第3話 極道、力を示す


 ギルドで笑い者にされ、衝撃の一言をチェイルから受けた尊。



 固まる暇も無く、尊は3人の女冒険者達に絡まれた。一番最初に馬鹿にしてきた女剣士を始め、女の魔術師と斥候のパーティーといったところだろう。


「冒険者になろうなんて、よっぽど自信があるみたいだな。まあ、せいぜい雑用程度が手一杯だろうけど」

「そうそう、無理せず内職だけやっていればいいのよ」

「出しゃばったところで痛い目見るだけ、とっととお家に帰るんだな」


 嫌な笑みで尊を馬鹿にし、おちょくってくる。尊は意に介さず、平然としていた。


「……受付、早いとこ進めてくれるか?」

「あ、は、はい!」


 受付の職員は急いで書類を奥へ持って行く。


「おいおい、そんなに死に急ぐなよ。大人しく裁縫してた方が身のためだぜ?」


 しつこく絡んでくる女剣士に、尊はうんざりした表情をしていた。


 こういう連中は無視し続けるのが吉だというのは、尊はよく知っている。今にも反論しそうなチェイルを制しながら、事が過ぎるのを待つ。


 徹底的に無視を決め込む尊に苛立ったのか、女剣士がムッとした表情になる。


「おい、無視すんなよ。男のくせに生意気だな」


 口調に苛立ちが目立ち始めた。すると、視線を尊の刀に向ける。


「こんな武器持ちやがって、持ち腐れだろうが」


 そう言って尊の刀を奪おうと手を伸ばす。


 次の瞬間、尊は目を見開き、女剣士の腕を掴んだ。


「おい、なに気安く触ろうとしてやがる」


 ドスの利いた声を響かせ、腕を上まで持ち上げる。


「な、なに……?!」


 女剣士も抵抗するが、尊の力の方が上だった。尊はそのまま突き飛ばし、距離を開ける。


「気が変わった。俺の力を分からせてやる」


 さっきよりも鋭い目つきで睨みつけ、臨戦態勢に入った。


 その圧に一瞬ビビるが、すぐに3人組も臨戦態勢に入る。


「言ったな? ボコボコにしてやるよ!!」


 突然殴りかかって来る女剣士。その拳は尊の顔面に狙いを定めている。


 尊は表情を変えず、一歩前に出た。


 そして、突き出して来た腕を両手で掴み、身体を捻り、背中で女剣士の全身を背負う。勢いそのままに女剣士を持ち上げ、一気に床に叩きつけた。柔道の一本背負いである。


「う!!?」


 強く叩きつけられた女剣士は、全身を強く打った衝撃で思わず声が出た。しかも、痛みですぐに動けない。


 尊はその隙を逃さず、掴んでいる腕を捻り、そのまま押し潰す。


「いででででで!!???」


 あまりの痛みに女剣士が声を上げた。尊は容赦なく制圧し続ける。


「この! 離しなさい!!」


 魔術師が杖で何かしてこようと動きを見せたのを見て、尊はすぐに動く。


 女剣士から手を離し、魔術師の方へ走り出す。走る勢いを利用し、飛び蹴りをみぞおちに喰らわせた。


「ぐ!!?」


 変な声を出しながら吹っ飛び、床を転がった。あまりの威力に咳き込み、すぐに動けないでいる。


「や、やったな!!?」


 斥候は懐からナイフを取り出し、尊に向かって突進した。


 尊はすぐに刀に手を掛け、瞬時に抜刀する。抜刀した剣先は斥候の首元に付きつけられ、あっという間に制圧してしまう。


「まだやるか?」


 転がっている2人と、動けずにいる1人に向かって言い放つ。


 女剣士は痛みで苦悶の表情を浮かべながら、


「お、覚えてろよ……!!」


 そう言い残して、ギルドを後にした。残りの2人も後を追うように、ギルドを出ていく。


 それを見届けた尊は小さく息を吐き、刀を納刀する。静まり返るギルド内を見渡し、


「……騒がせたな、用が済んだら出ていく」


 それだけ言って受付に戻る。


「た、タケルさん……」


 アワアワしているチェイル。


「チェイル、確認しておきたいんだが、この世界では女が冒険者をやるのが普通なのか?」


 尊からの質問で、我に返るチェイル。気を取り直して答え始めた。


「は、はい! 女性は男性より力が強いので、それが当たり前になっています」

「俺の世界では男の方が力が強いのだが……」

「単純な筋力量だけならそうかもしれません。ですが、女性は魔力を溜めれる量が男性の3倍以上あります。その魔力によって筋力を増加したり、戦闘力を高めています。なので、女性の方が力が強いんです」

「それで外仕事は女の仕事ってことになってるのか」

「そういう事です。……それを私が失念していて、こんなことに……。本当にすみません……!」


 肩を落とすチェイル。だが尊は、


「気にするな。そういう時もある」


 怒るどころか許すのであった。


「け、怪我はしてませんか?! していたら治します!」

「ああ、大丈夫だ。問題無い」


 チェイルは【治癒魔術】も使える。前に四肢蜘蛛に受けたダメージも、チェイルに治してもらった。


「お、お待たせしました」


 そうこうしているうちに、受付の職員が戻って来る。


「書類に不備はありませんでしたので、明日冒険者カードをお渡しします。明日、改めて来てください」

「分かりました」


 受付の言葉に従い、2人はギルドを後にしようとする。


「ちょっと待ちな」


 立ち去ろうとする2人に、斧を持った女冒険者が話しかけてきた。その後ろには、露出の多い服を着た女魔術師と、大きな盾を持った女剣士がいる。


「何か?」

「さっきは笑って悪かったな。アンタ、十分強いよ。冒険者としてやっていける」

「それはどうも」


 軽く会釈する尊。


「その詫びと言っちゃなんだが、一杯奢るよ。どうだ?」


 女からの誘いに、尊は少し考え、


「……奢ってもらえるなら、ありがたく受け取ろう」


 誘いに乗った。


「よっしゃ! 決まりだ! おっと、自己紹介がまだだったね、私は『ディアーチェ』。魔術師の方が『ルアーム』。盾持ちの方が『ダウル』だ。よろしくな」

「尊だ」

「チェイルです! よろしくお願いします!」


 互いに挨拶を済ませ、早速酒場へと向かった。



 ◆◆◆



 それから暗くなるまで飲み続け、尊以外はすっかりできあがってしまう。


「いやー、飲んだ飲んだ! 新しい出会いはやっぱりいいねえ!!」


 ディアーチェは顔を赤くして尊の肩に腕を回している。他のメンバーも顔を赤らめ、少しふらついていた。チェイルと言えば、


「うう、気分が……」


 酔いが回って顔を青くなっている。酒に弱い体質なのだと言っていた。


 尊は何杯か飲んだが、酔っている様子は無い。


(酒、あんまりおいしくなかったな)


 おそらくビールに近い物だったのだろうが、味も匂いもよろしくなかった。そのため、酔うに酔えなかった。


 ディアーチェの指示に従い、拠点にしている宿屋まで移動する。


「おう、ここだここ」


 そこは石造り2階建ての大きめの建物で、いかにも宿屋という雰囲気の場所だった。


 尊は4人を連れて中へ入る。待っていたのは、蝋燭を付けて本を読んでいる老男だった。


「……連れかい?」


 静かに尋ねる男性。


「おう! こっちの分の部屋も頼むわ!!」


 ディアーチェは大声で頼む。


「いつもの部屋の隣が空いてる。そこを使うといい」

「分かった!! それじゃあ行こうぜ!!」


 ディアーチェに引っ張られ、尊達は部屋へと向かう。


 少し長めの廊下の一番奥が、ディアーチェ達の部屋だった。その隣、手前側のドアを開けると、ベッドが2つある、簡易的な部屋がある。


 チェイルは早速部屋に入り、ベッドで横になった。


「ううう、お酒はキツイですう……」


 完全にダウンしたチェイルの後から部屋に入ろうとする尊。その襟首を掴んだのはディアーチェだった。


「お前はこっちだ」


 ニヤニヤしながらディアーチェ達の部屋に連れ込まれた。


 ディアーチェ達は詰め寄るかのように尊を取り囲み、顔を覗き込む。


「……何のつもりだ?」


 警戒する尊は、すぐに刀に手を付ける。


「そう警戒すんなよ。私はただ娯楽を楽しみたいだけさ」

「娯楽?」

「ああ、女と男で楽しむアレさ」


 そう言ってディアーチェは、尊の身体に触れてくる。


「女に負けない腕力、そして腕っぷしの強さ。抱くにはイイ男だと思ってね」


 その眼は獲物を睨む獣の様で、飢えているようにも見えた。


「ここまで奢ったんだ。まさか断るなんてしないよな?」

「………………」


 尊は少々呆れながら、その問いに答える。


「……断るつもりはない。全力で相手をさせてもらおう」

「そうこなくちゃな」


 全員服を脱ぎ、ベッドで身体と身体をぶつけ合い始めるのだった。



 ◆◆◆



「…………あれ?」


 ディアーチェが次に目を覚ましたのは、まだ夜が明けていない時間だった。


(確か、タケルと抱き合って……、それから……)


 あの後、ディアーチェは尊と肌を重ね合い、娯楽を楽しんでいた。


 搾り尽くすはずだったのだが、何故か3回も昇天させられ、気がおかしくなってしまった。その直後失神し、眠っていた。


 視線を横に向けると、


「♥♥♥♥♥♥♥♥♥!!!!! ♥♥♥♥♥~~~~!!!!!」


 ルアームが快楽で失神しており、ダウルは嬌声を上げながら尊と肌を重ねている。


 尊は汗はかいているが、疲労している様子は無く、まだまだ動ける状態だった。


 そして、ダウルも昇天し、失神してしまう。尊のアソコはまだ硬いままで、臨戦態勢は解けていない。


(マジかよ……、喰われてるの私らかよ……!)


 想定外の事態に驚愕している暇も無く、尊がディアーチェに気付く。ゆっくりと近付き、覆いかぶさる。


「まだするか?」


 獣よりも獰猛で、凛々しいその眼に、ディアーチェはもう逃げられない。


 心と体が、尊の虜になっていたからだ。


「は、はい……」


 そう答えるしかできず、再び肌を重ね合う。


 

 ディアーチェ達は一晩で徹底的に分からせられ、尊の凄さをその身に叩き込まれるのであった。


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