第5話 kiss me, please.
午後六時。
茜の日差しが、私を照らす。
傾けた傘から、滴が落ちる。
キラキラと輝くその水滴を、私はただ眺めていた。
息が漏れる。髪が揺れる。
歩幅を合わせて隣を歩く彼に、何気ない仕草で唇を寄せる。
彼が振り向く。ネクタイを掴む。
引き寄せた視線のその先で、瞳を見開く彼にそっと耳打ちをして。
「ねぇ、私に」
…キスしてみてよ。
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