若さという有限のリソース

And then one day you find ten years have got behind you.

No one told you when to run, you missed the starting gun.


そしてある日、お前は10年の月日が過ぎ去ったことに気付く。

誰も、いつ走ればいいかなんて教えてくれなかった。スタートの銃声をお前は聞き逃したのだ。


 上の英文と、その訳文は、ピンクフロイドの"Time"という曲のものだ。

(ただの引用なので、著作権は問題にならないと思うけど、大丈夫かな?)

 曲全体の歌詞と、その訳は、ネットでも使って調べてみてほしい。


 この曲を若い人間が聞いても、特に何も思わないかもしれない。だが、歳を取ってしまった人間は、心に刺さることだろう。

 人は若いころ、自分が年老いていく存在だなんてことを意識せず、ただ漫然と暮らしている。だがやがて誰もが、自分が決して、時間から逃れられない存在なのだという事実に行き当たる。


 今回は、漫画家や小説家を目指す人がしばしば忘れている事実について話そう。


 自分の歳を意識してほしい。

 小説家や漫画家として食っていきたいのなら、以下の一般論を忘れないでほしい。

 人の能力は、だいたい20代から30代がピークだ。

 30代までにできなかったことが、40を超えてからできるようにはならない。


 つまり、30代までにデビューできなかった人が、それ以降にデビューに成功するというのは稀である。歳をとってからデビューする人もいないわけではないけど、そんな人はたいがい、それ以前からデビューできるだけの力量を持ちながら、あえてデビューしていなかっただけである。


 デビューできていたとしても、30代までに売れる作品を生み出せなかったというのなら、やはり厳しい。30代までに一番売れた本が、その人の生涯の最高記録になってしまうことが多いからだ。


 若いころは年収が1000万円を超えていた漫画家、同人作家、小説家が、歳を取ったら生活保護を受けて細々と生きていくハメに……なんて話は、決して珍しくない。


 こういう話をすると、すぐに「作家のXXは40代が一番売れた」とか例外的なケースを持ち出して反証しようとする人がいるのだけれど、そんなのはまさしく、時間の無駄遣いである。

 なぜなら、例外的なケースをいくら挙げようとも、結局は20代30代が能力のピークという話への反論にならないからだ。何をするにも、若いころに始めた方が難度は低い。


 君の残された人生で、一番若いときは、今この時だ。

 もし30代以下であれば、今の能力が人生の最高潮だ。

 今、能力不足でできなかったことは、一生できない。

 このことを忘れずに、勉強し、腕を磨き、作品を作ってほしい。

 傑作を「いつか」書くなどとは言わないで。

 若いうちから、やらない理由を探す癖を付けないで。


 今すぐに書くのだ。

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