第4話:医学部と料理学部★

「2人もカジュと同じ、魔法学部を選択でいいのかニャ?」


 カジュちゃんは魔法学部にいるのか。

 魔法、覚えたいな。

 でも、他の学部はどんなものがあるかも知りたい。


「他の学部はどんなのがあるんですか?」

「ちょっと見学してくるといいニャ」


 同じことを思ったらしいイオが訊いている。

 学園長は、校内の案内図をくれた。

 本館を中心に、四方に建物、その外側に森が広がっている地図だ。


「カジュ、案内してあげるニャ」

「はぁい」


 学園長に言われたカジュちゃんが案内人になってくれた。

 いつまでこの世界にいることになるか分からないけど、せっかくだから楽しもう。


   ◇◆◇◆◇


 カジュちゃんが最初に案内してくれたのは、笹谷さんが担任を務めるクラス。

 元の世界に居た時と同じ、元の世界での姿そのまま、痩せ型長身で顔色の悪い笹谷さんが教壇に立って何か話している。


「授業を始め…ゲホゴホぐふっっ!」


 ……もしもし、笹谷さん?

 血ぃ吐いてませんか?!


「うわぁ大変だぁっ、先生が吐血した!」

「息してないよ先生っ!」

「心臓止まってるぅ!」


 ……ちょっ、大丈夫か?!


 「大丈夫、いつものことだから」


 動じてないのはカジュちゃん。


 心肺停止状態の笹谷さんに、二足歩行の猫型獣人の生徒が駆け寄る。

 抱えてきた物は、AED?

 獣人たちが気道確保&人工呼吸、心臓マッサージ(胸骨圧迫)してるぞ。

 しかも手馴れているような?


 

「はぁはぁ……みんな、よくやった……」


 1分くらいで、笹谷さんは蘇生されていた。

 顔色は悪いけど、とりあえず助かったらしい。


「さすが医学部、いつも蘇生が早いね」


 ニッコリ微笑むカジュちゃん。


 えっ? 「いつも」?

 笹谷さん、こんなに毎回死にそうになる人だったっけ?



 ◇◆◇◆◇



 次に案内してもらったのは、料理学部。

 さっきの医学部よりも生徒数が多く、調理室も複数ある。

 廊下を通ると、胃袋を刺激する良い匂いがした。


「「は…腹減った」」


 ハモる俺とイオ。

 近くの調理室を覗くと、出来上がった物を器に盛り付けているのが見えた。


 肉じゃがだ!


 美味そう! 誰か試食させてくれないかな?


 期待を込めて調理室を眺めていたら、猫型獣人に混じってヒューマンタイプの女の子がいるのが見えた。

 髪や瞳の色は水色で洋風な顔になってるけど、ほんの僅かに残る面影は俺が知っている人に似ている。


「リユちゃ~ん、お兄ちゃん起きて来たよ」


 カジュちゃんが調理室のガラス窓を開けて呼びかける。

 その名を聞いた瞬間、俺はその女の子が誰なのか理解した。

 いつも美味しいゴハンを食べさせてくれた、イオの妹ちゃん。

 プルミエタウンに住む者が全員ナーゴに飛ばされたのなら、彼女も来ているよな。

 料理好きだから、この学部にいるのも納得だ。


「おはよう~、肉じゃが食べる?」

「「いただきます!」」


 天使降臨!

 俺とイオがハモった。


 調理室の隣は試食ルー厶。

 そこへ入らせてもらって、肉じゃがを御馳走になった。

 すき焼きに似た甘辛い煮汁の中に、豚肉とジャガイモ、彩りに緑の豆。

 芋は煮崩れしにくいメークイン系、もっちりした食感。

 豚肉は短時間で仕上がりやすいように、バラ肉スライス使用。

 プルミエタウンの社員寮で、何度も御馳走になった絶品を異世界で食えるとは!

 ……ってことは、この世界には【醤油】があるのか。


「ごちそうさま!美味しかったよ」


 イオも気持ちいい食べっぷりで完食して、満ち足りた顔になっている。

 お腹が満足したところで、俺はふと気付いた。


「そういば先生いなかったけど、料理学部にも社員さんいるの?」

「何言ってるの、リユちゃんが先生よ」

「「マジっすか?!」」


 カジュちゃんに聞いたら、想定外の返事がきたぞ。

 確かに、調理室に教師らしき人はいなかったな。

 でも、ここへ来てそんなに経ってない、それも6歳児を教師にするか?!

 アサケ学園、謎が多過ぎだろ。



※イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075188709384

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