第31話「みんなでお出かけ」

 日曜日、うちの家族とリリアさんの家族のお出かけの日がやって来た。

 十時にマンションのエントランスに集合と聞いていたので、時間通りに行くと、リリアさん一家がいた。


「おお、リリアさんのお父さんお母さん! はじめまして、翔太の父です……って、日本語じゃなくて英語じゃないといけないかな」

「ああ、大丈夫ですよ、私が翻訳しますので。はじめまして、リリアの母です」

「はじめましてー、翔太の母です。あらーお父さんはカッコいいし、お母さんは美人さんですねー!」

『はじめまして、リリアの父です。ショウタくんのパパとママはショウタくんと一緒でいい人そうだ! あっはっは』


 そんな感じで盛り上がる大人たちだった。ま、まぁ、楽しそうでなにより……。


『あはは、パパとママたち楽しそうだねー!』

『あ、ああ、なんか盛り上がってるな……』

『おにいちゃん、おでかけする。エマたのしみ』

『ああ、そうだね、お兄ちゃんも楽しみだったよ……って、リリアさん、どこに行くの?』

『ああ、ちょっと離れた川に行ってバーベキューでもしようと思って! お肉とかいっぱい買ってあるからねー!』


 リリアさんが抱えているのはクーラーボックスだった。なるほど、バーベキューか、なんかそれも楽しそうだな。


『じゃあみんな、出発しようか、車に乗ってくれ。ショウタくんのパパも帰りは運転してくれるそうだ、ありがたいね、あっはっは』


 お父さんに促されて、俺たちは車に乗り込んだ。八人乗りということで十分だろう。俺が席に座ると、リリアさんが隣にぴたっとくっつくようにして座った……って、ち、近い……まぁ近いのは慣れているが、ちょっとドキドキしていた。

 ……ん? 俺は何を考えているのだろうか。


 お父さんの運転で、車は市街地を離れてちょっと田舎の道を進んでいく。リリアさんが窓から外を見て、『ショウタ、あれは何?』『ショウタ、あれ面白い建物だね!』といろいろなものに興味を示していた。


「ふふふ、翔太とリリアちゃん、仲良しね~」

「ほんとほんと、翔太くんとリリア、そのまま抱きついてイチャイチャしちゃうんじゃないかしら」


 母さんとお母さんがそんなことを言う……って、は、恥ずかしくて顔が熱くなってきた……。

 車は無事に大きな川の川沿いに着いた。バーベキューセットや食材などを運び出すのを俺も手伝う。川沿いには他にも同じようにバーベキューを楽しむ家族がいた。


『なんか気持ちいいねー! 空気が美味しい感じ?』

『ああ、そうだな、こういうところに来ることがなくて、新鮮というか』

「そちらはリリアさんの妹さんかな? はじめまして、可愛いね」

「ああ、こっちはエマといいます。エマ、日本語でご挨拶してみようか」


 お母さんがそう言った後、フランス語で『エマ、練習した日本語あるでしょ』と言うと、エマちゃんが、


「あ、わたし、エマ。よろしく、おねがいします」


 と言って、ペコリとお辞儀をした。な、なんか可愛い感じがする……俺も幼女を好きになるようになったか……って、待て待て、危ない人みたいだな。


「あらー、可愛いわー、うちも女の子がほしかったわー」

「うちも翔太くんみたいな男の子がほしかったですよー、でも、もうお互い自分の子どもみたいな感じしますね」

「たしかにー! もうお互いの子どもということにしちゃいましょうか!」


 大人たちが盛り上がっている。ま、まぁ、楽しいならいいか……。


『よし、準備できたよ。さぁいろいろ焼いていこうじゃないか、あっはっは』

「よし、翔太も一緒にどうだ? ついでにリリアさんパパの翻訳をしてくれるとありがたい」

「あ、ああ、分かった……」


 男三人で話しながら、お肉や野菜を焼いていく。ジュージューと焼ける音とにおいで、なんだかお腹が空いてきたような気がする。俺はこんな経験ないんだよな……家族で出かけたことはあっても、三人なのでこういうアウトドアという感じではなかった。なんだかこれも新鮮だな。


『リリアさん、焼けたよ。はいどうぞ』

『ありがとう! じゃあいただきます! んむんむ、美味しいねー!』


 お肉を美味しそうに食べるリリアさんが、可愛く見えた。


 …………。


 ……はっ!? ぼ、ぼーっとしてないでどんどん焼かないと。


『おにいちゃん、リリアにみとれてる』

『え!? あ、ま、まぁ、そうでもないんじゃないかな……あはは』


 な、なんかエマちゃんには心を読まれているような気がする……いやいや、きっと気のせいだよな……。


 昨日は雨だったのでどうなるかと思ったが、今日は晴れてくれてよかった。バーベキューをみんなで楽しんでいた。

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