第5話 第9部深淵編最終回を読み返して泣くの巻。

カクヨムに上げるのもだいぶ進んだが、まだ誰も第9部には辿り着いていない。


第9部深淵編はワイバーンメンバーの景行と圭子、四郎とリリー、クラと凛の合同結婚式で幕を閉じる。


死霊屋敷で結婚式の2次会。

ガレージ地下にディスコルームを作り皆が楽しく盛り上がっていた。


なぜか、遥か昔に結婚していた時を思い出した。

明日は戦地に出発という日、あのころ近所にあったディスコに妻と二人で出かけてチークダンスを踊った時の会話をありありと思い出した。


妻は私にこう言った。


「殺されないでね…絶対に生きて帰って来て…あなたがどんな姿になっても…きっと生きて…きっと帰って来て。」


アールアトワンスが流れる中で妻はそう言い、私の胸に顔を埋めた。

肩が震えていた。


私は妻を抱く手に力を込めて妻の耳に口を寄せて囁いた。


「絶対に…絶対に生きて帰るよ…絶対に。」


なんという事だ。


私はとうの昔に忘れていた光景を小説で再現していた。

涙が流れた。



以下引用。


俺はプールサイドでまだ少しへばり気味のユキの所に行った。


「ユキ、調子はどう?

 踊れそう?」

「彩斗、もう少し時間を頂戴よ。

 ああ、夜風が気持ち良いわ~。」

「そうか…もう少しでチークタイムが始まると喜朗おじが教えてくれたんだけど…。」


ユキは急に立ち上がりビシ!と背筋を伸ばして俺の手を握りガレージのディスコに歩き始めた。

さっきは口と鼻を塞がれて危うく窒息死しそうになったけどやはり俺にとってユキはこの世で一番かわいい女性だ。


ディスコでは喜朗おじが新しいLP板を幾つか用意して、そしてミラーボールの回転が弱まり照明が少し暗くなり、ホイットニー・ヒューストンの「アイハブナッシング」が流れて来た。


俺はユキの手を取ってガレージ中央に進み出て、他のカップル達とまったりとチークを踊った。


いつもは殺意溢れる銃弾が飛び交うこの場所で愛する女性と手を取り合ってチークを踊る事になるとは思わなかった。

ユキは俺の胸に頭をもたれてゆっくりと踊った。


そして、「オールアトワンス」などのバラードが流れて俺達はチークを踊り、互いに身を委ねた。


「ねえ…彩斗…。」


ユキがかすれた小声で言った。


「何?ユキ?」

「…こんな時にこんな事…言いたくないけど…こんな幸せな時にこんな事は…でも…約束して…。」

「…。」

「誰も殺されないって…彩斗も当然だけど…仲間の誰も殺されないって…私に…お願い…私…怖いの…。」


そう言ってユキは俺の胸に顔を埋めて嗚咽を漏らした。

ホイットニー・ヒューストンが突然だったと歌っていた。


ユキは『死なない』と言わずに『殺されない』と言った。

俺達のやっている事の厳しさを知らなければ言わない言葉だった。


俺はユキを凄く不憫に思って泣きたくなった。

この一見平和極まりない日本で、恋人がいつ得体の知れない悪鬼に、化け物に殺されるかも知れないなんて…。

俺はユキの顎を上げ、ユキの瞳を覗き込んだ。


「ユキ、誰も殺されない。

 誰も死なないし誰も欠けない。

 約束するよ。絶対に。

 俺達は絶対に誰にも殺されない。」


その言葉に実は空しい響きがある事を俺は知り尽くしていた。

だが、この時に俺はユキに約束するしか無かった。

そして俺が言った言葉が本当に実現すると俺自身が、俺自身が放った言葉にしがみ付いた。

ユキは何とか笑顔を浮かべてくれた。


そして俺達は体力の限界に来て倒れて眠りだす多数の犠牲者を出しながらも何とかオールナイトで遊び通した。


ふ…リア充だろ?



第9部 深淵編 終了


引用終り。


無意識に忘れていた記憶を書いていたのかな…。

もしもまかり間違ってドラマか映画に出来るなら最高に泣けるシーンにしたい!

と妄想するのでした。



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