第41話:前世の妻子
「エカ、お前にはあと2人、大切な家族がいるんだよ。逢いに行くかい?」
「逢いたいです」
こちらの世界に留まる事を決めた俺に、前世の両親が聞いた。
即答した俺は、その2人がどんな人か、もう分かっている。
多分、夢に出てきた女性と赤ん坊だと思う。
「俺も逢ってみたいな」
『御主人様は、こっちですよ』
「えっ?!」
イオが興味津々でついて来ようと家の外へ出た直後、ベノワが右手の中からシュルンと出てくる。
幸せの青い鳥(大)は、嘴でイオの襟首をパクッとつまむと、ポイッと背中に乗せた。
呆然とするイオが、そのまま連れ去られてしまったぞ。
ベノワの主の扱いが少々雑な感じがするけど、気にしないでおこう。
「その2人は、エカがこの世界に残ってくれるのなら逢いたいと言っていたんだ」
「もしも日本に帰ってしまうのなら、また別れる哀しみを味わいたくないから逢わないと言っていたのよ」
俺は前世の父さんと母さんに連れられて、世界樹の森の中に建つ小さな家を訪れた。
両親が住む家から徒歩で気軽に行き来できる距離の家。
それは、夢で見たあの家だった。
俺の中の人が、猛烈な思慕の情で心を揺らす。
ずっとここへ帰りたかった。
ここに住む大切な人たちに、逢いたかった。
この世界に戻る日を、どんなに待ち焦がれたか……
「ソナ、いるかい? エカの転生者を連れて来たよ」
家の入口で、父さんがドアをノックして呼びかける。
またもや、バタバタと走ってくる音がして、ドアが勢いよく開いた。
家の中から出てきたのは、夢で見たそのままの赤い髪の女性。
見た目年齢は20歳くらいだけど、世界樹の民は成人後の見た目年齢がほとんど変化しなくなるそうで、実年齢はもっと上になるのだろう。
「……エカ……なの……?」
父さんが「ソナ」と呼んだ女性は、6歳児の姿の俺を見て、少し困惑している。
転生後20年も経っている筈なのに、子供の姿で日本人とは違う容姿だからかな?
続いて、赤い髪の青年が出てくる。
「……えっ? こんな小さい子が、父さん……?」
同じく困惑する赤い髪の青年は、鼻の穴広げて真顔になった。
……それ、俺の癖だけど……。
まさかこの癖、前世からなのか?! 遺伝するのか?!
その青年が、すっかり大人になっていた前世の息子リヤンだった。
死んだ父そっくりな容姿に成長していて、6歳児の俺と並ぶと親子に見える。
但し、俺がリヤンの子供に見えるけど。
「私たちは家に帰るから、3人でゆっくりお話するといいわ」
父さんと母さんは、気を利かせて帰っていく。
俺は前世の妻子が住む家の中に招き入れられた。
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