戦争に行った人は戦争反対を掲げるウクライナ。お金と時間が社会の層を決める日本。どちらも頂点は戦争を望む。

──『自分が弱者だと気付く』──

☆☆☆


 2024年3月24日(日)。20時44分。


 Covid-19真っ最中だが、喉も今は痛くない。熱もない。明日から普通に仕事なのだろうか。


 分からない。ただ、自由を制限されて分かったのだが、自由を制限された状態というのは、自分が弱者であるということを認識するには充分すぎる出来事だと気付かされた。


 誰とも話してはいけない。今日の熊本県知事選挙の結果が出たが、それを話に行こうとしたら、降りてくるなと言われた。当たり前だ。自分が新型コロナウイルスに感染していることをほんの少し忘れていた。


 自分のしたいことができない。誰とも話せない。幻聴だけが追い掛けてくる。「良いってもう」とか聞こえてくるが、何がいいのだろうか。


 一口お茶を飲んだら、喉に激痛が走った。まだ新型コロナウイルス真っ最中であることは間違いが無さそうだ。


 孤独だったので、AIマンガの描き方みたいな本を読んでみた。まず50万円くらいのPCを用意しないと生成AIが出してくるスピードに追い付けないらしい。下準備の段階で私には無理な買い物だった。


 もしかしてだけど、10万円以上するiPadとかも東京の高賃金で働いている人からしたらおもちゃくらいの値段なのだろうか。絶望する。絶望する。


 何をどこで間違えて、という話では無くて、運命的にこういう統合失調症の人生になったのだから、絶望するしかない。そのAI漫画家は、公式LINE登録などを勧めてきていた。結局は自分が儲かることしか考えていないらしかった。50万円のPCが買えるくらいならば金には困っていないだろうに。その人が嫌いになった。


 人間ってそういう人ばっかりなのだろうか。多分そうなのだと思う。統合失調症と言えば、それだけで相手にされず、就職だって制限を受ける。誰もしたがらない肉体労働かつ低賃金の職場に用いられ、退職する。「あいつは統合失調症だから使えなかった」という意見で一致して、次の犠牲者となる障害者を探し始める。


 気が付いた。だから福祉で障害年金などがあるのだ。障害があるというだけで無条件に金が口座に振り込まれる国のシステムに、誰も声を上げないのは不思議だと思っていたが、実は誰の感情の中にも「障害者は気持ちが悪い」「障害者は何を考えているのか分からない」「できれば関わりたくない」という気持ちが存在しているのだと。障害者を迫害、とまではいかないが、仲間に入れたくはないという気持ちが、常識がこの世にははびこっているから、「可哀想な障害者には月7万円くらいの補助金が出てもいいよね」という観点で障害年金が支給されているのだと思い始めた。


 最低賃金くらいで働いている人は、そもそもの障害年金という制度すら知らない。賃金が低い人は情報にも疎い。何の資格も持っていないし、世の中を知る機会すらない。資格の勉強をする暇があったら働けという考えの下、今年の最低賃金はいくら上がるだろうかとそればかりを意識して、この世のことを知ることなく、ほぼ無休で働き続ける。


 弁護士など、この世の仕組みを知り尽くしている人からしたら、そういう低所得者の方々を「可哀想だなあ」と思いながら、50万円のPCを買ったりするのだろうか。一度の報酬で3ケタ行くような世界だ。大抵のガジェットはおもちゃ程度にしか思っていないだろう。


 こうやって差が開いていくのは当たり前で、自分の話に戻すと、統合失調症という病気にさせられてしまった。この世は別に高収入だけでランクが決まるわけではない。高収入かつ自分の自由度がどれだけあるかで現代社会はランクが決まる。公務員は言ってしまえば負け組だ。しかしながら没落することもないので、相場やトレンドが変わろうと変わらない世界が公務員だ。公務員と広く言ってしまってもあらゆる職種があるが、そのうち日本も国が一つでなくなるのかもしれない。何かが起こり分断されたり、対外からの攻撃にさらされるかもしれない。地震が起きただけで、その地域の公務員、役場の正職員などは毎日午前様となって帰ってくる。戦争が起きたらどうなるのだろうか。紛争でも起きたら。そもそもの防衛はどこまで。


 よく分からない方向に行きそうだったが、将来なんて誰にも分らない。ただ今のことだけは言える。今はお金と時間の奪い合いの時代だ。時間の代わりにお金をもらったり、お金を払って時間を短縮したり。戦争が無いので国の為に死ぬことを美化する恐ろしい空気感も、無いとは言えないのかもしれない。戦争が無いので逆に命を軽く考えて、組織の為に死ぬことが出来ることが人間として、国民として立派なことだと感動映画もののように考えている人もいるのかもしれない。ただ、今、戦場に行った経験を持ったウクライナ兵士やその奥様方は、戦争に長期間滞在させる国の方針にデモを行っている。当事者になれば分かるが、大統領が戦地に行かずに戦争の継続を望むのは容易いが、当事者になったら誰も死にたくはないと、自分の命はここで終わりたくないと、生き物としての当然の希求に気が付くだろうと思う。ロシアも同じだろう。言論弾圧やナワリヌイ氏の投獄・不審死などが無ければとっくに声を上げる国民も大勢いるだろう。


 さて、平和な日本に生まれた僕らは、時間と金の戦争に巻き込まれている。死ぬことはないが、最悪餓死する。栄養が足りずに、力を発揮できずに格差はどんどんと膨らんでいく。“Winners love winning a lot.”という名言が示すとおりに、一度勝ちを覚えた人間は最果てを知らずに更に勝ちを求めていく。そんな世界絶望しか無いよと思いながらも、気が付いたのならば、誰かが救いの手を差し伸べるのかもしれない。私の場合は統合失調症だった。神が起こしたとしか考えられない統合失調症は、「もう人間の世界で勝ち上がることをやめなさい。貴方は気が付きました。“Winners love winning a lot.” これには終わりがないと。戦争でも起これば終わるのかもしれませんが、この世は地獄でありながら、人間に関わらなければ天国のようだと。気が付いた貴方にプレゼントをあげます。『人間社会において成功者と言われるレールから外れる運命』です。有名な先人などがいないので、誰の真似も出来ませんが、貴方のその絶望を以ってすれば上手く使えるでしょう。貴方ほどこの世に怯えている人はいませんから。無駄に使わないと知っているので、偶数月を待ちなさい。


 貴方が選んだわけではないけれど、そういう人生を送る資格を与えられた人間はなかなか居ません。楽しまなくてもいいけれど。絶望ばかりしていてもいいけれど。どうにかして延命できる方法を捜し求めながら適当に人生を前に進めて行ってください。


 まだ貴方は死にません。殺しません。許しません」


 

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