第43話:前世覚醒★

 日本人として生きていた俺は、いつも心のどこかで「帰りたい」と思っていた。

 それは外出中でも在宅中でも、心の中にあった気持ち。

 一体どこへ帰りたいというのか? 今まで分からなかった。

 でも、現世から前世へ、人格が交代した時に、俺は気付いた。

 いつも心の中にあった帰りたい気持ちは、前世の俺のホームシックだってことに。


 現世の心は、前世の心に身体の支配権を譲渡した。

 日本での名前と姿を忘れた【モチ】は、意識の深層へ沈んでいる。

 この時から俺は、前世の人格エカルラートとして生きることになった。


 気を失っていた俺が目を開けた時、ソナが膝枕してくれていた。

 20年ぶりに再会した妻の膝枕は、幸せ20倍増しだ。

 ナーゴに帰ってこれて、本当に良かった。


「ソナ、俺はどのくらい気絶していた?」

「そろそろ日が沈む頃だから、30分くらいかしら」


 身体を起こしてみると、ブランケットがかけてある。

 持ってきてくれたのはリヤンだろうか?

 リヤンは向かいのソファで本を読んでいた。


「最後に見た時はまだチビだったのに、大きくなったなリヤン」

「20年経ってるからね。6歳児の父さんに言われると違和感が凄いけど」


 俺が声をかけると、リヤンは本に向けていた視線をこちらに向ける。

 苦笑してツッコまれる通り、6歳児が成人男子に言う台詞じゃないな。


「じゃあ、これならどうだ? 【肉体変化メタモルフォーゼ】」


 俺は変身系の魔法を使って、肉体を変化させた。

 現世の俺は不完全な爆裂魔法と、魔法協会のカードから得た炎系魔法、魔導書から得た雷系魔法と氷系魔法の4系統しか使えなかったけれど。

 前世の俺は、もっと多くの魔法が使える。

 変身魔法は無属性の魔法だ。

 この魔法の便利なところは、着ている服も自在に変えられること。

 服を変化させるのを忘れて、変身で体格が大きく変わったせいで、破れて素っ裸なんていう失態をやらかす奴もたまにいるけどな。


「うん、それでようやく同い年に見えるくらいだね」

「これ以上、見た目年齢は上がらないからな」


 6歳児から20歳くらいに身体が変化した俺は、リヤンを立ち上がらせて並んでみた。

 よし、俺の方がちょっとだけ背が高くなったぞ。


「そうやって並んでると、親子っていうより双子に見えるわ」


 ソナには笑われてしまった。

 双子というワードに、俺はハッとなる。


 そうだ、ベノワにどこかへ連れ去られたイオは?!

 もしかして、アズの記憶を手に入れたんじゃないか?!

 あいつにも、肉体変化メタモルフォーゼをかけてやろうかな。


 父さんと母さんにも報せてやらないと。

 きっと喜んでくれるだろう。


「ちょっと実家に行ってくる」

「うん、お義父さんとお義母さんにも、エカが完全復活した姿を見せてあげて」


 俺は妻子が住む自宅から、両親が住む実家へ向かった。



※キャライメージ画像「エカ」

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818023213495123250

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