第10話:自爆魔法は日課です★

 アサケ学園の各部屋の天井にあるのは、建物の修復効果を持つ魔法陣。

 壊れる前の状態を記憶、それをもとに建物を修復するという。

 災害に備えて開発された魔法陣だけど、魔法学部の場合は魔法暴発への備えでもあるらしい。 


 最近、俺が教室に入ると、教室にいた人々が慌てて退避する。


「♪今日~も元気に、はいっ自爆メガンテ!」


 起動言語を言ったところで、記憶が途切れる。

 次の記憶は、崩れた教室の真ん中に立っているところからだ。


「こらぁっモチ! 自爆は外でやれっつったろっ!」


 室外から怒鳴る松本先生。

 隣で苦笑する江原。

 俺は今日も自爆して、江原に蘇生してもらった。

 自爆魔法メガンテは苦痛を伴わない、爆死する恐怖感も無い。


「1日1爆、日課にしよう~♪」

「授業の邪魔だから日課は外でやれ!」


 自爆が日課になった俺。

 松本先生、場所を考えろとは言うけど自爆そのものは止めない。

 自爆すると、爆裂魔法レベルが上がる。

 俺の蘇生をすると、江原の聖属性レベルが上がる。

 結果的に俺と江原が成長するのでいいらしい。


 俺は自爆魔法メガンテ以外に、対象を爆破する魔法を覚えた。

 爆裂魔法エクスプロージョン

 これも範囲型なので、周りを巻き込むなってよく言われる。


 江原、今では蘇生魔法を単体か範囲かに切り替えて使える。

 蘇生以外の聖属性魔法も次々に覚えて、怪我人も完全回復させられるよ。

 神殿でのアルバイトを始めたら、聖者として扱われているそうだ。


「もう異世界こっちで就職で良いかも」


 江原、異世界就職決定か。

 稼げるなら、職種は問わないようだ。


 俺も美術学部で講師のアルバイトを始めた。

 今日も大勢集まる教室で、漫画の描き方講座を開いている。

 給料をもらったら、購買の画材を買いに行こう。



 相方イオの【完全回避】は、世界で1人だけが持つというユニークスキルだった。


「あ~イオ、ちょっとそこに立ってろ」


 魔法学部の練習場。

 松本先生の指示で、イオは広場の中央に立たされた。

 その四方、広場の端っこ辺りに1人ずつ、合計4人が杖を構えて待機している。


準備スタンバイ!」


 松本先生の声が広場に響く。


「ファイヤボール、準備スタンバイ

「アイスニードル、準備スタンバイ

「ストーンブラスト、準備スタンバイ

「ストーム、準備スタンバイ


 4人それぞれ属性の違う攻撃魔法を起動して、杖の先に宿らせる。

 杖の先で球状にまとまってる魔法は、攻撃前の「溜め」状態だ。

 よし、俺も参加しよう。


「俺も俺も~!」

「お前はやめとけ!」


 加わろうとしたら、隣にいた生徒にガシッと掴まれて止められた。

 残念、自爆は授業中は使えないようだ。


「じゃあ笛が鳴ったら同時に撃てよ」


 松本先生が手にしたホイッスルを口元に運び、開始の合図をする。


 4つの属性、攻撃魔法が4つの杖から放たれた。

 攻撃目標ターゲット、イオ。

 火球・氷刃・石つぶて・渦巻く風が、同時に飛ぶ。

 イオは何もしないで立ってるだけ。

 普通なら全魔法着弾するけど、イオは無傷でドヤ顔だ。


「複数からの攻撃、複数の属性でもノーダメージか」

「イオには防御魔法も回復魔法も蘇生魔法もいらないね」


 ふむふむと興味深そうにしてる松本先生。

 隣で待機していた江原が冷静に言う。


「さすがユニークスキル、見事なチートだなぁ」


 攻撃に加わっていた生徒の1人が、杖を片付けながら言う。

 使わない時の杖は、空間魔法で作った異空間に収納するらしい。

 異空間倉庫ストレージは、異世界転移した全員が持ってる便利機能だ。


「でもこれ、攻撃を避ける以外に使い道ないよね?」


 当のイオは、身の安全を守る以外に使えない地味スキルだと言う。

 魔法学部の教科書には「勇者のために創造神が開発したユニークスキル」って書いてあるけど。

 イオ本人は健康維持以外に取り柄がないと思っているようだ。


「そうでもないぞ」


 何か使い道を思いついたらしいのは松本先生。

 この人はいろいろな発想力があるので、回避すること以外に使えるものが浮かんだのかもしれない。


「よーし、今からダンジョン行くぞ!」

「へ?!」


 唐突に言われて、イオがポカンとした。

 さすが異世界、ダンジョンがあるらしい。

 でも、そんなお手軽に行けるのか?


「みんな、杖を装備しろ。狩りに行くぞ」

「俺、杖ないよ?」

「モチは杖なしで魔法を使えるから、持たなくていい」


 指示されて、異空間倉庫ストレージから杖を出して手に持つ生徒たち。

 俺は杖なし魔法使い。

 杖が無くても爆裂魔法は使える。


「えーと、俺は?」

「イオも手ぶらでいいぞ」


 まだ魔法が使えないイオも手ぶらだ。

 そして松本先生の引率で、クラス全員でダンジョン研修に向かった。



※教室のイメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075415735269

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る