉だ。



「ふぅうん冬場の水仕事。手のひら指先から荒れちゃうとこからきた説教かなぁ。

ドラッグストア辺りの新商品で『ささくれの治療薬サカムケア』あるみたいだね」


「なんかそれテレビのコマーシャルで観たことあるある。めちゃくちゃあやしい」


 もちろんケアする意味に介護福祉的表現もあれば直訳すると手入れ管理が近い。

実際に調べてみるとササクレは東日本。サカムケが西日本。勢力圏で東西別々だ。


 サカムケアの発売元は大阪らしいからそれっぽさのネーミングセンスを感じる。

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