第20話:ガラガラとイオ★

 3番手はイオになった。


「じゃあ、次は俺で」


 攻撃魔法を期待してるっぽいイオが、ガラガラを回す。

 コロン、と出たものに、全員の目が釘付けになった。


 光り輝く虹色の玉、だと?!


 ハッとした抽選受付嬢が、机に置いてあるハンドベルを掴み、全力で振る。

 音が鳴らないぞ? って思った直後……


 ガラガラガラガラーンッ!!!


 ……大時計台から大音量で、ハンドベル音が鳴り響いた。


「「そっちかい!」」


 思わずツッコミを入れる俺とイオ。

 周囲に野次馬が集まってきた。


「遂に! 遂に! 10年ぶりに特賞が出ましたぁぁぁ!!!」


 抽選受付嬢が絶叫する。

 特賞10年ぶりって、どんだけ出なかったんだよ。


「特賞が出たんだって?」

「異世界人が当てたらしいぞ」

「ほら、あそこにいる青い髪の子供だよ」


 野次馬たちが、ザワザワしながらイオを見る。

 照れるイオから、スススーッと離れて他人のフリをする俺とイツキ。

 騒ぎに紛れて、ガラガラを回してるのはチッチ。


「続いて1等も出ましたぁ!」


 抽選受付嬢が普通にベルを鳴らす。

 しかし特賞の後だからか、人々の注目はほとんど向かない。


「特賞の方には魔法協会の会長が賞品を届けに来ますので、しばしお待ちを。1等の方にはこちら!最上級魔法の全属性セットです!」


 チッチにはカードセットが手渡された。

 1等で最上級魔法フルセットか。

 イオの特賞は、どんな魔法カードになるんだろう?!

 街の人々も俺たちも、ソワソワしながら賞品が届くのを待った。


「特賞を出したのは誰?」


 上からスーッと降りてくる、ホウキに乗ったアメショ風の猫人。

 漆黒の布地のローブは、金糸の刺繍で裾や袖口に草の蔓のようなものが描かれていた。


「会長! 特賞を出したのは、こちらの異世界人さんです!」


 抽選受付嬢がササッとイオの隣へ行き、手で指し示す。

 イオは照れつつも、何が貰えるのか楽しみな様子だ。


「嬉しいねぇ、アタシが生きてるうちに、また特賞が出るなんて」


 シルバータビーの猫人会長が、マスカットグリーンの瞳を嬉しそうに細めた。

 特賞って何年も出ないのがデフォルトなのか?


「さあみんな、これが10年ぶりに出た特賞の賞品だよ! よ~く見ておきなさい!」


 会長が片手でホウキを掲げると、ホウキが杖に変化する。

 その杖を地面に向け、円を描くように振ると、地面に魔法陣が現れた。

 魔法陣の中央が虹色の光を放ち、地面から湧き上がるように宝箱が出てくる。


「特賞を引き当てた異世界人の坊や、開けてごらん。この宝箱の中身は全てアンタの物だよ」


 会長からそう言われたイオが、宝箱に歩み寄って蓋を開けた。

 金・黒・白・赤・黄・青・緑…それぞれ異なる七色の丸い物が、箱の中に収められている。

 大量のカードが出てくるかと思ったら、違った。

 あれも魔法習得アイテムなのか?


「全属性召喚獣の卵セット。孵化させればアンタは召喚獣を従えられるよ」

「え?!」

「アンタ、アサケ学園の学生だろう? 育て方は動植物学部の先生に聞きな」


 特賞の賞品は、予想の斜め上だった。

 イオも呆然としている。


「孵化させたら協会まで見せに来ておくれ」


 雑な説明をする会長が杖をサッと振ると、杖がホウキに変化する。


「じゃっ、アタシはこれで。バーイ!」


 って言葉を最後に、会長はホウキに乗って飛び去る。

 後には、人々に拍手されながら呆然とするイオが残された。


「ではこちら、協会からの特賞プレゼントをどうぞ!」

「……あ、はい」


 抽選受付嬢が声をかける。

 我に返ったイオは、宝箱とその中身を異空間倉庫ストレージに収納した。



 ◇◆◇◆◇



「特賞の鐘が鳴ってると思ったら、うちの関係者だったのか」


 その後学園に帰り、抽選会の事を話したら、ロッサ先生は笑って言った。

 それから、何か見抜いたように、ロッサ先生はチッチの方を向いた。


「チッチ君、謀ったね?」

「イオが特賞を当ててくれたおかげで、念願の最上級魔法セットを手に入れました」


 チッチが笑って答える。

 彼は、最初から1等狙いだったらしい。

 特賞が残ってると高すぎる運で当ててしまうので、イオに福音鳥の羽を与えて運を上げ、特賞を押し付けたのだ。


「先生、魔法協会の会長に、賞品の説明を丸投げされてますよ?」

「ハハハ、あの会長は雑だからねぇ」


 イオが言うと、ロッサ先生は苦笑した。


「じゃあ、まずはタマゴに宿る召喚獣について説明しようか」


 ロッサ先生の説明によれば、7つのタマゴはそれぞれ属性と育て方が違うらしい。

 タマゴの色は、金・黒・白・赤・黄・青・緑の7色。


 金:光属性。

 黒:闇属性。

 白:無属性。

 赤:火属性。

 黄:土属性。

 青:水属性。

 緑:風属性。


「タマゴは、専用の指輪の中に収納して身に着けていると、装備した者の魔力を吸って成長し、孵化するよ」


 タマゴと一緒に入っている小箱を指差して、ロッサ先生が言う。

 イオが小箱を取り出して開けてみると、シンプルなデザインのリングが入っていた。

 それぞれが卵の色と同じ、7つの指輪だ。


「どんな召喚獣が生まれるかは、主の魔力次第」

「7つ一度に孵化させるんじゃなくて、1つ1つ孵化させる方が、いいものが生まれてくるよ」


 ロッサ先生に続くように、アドバイスするチッチ。


「君の髪の色は前世で契約していた召喚獣の影響のようだから、青いタマゴから育ててみてごらん」


 イオは青いタマゴから育てることにしたようだ。



※宝箱とイオ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075534600296

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