初客
そして、
「で、次は何の魔法を?」
「
「発想が、ガキ過ぎるんですよ・・・」
私は、ため息をついてヴァイオレットを軽くにらんだ。
「はいはぁい、戻します。戻すから」
ヴァイオレットは、フイッと目を逸らしてから残念そうな声で言った。
「
杖を軽く振ると、暗かった外が日光で明るくなっていく。
「で、どうした?
「誰だかは存じませんけど、ヴァイオレット宛にお手紙です」
「・・・て、がみ」
ヴァイオレットは、眉をギュッとひそめて嫌々に手紙の封筒を燃やした。
『10分後に行く』
「「・・・は?」」
便箋から流れて来た音声に、私とヴァイオレットは固まった。
中年男性くらいの声。こんなに精密に高難易度の
「じゅ、じゅじゅじゅ10分!?」
「あんの爺・・・」
ヴァイオレットは、両手で顔を覆っている。
ヴァイオレットと初めて会ってから、約5年間。
初客だ。
「えっと、知り合い、ですよね?」
「知ってるやつではあるが、友人とかいう関係じゃない」
「なるほど?」
と言うよりは、友人なんているんだろうか??
* * *
"コンコン"
きっかり10分後、玄関のドアがノックされた。
「はい」
テーブルの上に紅茶やらお菓子やらを並べ、玄関に向かう。
"ガチャ"
「久し・・・」
玄関の前に居たのは、白髪で青い目のお爺さん年代の男性だった。
正直、意外だった。ヴァイオレットの外見からだが、もっと若い年代の人かと思っていた。
「初めまして、ミィナと申します。ヴァイオレットとは、同僚です」
「・・・ほう?」
男性は、目を細めて私の目をジッと見つめた。
「ヴァイオレットの娘かと思ったよ」
「む、娘・・・?」
「おい、おかしな事を吹き込むなよ。ハリウッド」
ムスッと不機嫌そうな声で、ヴァイオレットが突っ込んだ。
(ふーん?)
「ハリウッド様」
「何かな?ミィナ君」
私は、ハリウッド様の心を見透かされていそうな青い瞳をジッと見つめた。
「あの通り、ヴァイオレット様は少々口も性格も悪い同僚でございます。ですが、決して根が悪い方ではありませんので、仲良くしていただけると幸いです」
「おい、ミィナ!!!」
ヴァイオレットの怒声を背中に受けながら、小さくお辞儀する。
「っはっはっは!!!」
ハリウッド様が、高らかに笑った。
「ヴァイオレット」
「何だ!?」
少々(かなり?)キレ目なヴァイオレットは、ハリウッドに怒鳴り声に近い返事をした。
その声に、ハリウッド様はニッと笑った。
「良い同僚じゃないかっ!!」
「お前、どこを見て言ってんだ!?」
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