第3話:三毛猫学園長の面談★
イオは昨夜ソファで寝落ちたことも、俺がベッドまで運んで寝かせたことも、全く覚えていなかった。
彼はシャワーを浴びる前に眠ってしまったから、朝から浴びている。
翌朝、俺とイオはカジュちゃんの案内で学園長に会いに行った。
途中で通った校舎内は、ファンタジー映画に出てくる洋風の城に似た内装だった。
石壁や、回廊など、プルミエタウン中央施設プルミエ城とはデザインが違って興味深い。
しかし、契約先の
異世界人の学園長は、でっぷり太った二足歩行の三毛猫だった。
「よく来たニャ。僕は学園長のナジャ・アサケ。よろしくニャン」
「「よろしくお願いします」」
俺とイオのハモりを、猫の学園長はニコニコしながら聞いている。
猫といっても、学園長の体格は6歳児の俺たちよりデカい。
「さすがは双子、息が合うニャ」
「「双子?!」」
またハモる俺たち。
イオとは地球にいた頃に「双子~」と言い合ったことはある。
それは、顔立ちや食べ物の好みや体質が似てるからネタにしてただけだ。
本当に双子だったとは思わなかったぞ。
「占いオババが言ってたニャン」
「「占いオババ?!」」
「そこの通路の突き当りにいるから、会いに行ってみるといいニャン」
学園長に言われて、カジュちゃんと3人で通路の突き当りまで行く。
占いオババは、ローブを着てフードを目深に被った白猫だった。
猫顔なので若いか年寄りかなんて分からんけど。
「私はジャミ・アサケ。占ってほしい事があればいつでもここに来るがいい」
「「俺たちが双子ってどういう事?」」
「正しくは、前世でこの世界に居た頃の双子だね」
またハモる俺たちに、ジャミさんは説明してくれた。
前世の双子と聞いた時、俺は心の奥底で、また微かな痛みを感じた。
昨日から時折この世界の何かに反応する、懐かしいような切ないような感覚はなんだろう?
「お前さんたちの髪の色や顔立ちが変わったのは、この世界の人間だったからさ」
ジャミさんは、アンティークな机に乗せた水晶玉に、映像を映し出して見せた。
そこには、今の俺たちに似た子供たちが映っている。
子供たちは木漏れ日が降り注ぐ緑の森の中で、楽しそうに笑い合っていた。
途端に、心の深いところで、何かが大きく揺れた。
それは俺だけが感じたもののようで、カジュちゃんとイオは驚いた様子も無く水晶玉を覗き込んでいた。
◇◆◇◆◇
「さて、君たちはどのクラスを希望するのかニャ? 見学して決めてほしいニャン」
「えーとその前に、なんでこの世界に来たか教えてほしいんですけど」
ジャミさんのところから学園長室へ戻ると、ナジャ学園長が言った。
俺は言う。
学園長なら何か知ってそうだから教えてもらいたい。
「それは今は教えられないニャン。いずれ分るから、今は聞かないでほしいニャ」
「これが異世界転生なのか転移なのかは、教えてもらえます?」
学園長が困り顔で言う。
今は言えない理由があるようだ。
するとイオが質問を変えて聞いた。
「元の世界で死んだワケではないから、異世界転移ニャン」
「元の世界には帰れるの?」
学園長は答えてくれた。
今度はカジュちゃんが重要な事を聞く。
我が社の取引先、初代社長作成の転移装置がある異世界アーシアは別として、異世界転移は基本的に一方通行、帰れないパターンが多い。
アーシアも初代社長が転移したときはまだ一方通行だったらしい。
そこから戻るために転移装置を開発した瀬田史郎氏は偉大だ。
「それは今後の活動次第ニャ。とりあえず学園で学ぶ事がその先に続く道ニャン」
「もしかして、子供の姿になったのは成長力UPの為?」
学園長の話しぶりでは、帰れる可能性はあるっぽい。
もしやと思い、俺は確認のため聞いてみた。
勉強でも運動でも、子供の方が覚えやすくて成長もしやすい。
「大人の身体だと、スキルや魔法を覚えられないからニャン」
「「魔法、覚えられるの?!」」
すると学園長が、興味深い事を言う。
俺とイオがハモった。
プルミエタウンで抽選会に魔力を使ってたけど、攻撃魔法とかあるなら使ってみたい。
「2人とも魔法学部を選びそうね」
「「選べるの?!」」
カジュちゃんが言う。
またハモる俺とイオ。
そりぁ選べるなら魔法だな。
※イメージ画像
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075550759223
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