第5話 また
安慈は全てを隠さず真聖に伝えた。真聖の表情はピクリとも動かない。
「これが事件の真実だ。」
真聖はなんと言うだろうか。田口に復讐すると言うだろうか。どんな言葉であっても、安慈に止める気はなかった。
「茉莉の家に行ってもいいか?」
「ああ、もちろんだ」
喫茶店を出てタクシーを拾い、真聖たちは茉莉の家に向かった。今は両親が住んでいる。30分ほど走ったところで目的地に着いた。
脈打つ音が聞こえる。手に汗が滲む。夕焼けが真聖を優しく照らしている。
インターホンを鳴らすとすぐに茉莉の母が出てきた。
「あら、どちら様?」
「すみません。茉莉さんの友達の坂本です。」
「稲田です。」
「あらあら、懐かしいお友達だわ。上がっていって」
「ありがとうございます。」
玄関を抜け、廊下を進んでいくと居間に通された。
ソファーとテレビ、観葉植物など至ってシンプルな部屋だ。角には仏壇があった。
「お参りをしていただけると茉莉も喜ぶと思います。久しぶりの来客なので。」
交代でお参りをし、ソファーに腰掛けるとお茶が出された。思い出話で会話が盛り上がったところで、真聖は切り出した。
「少しお手洗いを借りてもいいですか。」
「もちろんよ。廊下を進んで右側にあるわ」
真聖は礼をし、洗面所に向かった。実は昔一度だけ来たことがある。そのときは一緒に勉強をした気がする。
「そこは違うの。神奈川の政令指定都市は横浜と川崎の両方。」
「いや、そんなわけないって。横浜だけだって。」
「じゃあ正解見るよ。えーと、えっ!?」
「やっぱ横浜だけっしょ👍」
「いや、あと相模原がある...」
2人は顔を見合わせ、腹がよじれるくらい大笑いした。正直勉強の内容はどうでもよかった。ただ2人の時間が楽しかった。それだけだ。
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