第18話:街へ行こう★

 翌朝、動植物学部のロッサ先生と生徒たちの案内で、魔法学部の松本先生&クラス生徒50名は初めて学園の敷地外となる街へ出た。

 周囲を深い森に囲まれた環境だったから、俺たちが街へ行くのは初めてだ。


「召喚!」


 ロッサ先生が指示すると、動植物学部の生徒たちが一斉に召喚獣を出した。

 彼等は授業で幻獣や神獣との契約をするらしい。


「いいなぁ召喚獣」


 動物好きのイオが、きらきらした目で召喚獣たちを眺めている。

 お前、魔法学部じゃなくて、動植物学部にすればよかったんじゃないか?


「では2人1組で乗って行くよ」


 ロッサ先生に言われて、召喚獣を持ってる動植物学部の生徒と、魔法学部の生徒が2人1組になる。

 俺の前に、スッと歩み出てきたのは、紅の色彩が美しい不死鳥フェニックス

 この赤色、俺の髪の色に似てるなぁ。


『あなたは珍しいね』

「?!」


 いきなり頭の中に【声】が響いた。

 これはいわゆるテレパシーというやつか?


『こんなに短期間で死と復活を繰り返してるなんて』


 不思議な【声】は、不死鳥が話しかけているっぽい。

 この鳥には俺が自爆と蘇生を繰り返した履歴が見えるのか?


『その赤い髪、まるで私と同じ不死鳥のようだね』


 不死鳥フェニックスは俺をじっと見つめた後、親し気に頭をすり寄せてくる。

 そういや、不死鳥って死んでも復活するんだっけ。

 仲間意識(?)を感じた俺は、片腕を親し気に不死鳥の首に回し、空いてる片手でガッツポーズをとった。


「そう、俺は何度でも蘇るのさ!」

「蘇らせてるの、僕ですけどね」


 言ったら、江原のツッコミがきた。

 まあ確かに、江原の蘇生が無ければ俺は今頃この世にいないだろうな。

 そんな江原が組んだのは、白いモフモフの犬フェンリル。

 動植物学部のマスコットと化している仔犬の母ちゃんだ。

 幻獣も神獣も翼の有無に関わらず空を飛べるので、江原たちはフェンリル母ちゃんに乗って行く。


 一方、イオには青い大きな鳥が歩み寄っている。

 その羽毛の色は、イオの髪色と同じサファイアブルーだ。


「この子が君と組みたいって言うから、一緒に行こうか」

「よろしく~! この子は何ていう召喚獣?」


 と聞いた直後、イオがなんかビックリしたような顔になる。

 俺と同じで、鳥に話しかけられたか?


「幸せを運ぶ神の鳥と言われる神獣だよ」


 その鳥の主人で、青い毛並みの猫人が、ニコニコしながら説明している。

 青い鳥は、福音鳥ハピネスというらしい。


「落ちないようにしっかりつかまっててね」

「うん」


 様々な召喚獣たちが、猫人と転移者を乗せて空へ舞い上がった。

 青く澄み渡る空に、様々な色彩の召喚獣たちが舞う。

 俺を乗せてくれた不死鳥フェニックスの名ホムラ、主人マスターはイツキ。

 イツキは赤い毛並みの猫人で、その色は召喚獣の影響だと教えてくれた。


 上空から見る学園は、ヨーロッパの古城のような本館と、それを囲む各学部や施設の建物で構成されている。

 建物より外周に校庭があり、校庭よりも外周が広大な森だ。

 四季の森と呼ばれる4つの森は、くっきりと色彩が分れている。


 春の森は、萌黄色の若葉が茂る森。

 夏の森は、新緑の旺盛な葉が茂る森。

 秋の森は、赤や黄色に紅葉した葉が茂る森。

 冬の森は、葉の無い木々を樹氷が飾り、地面は真っ白な雪に覆われた森。


 異なる色彩の森が、四つ葉のクローバーの葉みたいに学園を囲んでいる。

 その森の外側は、それぞれ違う街になっているそうだ。

 4つの街は春の街プラン、夏の街エテル、秋の街オトンヌ、冬の街イベルという。


「オトンヌの街へ行くよ!」


 隊列を組むその先頭にいるロッサ先生が告げた。

 秋の実りに恵まれた街・オトンヌ。

 特産品は様々な木の実や果実、穀類も豊富らしい。


「いつもの場所に、ゆっくり降下!」


 ロッサ先生の指示が飛び、降下が始まる。

 街の防壁の外、金茶色の草に覆われた広場に、色とりどりの召喚獣が舞い降りた。


「いらっしゃい! ようこそオトンヌへ!」

「いつ見ても華やかで美しい光景ですね」


 街への入口に立つ門番の2人が、楽しそうにニコニコしながら迎えてくれた。


「あの時計台の鐘が5つ鳴ったら、街の外の広場に集合だよ」

「魔法学部の生徒は、案内役の生徒とはぐれないように気を付けて行動しろよ」


 門をくぐってすぐ、ロッサ先生と松本先生が言う。

 オトンヌの街は中世ヨーロッパ風の街並みで、中央には大きな時計台がある。

 時を告げる鐘は、街のどこにいても聞こえるそうだ。


「では自由行動開始!」


 松本先生の指示で解散後、生徒たちは2人1組で自由行動を始める。

 俺はイツキの案内で街の散策に出た。



※オトンヌの街イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075418854118

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