第40話「三人でお出かけ」
夏休みになって最初の土曜日、三人で遊びに行く日となった。
俺はまた服装に悩んでしまった。夏だし涼しくて動きやすい格好がいいよなと思って、薄いブラウン系のシャツに、濃い紺色のジーンズを着ることにした。普通といえば普通かもしれない。
出かける準備をしていると、インターホンが鳴った。リリアさんが来たのかなと思って出てみると――
「あ、ショウタ、おはよう!」
日本語での挨拶もバッチリなリリアさんは、薄いブルーのポロシャツに、ベージュ系の膝上スカートをはいていた。脚がすらっと長く見えて俺はドキッとしてしまった。
「あ、お、おはよう……」
『あれ? ショウタ、なんか顔が赤いね。あ、私を見てドキドキしたんでしょ?』
『え!? あ、いや、その……』
『ふふふ、ショウタも可愛いところあるね。じゃあ行こっか!』
リリアさんと一緒に家を出る。黒瀬さんとは学校の最寄り駅で待ち合わせにしていたので、俺たちは駅から電車に乗る。
『ふふふ、ショウタ、今日もカッコいいね』
突然そんなことを言うリリアさんだった。そ、そうかな、わりと普通だと思ったんだけどな……。
『そ、そうかな、ありがとう……リリアさんも、その、可愛い……よ』
『えへへー、ショウタに可愛いって言ってもらえると嬉しいなー!』
そう言って俺の左腕に絡みつくリリアさんだった……って、ち、近い……まぁ近いのは慣れているが、ドキドキしてしまうのは俺も男だからだろうな。
電車が学校の最寄り駅に着いた。一旦降りて改札を通ると、向こうに黒瀬さんがいるのが見えた。
「あ、おはようございます」
黒瀬さんは日本語で挨拶をした。ブラウン系のブラウスに、ベージュ系の長いティアードスカートをはいた黒瀬さんは、黒髪が際立つようでいつもと違う雰囲気で可愛らしい感じがした。
「あ、フウカ! おはよう!」
「お、おはよう」
俺たちも日本語で挨拶をする。
『二人は仲良く一緒に来たのですか、とてもいいことだと思います。あ、リリアさん、可愛らしい格好をしていますね。脚が長いです』
『えへへー、ありがとう! フウカも可愛いね! 学校で見る姿とは違うなー』
『ありがとうございます。ちょっとおしゃれをしてみました。あれ? 綿貫くん、なんかぼーっと見ていませんか?』
『……え!? あ、いや、そんなことは……』
『綿貫くんも男の子ですね。そんな綿貫くんも普段よりもカッコよく見えますね』
『あ、ああ、ありがとう……やっぱり私服というのがいつもと違うよな』
『そうですね、たまにはこういうのもいいですね。あ、電車に乗って出かけてみましょうか』
俺たちはしばらく待ってまた電車に乗り、移動することにした。リリアさんと二人でデートした時とは違う駅で降りる。このあたりも人が多くて賑やかだ。
『わぁ、たくさん人がいるね! なんだか楽しい!』
『リリアさんも日本に少しずつ慣れてきているのですかね、とてもいいことです。そういえば二人は朝よく一緒に学校に来ていますが、家が近いとかなのでしょうか?』
『うん! ショウタと私、同じマンションなんだよー!』
『なんとそうでしたか、やっと謎が解けました。それなら一緒に来るのも分かるというか』
楽しそうな女の子二人だった。女子高生とはこういうものなのかな……いや、俺も友達が少ないからよく分からないが。
しばらく街を散策してみることにした。リリアさんがなんでも興味を持って楽しそうだ。それもよかったなと思った。
『あ! アイスクリームがあるよ! 食べてみない?』
『ああ、いいですね、綿貫くんは甘いものは大丈夫ですか?』
『あ、ああ、まあまあ好きだけど、なぜそれを訊く……?』
『そうでしたか、俺は米しか食わねぇんだ、とか言うかと思いました』
『さ、さすがにそれはないかな……あはは』
なんだろう、黒瀬さんの中で俺はどう思われているのか、少し心配になってしまった。
三人でアイスクリームを買う。店内のテーブルが空いていたので、そこに座ることにした。
『いただきまーす! あ、チョコミント美味しいー! フウカのは黄色いね?』
『私はゆずシャーベットにしてみました。酸っぱい感じが美味しいですよ』
『へぇー、ユズっていう食べ物があるんだねー! ショウタはチョコレートなんだね』
『ああ、なんかそんな気分だったので。美味しいな』
『いいですね、こういうの。こうやって夏休みに友達と出かけるというのをやってみたかったのです』
『お、おう、黒瀬さんも本当に友達がいなかったんだな……俺が言えたことではないけど』
……あれ? な、なんか隣の同じくらいの歳の女の子たちがこちらをチラチラ見ている気が……英語が飛び交う俺たちが不思議に見えるのだろうか。まぁ、どうでもいいか。
まぁそんな感じで、三人でのお出かけを楽しんでいた。
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