第16話 不器用な口づけ
「喰わせてもらうわ、君のこと。」
覗く牙。
鋭い指先。
ぐぁ、という効果音でもつきそうなほど大口を開けたその人は、私の肩に噛みついた。
骨が軋んで血が滲む。
痛みに顔を顰めると、その人はほんの少しだけ力を緩めて私を見つめる。
「あら…私のこと、喰べなくていいの?」
貴方はとびきり優しい人だから。
今だってその顔はひどく苦しげに歪んでいて、痛みを感じているのは私ではなく彼なのではないかと、錯覚するほどの表情をしていて。
そのまま苦しみに苦しんで、私のことを忘れられなくなればいいのにと思ってしまった。
伸ばした手のひらを彼が掴む。
骨が折れる、鈍い音を聞きながら、私は静かに目を閉じた。
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