第32話:ウタドリのタマゴとヒナ★
なにはともあれ、妹ちゃんが無事で良かった。
彼女は俺の胃袋を掴んでる人。
家庭料理の温かさを俺に教えてくれた恩人だ。
なので、もしも怪我でもしていたら、トゥッティを捕獲じゃなくて全力でボコりに行くところだぜ。
妹ちゃんの部屋に現れたヘビの狙いは、1羽のヒヨコだったらしい。
ロッサ先生の研究室で合流したイオはそう言っていた。
イオが見せてくれた画像は、ふわふわぽわぽわ水色ヒヨコ。
手乗りサイズで、巨大ヘビの腹の足しになるようには思えない。
「先生、これ何の鳥ですか?」
「これは
イオが水色ヒヨコの画像をロッサ先生に見せて聞く。
ロッサ先生が言う鳥の種類は、俺の中の人が知っているようだった。
ヒヨコの羽毛と妹ちゃんの髪、そっくり同じ色だから、前世に縁のある生き物かもしれない。
「ウタドリのタマゴを、聖女が孵化させると生まれる神鳥だよ」
「「聖女?!」」
続く先生の話に、俺とイオがハモった。
聖女という発想は無かったな。
天使に見えたことは(主にゴハン前に)何度もあるけど。
「親鳥は多分、リユ君の髪色を見てタマゴを託したんじゃないかな」
「それってピピルが俺にタマゴ当てさせたみたいな?」
「おそらく、そうだろうね」
魔法協会のガラポン抽選会で、イオに特賞を当てさせたチッチとピピル。
それはチッチが1等を当てたいという目的もあったけれど、ピピルは
一方、イツキの召喚獣のホムラからも頼まれていたという。
ホムラは同じ
それで、赤いタマゴは俺が孵化させるといいとか、オススメしていたみたいだ。
「それで、まだ食べるとこ少ないヒナを、どうしてヘビが狙ったんですか?」
「それはおそらく、
俺の問いに、ロッサ先生はヘビの狙いは空腹を満たす以外にあると教えてくれた。
「そういえば、カジュもウタドリのタマゴを育ててたよ」
「「行ってくる!」」
すると、一緒に先生の話を聞いていたチッチが、ハッと気付いた感じで告げてくる。
俺もイオも、次にヘビが来る場所が予想出来た。
「じゃあワープさせるよ」
「「ありがと!」」
次はどこか察したチッチが、俺たちを転送してくれた。
……但し。
移動した先は、巨大ヘビの頭の上!
「うわぁぁぁ!!!」
「
思わず叫んだ後、俺はイオが起動言語を唱えたのを聞いた。
その直後、ヘビは彫像のように動きが止まる。
これは、松本先生の修行で、イオが使っていた身体強化魔法か。
「加速魔法をかけてみた。今のモチは、音速で活動してるよ」
「マジか」
音速?!
時速1193.2 kmで走れちゃう?!
「とりあえず、このヘビ片付けよう。こいつの体内に範囲絞って
「お、おう」
山根さんの恐怖を思い出し、俺の心が凍りそうになった。
しかしビビッてる場合ではない。
「
俺の
それは音速で発動したから、ヘビはまだ気付いていない。
「よし飛び降りよう」
「え?!」
いきなり、イオが俺を抱えて、ヘビの頭上から床へ飛び降りる。
お姫様抱っこ状態に俺が困惑している間にフワッと着地、スタスタ歩いてヘビから離れた。
直後、一気に凍結した巨大ヘビが地響きを立てて倒れる。
俺はその音を聞いて、加速魔法が解除されたと気付いた。
「やったねモチ、大成功だよ」
「ふぇぇぇ~ん!」
イオが成功を喜ぶ。
部屋の隅にいたカジュちゃんが、泣きながら俺に抱きつく。
しかし俺は、天井からブラ下がってるモノに目が釘付けになった。
頭を天井にめり込ませた、数匹のヘビ。
俺が凍結させたものより小さめのやつ。
なんでヘビがブラ下がってるんだ?!
「カジュちゃん、あれ何?」
「え? あ~あれ、うちのユズを食べようとしたから追い払おうとしたら刺さっちゃったの」
どうやらイオも気付いたようだ。
カジュちゃんが、ふと泣き止んで答える。
「怖かったよぉ~!」
って言いながら、カジュちゃんはまた俺に抱きついてくるけどさ。
俺たちが助けに入らなくても、倒せたんじゃないかな?!
※イメージ画像・小鳥たちと少女たち
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075545036551
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