第4話 本当の友達

『あれ俺がやったんだよねw』


気がついたとき、安慈は秋藤の腹をナイフで刺していた。ただ殺したかった。生きてはいけない存在だと思った。そして、事件の全貌を聞き出す前に秋藤は死んだ。

その後、全てを知るまで3日かからなかった。安慈は秋藤のパソコンを調べ、田口とのメールを見つけだした。そこには、こう書かれていた。


『田口へ

俺がもうすぐ癌で死ぬことは知ってると思うけど、どうしても伝えたいことがある。真聖と茉莉のことだ。あの事件以来真聖は生きる意味を見失い、学校にも来ない日が続いた。今は落ち着いたようだが、まだ心残りがあると思うんだ。もちろんお前の気持ちも分かる。だけどもう止めないか?

あのとき、俺は金に釣られて殺人を犯した。でも、今は後悔している。このままのうのうと生きていていいのか、誰かにばれてるんじゃないか、と時々手が震えることがある。

薬を飲ませて茉莉が倒れたとき、死ぬ間際に言ったことがある。


「真聖に..言って..ほしい...。ごめん..ね」

その場で膝から崩れ落ちた。涙が堪えられない。言葉が出てこない。目の前の命が消えていく音がする。

最期に会うのが俺でいいのか。いやだめだ。

俺の体はなぜか茉莉を鏡の前に移動させ、そのまま家から出た。俺は茉莉の言葉を伝えられなかった。


俺はもうすぐ死ぬからいいんだ。だけど、お前に少しでも気持ちがあるのなら、今からでも遅くないから警察に行ってほしい。 秋藤 』



どうすればいいのだろう。何が正解なのか。このままなら真聖は茉莉が自殺したと信じ続ける。それが彼にとっての幸せなのかもしれない。

この真実はあまりに残酷すぎる。真聖は気持ちを伝えられなかったことを一生後悔して生きることになるだろう。それなら言わない方がいいのか。


 —――だめだ


安慈は真聖にメールを送った。6年ぶりか。



「久しぶりだな。急なんだけど、今日時間あるか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る