Bパート
捜査が進展した。合コンに参加した学生から南野翔一とともに店を出て行った女性が判明したのだ。
「確か
学生はそう話した。藤堂
呼び鈴を押すと品のある中年の女性が出てきた。その女性は
「すいません。警察です。
私は警察バッジを示した。すると順子の顔がこわばった。
「何のお話でしょうか?」
「いえ、それは直接、御本人から。署の方までご足労いただきます」
するとそこに中年の男性が出てきた。リビングの方まで話が聞こえていたようだ。
「娘になにか御用ですかな。ここでも話ができると思いますが、違いますか? それとも任意でなく強制ですかな」
いかめしい顔と横柄な態度・・・彼は弁護士をしている平造のようだった。
「いえ、それは・・・重要事件のことですので・・・」
「それなら私もお話を伺いましょう。
そう言われて順子は
「
「一昨日の夜はどこに?」
だが彼女は答えない。代わって平造が答えた。
「一昨日の夜はコンパだったようです。無理に友達に連れていかれたようだ。11時ごろに帰ってきた。門限を破ったので怒ったのですよ」
私はさらに彼女に向かって尋ねた。
「午後10時ごろはどこにおられましたか?」
やはり彼女は黙ったままだ。
「2次会で『ゴン』というスナックにいたようです。酔ってふらふらになってそこからタクシーでまっすぐに家に帰ってきたと言っていました」
平造がそう答えた。
「ホテルラウンジというところには行きましたか?」
「娘はそんなところには行っていない!」
私の質問にすぐに平造は語気を強めて言った。娘がそんなふしだらなところに行くはずがないと・・・。だが私はそれに負けずに言った。
「娘さんに聞いているのです。ホテルラウンジには行きましたか?」
「どうなんだ?
平造が
「行っていません・・・」
「本当にそうなんだな!」
平造が念を押すように言うと彼女はゆっくりうなずいた。それを見て私は彼女が何か隠していると直感した。
「娘はそう言っている。もういいでしょう」
平造はそう言うが、ここで引き下がれない。
「まだいくつか伺うことがあります。しかしここでは人目に付きます。それに重要な事件のことですので証言は記録を取る必要があります。やはり署でお話を伺わせてください」
私はそう言った。
「しかしそれでは・・・」
「私たちは裏を取って捜査しています。もし証言が違えば後々、大変なことになります」
そこまで言うとさすがに平造は断れないようだった。
「それなら従います。ただし条件があります」
「それは何ですか?」
「その事情聴取に付き添わせてください。私は弁護士です。それは許されるはずですが・・・」
私はしばらく考えてから返事をした。
「わかりました。いっしょに署の方へ」
◇
取調室では
「一昨日の夜の行動を聞かせてください・・・」
倉田班長と私は質問するが平造にブロックされている。
(はっきりした証拠を積み上げないと進展しないのかもしれない・・・)
私はそう思った。しばらくして倉田班長は私に目で合図した。それで一旦、私は倉田班長とともに取調室を出た。
「日比野。お二人にはお帰りいただく」
「えっ! しかし何も引き出せていませんが・・・」
「それはいい。ただし5分後だ。5分経ったらお帰りいただくんだ」
倉田班長はそう言った。何か企んでいるようだが私にはわからない。それでも私は一人で取調室に戻った。そこであと5分、同じような質問を繰り返した。それには平造は嫌気がさしてきたようだ。
「さっきから同じことを何度も聞いているんだ! それならすでに答えている。もういいだろう!」
平造は声を荒げた。そこで5分経過していた。
「今日はお手数をおかけしました。今日のところはお帰り下さい」
私がそう言うと、平造は
「気をつけてお帰り下さい。その前に
廊下には倉田班長と手錠をした英子が立っていた。顔を上げた
「さあ、どうなんですか?」
倉田班長がさらに尋ねた。だが
「このお嬢さんが知るもんですか! 私のようなさかもげだらけの手をしている女なんて・・・」
すると急に
「警察は一体どういうところだ! 犯罪者と対面させるとは! 厳重に抗議してやる!」
平造は怒りながら
私は英子が言った「さかもげ」という言葉が気になった。そんな言葉を聞いたことがない。方言なのかもしれないが・・・。この言葉に
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