第2話 素敵な音楽無しには書けないの巻。
「吸血鬼ですが、何か?」という長編小説を書いています。
何人かの方から小説の書き方のご教授をお願いされて、未だに自分に文才があるのか疑問に思いながら書き続けている私にとってはとても嬉しいと思うと同時に冷や汗をかきます。
そこで、参考になるかどうか判りませんが、私なりの今のお話の書き方を紹介しようと思います。
判る方は判るかも知れませんが、「吸血鬼ですが、何か?」は非常に大きなラストはおぼろげながら有りますが、毎日殆どアドリブで書いています。
私の中では映画の様に目の前に景色が浮かんでいるんです。
私は前日に見た夢や、書き進めている時にふいに浮かぶ景色を書いているに過ぎません。
時として書いている私自身が全然思いもしなかった展開に非常に驚き、しばらく呆然としてしまう事が、本当に書いている私自身が非常に驚いてしまう展開になる事が有ります。
例えば第4部人間編で、まだ敵か味方かも判らない明石景行が凶悪な悪鬼の姿になって四郎の左腕を日本刀で斬り落とした時、明石を収容するために駆け付けた明石の妻である圭子さんが乗る乗用車に明石夫婦の娘の司や忍が悪鬼となった明石に手を差し伸べて「パパ!早く乗って!」と叫んだ景色が目の前にありありと浮かびました。
当初の私の構想では明石夫婦は景行が悪鬼である事は圭子さん以外、娘の司と忍には秘密にしていてその秘密を守る為に苦労していたと言うエピソードを考えていました、が、私が見た景色の中では司も忍もすでに明石が悪鬼である事を知っていてそれでも明石を受け入れている事に驚きを禁じ得ませんでした。
かなり迷った末に私は私が見た景色をそのまま書く事にして今まで考えていた構想を捨てました。
という感じで私は何者かに操られるようにお話を進めています。
月と言う地球に最も近いのに全く謎だらけの天体がお話の鍵になると言う所も全く突然に浮かんだ物です。
…どうもオカルトめいていて参考になりにくいかな?(汗)
ただ、私は随分音楽に助けられています。
このお話には随所に素敵な音楽が顔を出します。
私の脳内の映画の様な景色にはほとんど必ず素敵なBGMが流れています。
これは過去に、実際に紛争地帯で避難する難民を抱えて撤退中のある部隊が敵勢力に囲まれてかなり危機的状況に陥った時、難民の女の子がある歌を歌い始め、その地域の子守歌のような歌を歌い始め、やがて難民全員が歌い始め、そして、それを聞いた敵勢力からの銃撃もやがて止み、嘘のように静まり返った廃墟の中を無事に逃げおおせたのを間近で見た実体験に基づくのかも知れません。
素敵な歌は敵の銃撃さえ止める事が出来る事実を見てしまいました。
そして、人々が手を繋ぎ、争いをやめ、共に前に進むには素敵な音楽が、人間が歌う歌が必要だと言う事を痛感しました。
第4部では、お互いを知り彩斗達と協力する事になった明石一家の圭子さんが歌について熱く語ります。
その言葉自体が私が発信したいメッセージの一つなのでしょう。
以下第4部人間編抜粋
以下引用。
「圭子さん、カラオケとか好きなんですか?」
真鈴が尋ねると圭子さんが笑顔になった。
「うちは全員、司も忍もカラオケもアカペラも伴奏つきでも歌うよ~!
一番へたっぴは景行だけどね。
でも、歌は魂の叫びだからね~!
人類から歌を取り上げると、たぶん未来に進む事は出来なくなるわよ。
人類が手を取り合って前に進むには素敵な歌が必要なのよ。
それくらい、歌は大事な物だと、私は思うのよね~!」
どこかで聞いたような事を言っているなと思ったら、明石が言った事は圭子さんの持論の受けおりだと気が付いて面白く思った。
中略
「圭子さん、何を入れたんですか?」
真鈴が尋ねた。
「うん、真鈴ちゃん、百万本の薔薇って知ってる?」
「確か…加藤登紀子さんかな?」
「そうそう、実はあの歌はね元々はラトビアの歌で歌詞も全然違っていたのよ。
原題は『マリーニャの贈り物』って言う歌なんだけどね…あの歌は色々な局面で歌われた曲なのよ、チェルノブイリ原発事故の時の復興の時や、ベルリンの壁崩壊の時、ソ連邦解体の時、ポーランドの民主化運動の時や、バルト3国独立の時皆が集まって人間の鎖を作った時とかに歌われた曲なのよ。
そして今、ウクライナの人達が侵略への抵抗の歌としてロシアの心ある人達が反戦の歌として歌っているわ。
それを知って景行のお気に入りの曲になったってわけよ。
まぁ、気軽に聞いてね。」
そう言うと圭子さんは小粋にウィンクした。
中略
その後数曲の後、圭子さんが入れた百万本の薔薇が流れた。
これはもう…加藤登紀子以上かも知れないほどに俺も真鈴も感動した。
店内は感動で静まり返り、やがて物凄い拍手が沸き起こった。
昼間に明石が言った、歌は人間の魂を救う時もあると言う言葉も信じられそうな気分だった。
引用終り。
このように私は素敵な歌に助けられることが多々あります。
そして、人間の絶望的な醜さを見せつけられた彩斗が第4部のラストで圭子さんと司と忍が歌う歌で魂が救われ、新しく戦いへの決意を示します。
この時初めて、私は、ああ、そう言うわけで司も忍も明石の正体を知っていたんだと思いました…自分で書いているのね(汗)
第4部 人間編ラスト
以下引用。
「さて、彩斗君、真鈴ちゃん、はなちゃん、四郎さん、今日はご招待ありがとう。
お礼の印に私達で細やかな歌をプレゼントします。
準備するから少し待ってね。」
明石と喜朗と加奈ちゃんが車の方へ行き、司ちゃんと忍ちゃんは昼間に作った花の冠を頭に被り、圭子さんの両脇に立った。
圭子さんが車の方を見ている。
やがて車の方から小太鼓がリズムを刻みながら近づいてきた。
加奈ちゃんだ。
小太鼓を叩く加奈ちゃんは後ろにバグパイプを脇に抱えた明石と喜朗を従えて大きな焚火の方にやって来た。
明石と喜朗もバグパイプの演奏を始めた。
「なんだろこれ聞いたことあるよ。」
俺は小声で真鈴に言うと真鈴が小さく頷いた。
「彩斗、ラグビーの歌だよ。
ワ-ルドインユニオン。」
司ちゃんと忍ちゃんが清らかな、それでいて力強く感じる高音で歌い始めた。
そして2人を支える様に圭子さんの少し低い声が歌に加わった。
加奈ちゃんの小太鼓と明石と喜朗のバグパイプ、圭子さん、司ちゃん、忍ちゃんの歌声が心に染み入るハーモニーとなった。
There's a dream,I feel so rare, so real
その夢はとても素晴らしく、とても大切だと私は感じた。
All the world in union The world as one
世界のすべてが団結して、一つの世界となる。
Gathering together One mind, one heart
一つの精神、一つの心の元に集い。
Every creed, every color Once joined, never apart
あらゆる宗教を信じる人もあらゆる肌の色の人も、ひとたび繋がり合えば二度と離れない。
Searching for the best in me,I will find what I can be
私の中の最高な物を探し、私がなれる可能性の中で最高のものになってみせる。
If I win, lose or draw there's a winner in us all
たとえ勝とうが負けようが、引き分けてさえ、私たちすべてが勝者なのだ。
It's the world in union the world as one
それは団結した世界、一つとなった世界なのだ。
As we climb to reach our destiny a new age has begun
その目標へとたどり着くとき、新しい時代が始まる。
We face high mountains, must cross rough seas
私たちは高い山々に挑み、荒れる海を渡らなければならない。
We must take our place in history and live with dignity
私たちは歴史の中に存在して、尊厳をもって生きて行くのだ。
Just to be the best I can sets the goal for every man
なりうる最高のものになるために、すべての人々が目標を定める。
If I win lose or draw It’s a victory for all.
私が勝とうが、負けようが、引き分けてさえ、それは、すべての人のための勝利なのだ。
It's the world in union the world as one
それは団結した世界、一つとなった世界なのだ。
As we climb to reach our destiny A new age has begun
目標へとたどり着くとき、私達の新しい時代が始まる。
It’s the world in union the world as one
私達が団結して一つとなった世界。
As we climb to reach our destiny A new age has begun
目標へとたどり着くとき、私達の新しい時代が始まる。
It’s the world the world in union
私達が団結して一つとなった世界。
A new age has begun
新しい時代が始まる。
俺は泣いた。
真鈴も、四郎も泣いた。
明石は歌は人間の魂を救う時があると言った。
その通りだと思った。
圭子さんは人間から歌を取り上げたら前に進めなくなると言った。
まさにその通りだった。
ここ数日、人間が引き起こす言葉に出来ないほどの物を見せつけられ俺の心は実は傷だらけになって崩壊寸前だったのかも知れない。
今日、司ちゃんや忍ちゃんたちの歌声で救われた感じがした。
彼女たちの歌声は俺の魂に付いた傷を埋め、汚れをそっと落としてくれた。
俺は心の底から救われた気持ちになった。
悪鬼の明石だろうが、死霊が依り代にしているはなちゃんであろうが何の偏見も無く屈託なく受け入れて共に楽しんでくれる彼女たち。
その彼女たちが笑顔で歌を歌い続けられる世界にしなければならない。
彼女たちの歌声を守らなくてはいけないと俺は心の底から思った。
なにか、大いなる意思のようなものが本当に存在するのなら、傷ついた俺の魂を癒す為に、目の前で彼女たちが歌う姿を見せてくれたのかも知れない。
そんな事を思いながら俺は、おそらく真鈴も、四郎も、はなちゃんも彼女たちの歌声に聞き惚れていた。
人類から歌を取り上げてはならない。
この子達が心からの笑顔で歌える世界を守らなければいけない。
いつか世界中の人達が、悪鬼や死霊達でさえ共に手をつなぎ肩を組んで心からの笑顔で歌える世界が来るように。
俺達は戦う。
引用終り。
という訳であまり参考にならないかも知れませんが、お話が浮かばずに困った時は、自分の心を平らにして何か気に入った曲か、今まで聞いた事も無い曲を聞くのも一つの手かも知れません。
音楽と言う。言葉に出来ない何かしらのメッセージがあなたの手助けをして新しい発想に導いてくれるかも知れませんね!
最後に毎日執筆を始める時に私が聞く曲です。
この曲はお話全体のテーマに繋がるかも知れません。
もしもまかり間違って連続テレビドラマなんかになったら、最終回のエンドロールには必ずこの曲を掛けて欲しいと思います。
『オンリーインスリープ』
妄想ついでに、ドラマ化か映画化するなら、恐山のいた子に頼んで今は亡きモリコーネを呼び出して音楽を依頼したいです!
あ、言っちゃった(汗)
また機会があれば長編小説を書く際のヒント、いや小説を書く事が出来るらしき物について書きます。
私はこの方法で、出来はともかくお話を書く事が出来るようになりました。
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