第2話 中3の記憶


(※こっからまじで悪意ないです)

「安慈は彼女いていいよな」

「えへへ。真聖は好きな人とかいないのか?」

「いるけど、どうせ叶わないしさ」

「わかんないだろ。この世紀の筋肉ボディーに惹かれる女子も少なくないしさ」

「そうかもしれないけど、、、あの茉莉まつりだぜ? 狙ってる男はたくさんいるだろ...田口とか」

「でも茉莉まだ彼氏いないらしいよ。頑張ればいけるって。応援する!」

「そうか...まあやるだけやってみるか」


それから、茉莉の気を引くための作戦【MAMP(Matsuri and Manato project)】が始まった。元々友達の少ない真聖は男子の冷たい視線など気にせず、大胆に古文で手紙を書くなどして、途中一寸引かれながらもMAMPは順調に進んでいった。時には2人で遊びに行くこともあり、真聖は明らかに前より明るくなっていた。


MAMPも終盤、安慈が影で見守る中、直接想いを伝える時が来た。場所は◯◯駅。

待ち合わせの時間まであと10分。鼓動が早くなる。自分に自信が無くなりそうになる。でも、この想いだけは伝えたい。

時間になった。しかし、彼女は来ない。

「そりゃ遅れることもあるよな」なんて思いながら待ち続ける。今は帰宅ラッシュ。人通りが増えてきた。必死に彼女を探すが、なかなか見つからない。

15分が過ぎた。場所と時間をもう一度確認する。確かに今ここである。既読もついている。「おかしいな」と感じながらもただ待ち続ける。

30分が過ぎた。不安と焦りが交錯する。安慈のとこへ行こうかと少し考えたが、もうちょっとだけ待つことにした。

1時間が過ぎた。もう何回電車の発射ベルを聞いたか。これ以上は待ってもしょうがないと考え、安慈の元へ行った。今日は諦めよう、という結論に達した。

帰宅中もずっと彼女のことが頭から離れなかった。

そしてその夜、安慈から電話が掛かってきた。



「もしもし、どうしたんだ」


「...どうしても気になって、茉莉の家に行ったんだ。」


「えっ...」


「明かりが点いていればそのまま帰ろうと思っていた。でも、現実はそうじゃなかった。落ち着いて聞いてくれ。


茉莉は‥亡くなってた」



今すぐ茉莉の家に行きたかった。本当かどうか確かめたかった。だが、もし父親が現場に居たらまずい。今できるのは、安慈に状況を聞くことだけだ。


「今わかっていることは...?」   

出ない声を絞り出す。


「茉莉は自殺したらしい。警察の人が言っていた。」


自殺? あの茉莉が?

到底信じられることではなかった。

静寂が真聖たちを包み込む。


「鏡の前で薬を飲んだらしい。わけわかんねえよ、、、」


もう今日はやめよう、そう言って電話を切った。

ベッドに横になる。頭の中にぽっかりと穴が空いている。

今日は寝れねえな、そう呟くと真聖は静かに目を瞑った。


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