第16話:ポーク狩り★

 翌朝、剣を背負ったイオ、杖を持った江原、手ぶらの俺は、狩りの許可を出す担任・松本先生が来るのを待っていた。


「今日はポークを狩りに行こう!」

「モチさん、ポークじゃなくてオークです」


 朝から張り切る俺に、律儀にツッコミを入れてくれる江原。

 オークは、この世界では大柄な豚の魔物で、お肉は日本の豚肉そっくりの味らしい。

 昨日松本先生からその話を聞いた俺の中で、オークは既にポークである。


「今日は秋の森でポーク狩りをしてきます」

「ポークじゃなくてオークな。行っていいぞ」

「オーク狩り? 俺も行っていい?」

「俺も俺も」


 狩りの許可は、ポークに対するツッコミを含めてすぐに出た。

 教室で松本先生と話していたら、聞いていた男子生徒が数人、参加希望してくる。

 攻撃魔法科が狩りに出るには、通常は武道科を前衛に連れて行くらしいけど。

 転移者揃いのうちのクラスは、動きが遅いポークなら攻撃される前に魔法で倒してしまえるそうだ。


「行きたい奴全員行っていいぞ。全校生徒がトンカツ食えるくらい獲ってこい」

 先生は快諾してくれた。


「トンカツ? 俺も行く!」


 更に参加希望が増えて、結局クラスの男子25人全員行く事に。

 校舎の外へ出ると、不参加の女生徒や他のクラスの生徒まで、窓から顔を出して手を振っている。


「みんなぁ! トンカツ食いたいかぁ?!」


 ノリノリの大声で俺が呼び掛けたら……


「「「お~~~~~っ!!!」」」

「カツ丼も食べたい!」

「俺、カツカレーね!」


 ……大人数のノリノリな反応が返ってきた。


 まるでプルミエタウンのステージのようなノリだ。

 テーマパークは今頃どうなっているのやら。

 臨時休業になっているのだろうか?


 ポークは秋の森のあちこちにいるそうで、5人ずつに分かれて狩る事にした。

 各班それぞれに経験者を入れて、案内してもらいつつ森を進む。


 秋の森は、赤や黄色に紅葉した木の葉が美しい、華やかな森だった。

 食べられる木の実や果実があちこちに実っていて、ついでにそれを採集する。

 気温は夏の森よりも低く、経験者は全員薄手の長袖を着ている。

 初めて行くメンバーも経験者から聞いていたので、みんな長袖だ。


 しばらく行くと、柔らかい土に足跡を見つけた。

 2つに割れた、大きな蹄の跡だ。


「これ、オークの足跡?」

「うん。近くにいるね」


 イオが同行している経験者の子に確認した。


 近くにいるっぽいので、江原は自己防衛の防壁バリアを張り、攻撃担当の経験者ともう1人は杖を構えた。

 俺は杖無しで魔法が使えるので手ぶらだ。


 ガサガサと葉音を立てて、二足歩行のデカイ豚の魔物が現れた。

 手には、太い棍棒みたいなのを持ってる。

 出たなポーク!


 イオが、皆の前に出て、背負っていた剣を抜く。

 剣なんて昨日持ったのが初めての素人のくせに、やけに様になっている。

 ポークがニヤアッと悪そうな笑みを浮かべて舌なめずりした。

 6歳児の姿だから、弱っちいと思われているようだ。

 イオが、わざと相手の攻撃が届く距離まで歩いて行く。


 ポークが棍棒で殴りかかり……


 スカッ


 ……まるで、手元が狂ったようにハズレた。


「ブヒッ?!」


 豚系の鳴き声で困惑を表すポーク。


 ブンッ、ブンッ、ブンッ!

 スカッ、スカッ、スカッ☆


 振り回す棍棒は、全部イオを避けるように空を切る。

 困惑と悔しさで、ポークがプルプルしているぞ。


「ブギィッ!」


 どうやら、ぶちキレたようだ。


 棍棒を投げ捨ててイオに飛びかかり……


 スカッ


 ……見事にはずれて、スッ転んだぞ。


 よし、俺たちの出番だ。


爆裂魔法エクスプロージョン!」

「ファイヤボール!」

「アイスニードル!」


 3人で一斉攻撃したけど、多分俺の魔法を食らった時点でポーク死んでたかも。

 他の2人は魔法の熟練度UP狙いで撃った感じだ。



 その後もオーク狩りは順調に進み、効率の良い俺たちの班はすぐにノルマクリアとなった。

 帰るにはまだ早いので、他の班の手伝いに向かう。

 他の班はノルマ半分まで狩り終えたところだ。


「こっちは終わったから手伝うよ」


 教室爆破で魔法熟練度を上げてきた俺は、この時既に火力では学年トップになっている。

 加勢に入った班はすぐにノルマクリアして、他の班の手伝いに向かう。

 楽々と狩り進めていたら、暇になったイオが採集の旅に出てしまったよ。

 全班が目標数を狩り終える頃にはイオも戻ってきて、みんな揃って学園に帰った。



※イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075361514640

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